医療資格者の業務範囲を整理してみる (7)カ.臨床工学技士CE
さて今回は、臨床工学技士について。臨床検査技師(MT)と名前が紛らわしいですよね!違う職種です。
他の職種ページへの移動は、本シリーズの「0(前提)」ページにリンクを置いてありますのでそちらから。
(7)カ.臨床工学技士CE
身分の根拠法
臨床工学技士は、CE(Clinical Engineer)と呼ばれることがあります。
そしてその身分の根拠法は「臨床工学技士法」。こちらの略称は寡聞にして存じ上げません。
第二条この法律で「生命維持管理装置」とは、人の呼吸、循環又は代謝の機能の一部を代替し、又は補助することが目的とされている装置をいう。
臨床工学技士法(昭和六十二年法律第六十号)施行日: 令和三年十月一日, https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=362AC0000000060
2 この法律で「臨床工学技士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、臨床工学技士の名称を用いて、医師の指示の下に、生命維持管理装置の操作(生命維持管理装置の先端部の身体への接続又は身体からの除去であつて政令で定めるものを含む。以下同じ。)及び保守点検を行うことを業とする者をいう。
この赤太字部(弊事務所追加)が、臨床工学技士の資格職としての業です。
★政令で定めるもの
第2条第2項では、臨床工学技士の業務として「政令で定めるもの」がある旨が示されています。
これは、臨床工学技士法施行令にあります。
(生命維持管理装置の身体への接続等)
臨床工学技士法施行令(昭和六十三年政令第二十一号)施行日: 令和三年十月一日, https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=363CO0000000021
第一条 臨床工学技士法(以下「法」という。)第二条第二項の政令で定める生命維持管理装置の先端部の身体への接続又は身体からの除去は、次のとおりとする。
一 人工呼吸装置のマウスピース、鼻カニューレその他の先端部の身体への接続又は身体からの除去(気管への接続又は気管からの除去にあつては、あらかじめ接続用に形成された気管の部分への接続又は当該部分からの除去に限る。)
二 血液浄化装置の穿せん刺針その他の先端部のシャント、表在化された動脈若しくは表在静脈への接続又はシャント、表在化された動脈若しくは表在静脈からの除去
三 生命維持管理装置の導出電極の皮膚への接続又は皮膚からの除去
★医師の具体的な指示が必要な装置操作
また、38条では厚生労働省令で定める装置については「医師の具体的な指示」を要求する旨示されています。
もともと臨床工学技士の業は「医師の指示」を必要としますが(第2条第2項)、より裁量を狭める表現かと思います。
第三十八条 臨床工学技士は、医師の具体的な指示を受けなければ、厚生労働省令で定める生命維持管理装置の操作を行つてはならない。
臨床工学技士法(昭和六十二年法律第六十号)施行日: 令和三年十月一日, https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=362AC0000000060
これは臨床工学士法施行規則に示されています。
(法第三十八条の厚生労働省令で定める生命維持管理装置の操作)
視臨床工学技士法施行規則(昭和六十三年厚生省令第十九号)施行日: 令和三年十月一日, https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=363M50000100019
第三十二条 法第三十八条の厚生労働省令で定める生命維持管理装置の操作は、次のとおりとする。
一 身体への血液、気体又は薬剤の注入
二 身体からの血液又は気体の抜き取り(採血を含む。)
三 身体への電気的刺激の負荷
業務
まずは図で大枠を見ましょう。
本シリーズの「0(前提)」で紹介した厚労省作成の図を簡略化し、いくつかの要素を追加した上で、臨床工学技士の業務範囲等を書き込んだ図を作成しました。
- 臨床工学技士は、「生命維持管理装置の操作及び保守点検(第2条)」を業とする者で、①業務独占はありませんが、②診療の補助として専門業務を業とすることができ、そして③その他診療の補助に当たらない業務(保健指導含む)を行うことができます。
①臨床工学技士の業務独占:なし
視能訓練士には業務独占の定めはありません。
②臨床工学技士による診療の補助
臨床工学技士には、「診療の補助」として業とすることが可能と定められている業務(下引用の青太字部(弊事務所追加))があります。
第三十七条 臨床工学技士は、保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)第三十一条第一項及び第三十二条の規定にかかわらず、診療の補助として生命維持管理装置の操作及び生命維持管理装置を用いた治療において当該治療に関連する医療用の装置(生命維持管理装置を除く。)の操作(当該医療用の装置の先端部の身体への接続又は身体からの除去を含む。)として厚生労働省令で定めるもの(医師の具体的な指示を受けて行うものに限る。)を行うことを業とすることができる。
臨床工学技士法(昭和六十二年法律第六十号)施行日: 令和三年十月一日, https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=362AC0000000060
2 前項の規定は、第八条第一項の規定により臨床工学技士の名称の使用の停止を命ぜられている者については、適用しない。
★診療の補助の限定解除の理解
診療の補助に関しては下記のように理解しています。
- 医師法により、医行為を業とすることは医師の業務独占と定める
- ※本シリーズの「(1)医師」ページ参照
- 医行為の一部を「診療の補助」として、保助看法により看護師に限定解除(主治の医師又は歯科医師の指示が必須)
- ※本シリーズの「(5)看護師、准看護師」ページ参照
- その「診療の補助」のうち一部の各専門業務を、各専門資格保持者に限定解除している(根拠は個別法)。
- 臨床工学技士の場合は、以下の行為を「診療の補助」として業とすることができる。
- 生命維持管理装置の操作
- 生命維持管理装置を用いた治療において当該治療に関連する医療用の装置(生命維持管理装置を除く。)の操作(当該医療用の装置の先端部の身体への接続又は身体からの除去を含む。)として厚生労働省令で定めるもの(医師の具体的な指示を受けて行うものに限る。)を行うこと
- 臨床工学技士の場合は、以下の行為を「診療の補助」として業とすることができる。
※「診療の補助」としての生命維持管理装置の操作業務への医師の関与については、第37条に明記はありません。ですが、そもそも「診療の補助」は看護師に対して主治医の指示を要求していること(保助看法)、加えて、第2条第2項で医師の指示を要求していることから、医師の指示は必要とされると考えるのが妥当かなーと考えています。(臨床工学技師の業が診療の補助の業を内包しているだろうという考え。)
★厚生労働省令で定める装置操作
臨床工学士法第37条で、「厚生労働省令で定めるもの」と記載されていますが、これは臨床工学士法施行規則に示されています。
(法第三十七条第一項の厚生労働省令で定める医療用の装置の操作)
視臨床工学技士法施行規則(昭和六十三年厚生省令第十九号)施行日: 令和三年十月一日, https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=363M50000100019
第三十一条の二 法第三十七条第一項の厚生労働省令で定める医療用の装置の操作は、次のとおりとする。
一 手術室又は集中治療室で生命維持管理装置を用いて行う治療における静脈路への輸液ポンプ又はシリンジポンプの接続、薬剤を投与するための当該輸液ポンプ又は当該シリンジポンプの操作並びに当該薬剤の投与が終了した後の抜針及び止血
二 生命維持管理装置を用いて行う心臓又は血管に係るカテーテル治療における身体に電気的刺激を負荷するための装置の操作
三 手術室で生命維持管理装置を用いて行う鏡視下手術における体内に挿入されている内視鏡用ビデオカメラの保持及び手術野に対する視野を確保するための当該内視鏡用ビデオカメラの操作
③その他の業務
可能な医療関連行為をひとつひとつ挙げていたらきりがありませんが、とりあえず保健師の業務独占と考えられがちな保健指導だけ。
保健指導は、保健師その他の独占業務ではないため、その他職種も行うことができます。
もうちょっと詳しくは、当シリーズの「(3) 保健師」のところを参照。
その他、医療従事者間の具体的な業務分担については、厚労省の役割分担通知を本シリーズの「0(前提)」ページでかるーく紹介していますが、現在進行系でタスクシフト・タスクシェアが進んでますので最新の状況は都度要確認です。
名称独占
臨床工学技士法第41条に名称独占の定めがあります。
第四十一条 臨床工学技士でない者は、臨床工学技士又はこれに紛らわしい名称を使用してはならない。
臨床工学技士法(昭和六十二年法律第六十号)施行日: 令和三年十月一日, https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=362AC0000000060
紛らわしいといえば、臨床検査技師(MT)さんと名称が似てて、話してるときとかアレ?ってなるよね…なんて思ったりしますが、似ている名称があることを知っていれば案外言い間違えない、かもしれません。
ともあれ、今回はここまで。次回は「(7)キ.義肢装具士PO」を紹介します。
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