医療資格者の業務範囲を整理してみる (7)イ.理学療法士PT・ウ.作業療法士OT

さて今回は、理学療法士、作業療法士について。
他の職種ページへの移動は、本シリーズの「0(前提)」ページにリンクを置いてありますのでそちらから。

(7)イ.理学療法士PT・ウ.作業療法士OT

身分の根拠法

理学療法士はPT(Physical Therapist)、作業療法士はOT(Occupational Therapist)と呼ばれることがあります。
そしてその身分の根拠法である「理学療法士及び作業療法士法」が「PTOT法」と略されることもあります。

根拠法が同じなので、一緒に記載させていただきます。

第二条 この法律で「理学療法」とは、身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行なわせ、及び電気刺激、マツサージ、温熱その他の物理的手段を加えることをいう。
2 この法律で「作業療法」とは、身体又は精神に障害のある者に対し、主としてその応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図るため、手芸、工作その他の作業を行なわせることをいう。

3 この法律で「理学療法士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、理学療法士の名称を用いて、医師の指示の下に、理学療法を行なうことを業とする者をいう。
4 この法律で「作業療法士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、作業療法士の名称を用いて、医師の指示の下に、作業療法を行なうことを業とする者をいう。

理学療法士及び作業療法士法(昭和四十年法律第百三十七号)(平成27年8月1日(基準日), https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=340AC0000000137

この赤太字部(弊事務所追加)が、理学療法士、作業療法士の資格職としての業です。

★理学療法とは

PTOT法第2条にある理学療法の定義、もうちょっと具体的には…?となりますが、法や厚生労働省令にはこれ以上の規定見つけられず。
ですので、公益社団法人日本理学療法士協会による定義を記載しておきます。

理学療法とは病気、けが、高齢、障害などによって運動機能が低下した状態にある人々に対し、運動機能の維持・改善を目的に運動、温熱、電気、水、光線などの物理的手段を用いて行われる治療法です。

公益社団法人日本理学療法士協会"理学療法とは"https://www.japanpt.or.jp/about_pt/therapy/(更新日不明)(2022−08−25閲覧)
★作業療法とは

PTOT法第2条にある作業療法の定義、こちらももう一声具体性がほしいところです。とはいえこちらも法や厚生労働省令にこれ以上の規定は見つけられず。
というわけでこちらは、一般社団法人日本作業療法士協会による定義を当たることが順当でしょう。

作業療法は、人々の健康と幸福を促進するために、医療、保健、福祉、教育、職業などの領域で行われる、作業に焦点を当てた治療、指導、援助である。作業とは、対象となる人々にとって目的や価値を持つ生活行為を指す。

一般社団法人日本作業療法士協会"日本作業療法士協会 作業療法の定義", https://www.jaot.or.jp/about/definition/, (2018年5月26日 定時社員総会にて承認)(2022−08−25閲覧)

…あまり具体的な記述ではなかったですね。もっと詳しく!という場合には一般社団法人日本作業療法士協会さんのサイトを確認するのが良いかと思います。私にはパンフレットの記載がわかりやすかったです。

業務

まずは図で大枠を見ましょう。

本シリーズの「0(前提)」で紹介した厚労省作成の図を簡略化し、いくつかの要素を追加した上で、理学療法士・作業療法士の業務範囲等を書き込んだ図を作成しました。

理学療法士、作業療法士の業務範囲
  • 理学療法士及び作業療法士は、①業務独占はありませんが、②診療の補助として専門業務を業にすることができ、そして③その他診療の補助に当たらない業務(保健指導含む)を行うことができます。

①理学療法士・作業療法士の業務独占:なし

理学療法士・作業療法士には業務独占の定めはありません。

②理学療法士・作業療法士による診療の補助

理学療法士及び作業療法士には、「診療の補助」として業とすることが可能と定められている業務(下引用の青太字部(弊事務所追加))があります。

第十五条 理学療法士又は作業療法士は、保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)第三十一条第一項及び第三十二条の規定にかかわらず、診療の補助として理学療法又は作業療法を行なうことを業とすることができる。
2 理学療法士が、病院若しくは診療所において、又は医師の具体的な指示を受けて、理学療法として行なうマツサージについては、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(昭和二十二年法律第二百十七号)第一条の規定は、適用しない。

理学療法士及び作業療法士法(昭和四十年法律第百三十七号)(平成27年8月1日(基準日), https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=340AC0000000137

ここあたりは下記のように理解しています。

  1. 医師法により、医行為を業とすることは医師の業務独占と定める
    • ※本シリーズの「(1)医師」ページ参照
  2. 医行為の一部を「診療の補助」として、保助看法により看護師に限定解除(主治の医師又は歯科医師の指示が必須)
  3. その「診療の補助」のうち一部の各専門業務を、各専門資格保持者に限定解除している(根拠は個別法)。
    • 理学療法士、作業療法士の場合は、以下の行為を業とすることができる。
      1. 理学療法士:医師の具体的な指示を受けて行う理学療法
      2. 作業療法士:医師の具体的な指示を受けて行う作業療法
★あはき法の規定

PTOT法第15条の第2項には、通称あはき法の一条は不適用の旨が規定されています。引用しておきます。

第一条 医師以外の者で、あん摩、マツサージ若しくは指圧、はり又はきゆうを業としようとする者は、それぞれ、あん摩マツサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許(以下免許という。)を受けなければならない。

あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(昭和二十二年法律第二百十七号)施行日: 平成二十八年四月一日,https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000217_20160401_426AC0000000069

③その他の業務

可能な医療関連行為をひとつひとつ挙げていたらきりがありませんが、とりあえず保健師の業務独占と考えられがちな保健指導だけ。

保健指導は、保健師その他の独占業務ではないため、その他職種も行うことができます。
もうちょっと詳しくは、当シリーズの「(3) 保健師」のところを参照。

その他、医療従事者間の具体的な業務分担については、厚労省の役割分担通知を本シリーズの「0(前提)」ページでかるーく紹介していますが、現在進行系でタスクシフト・タスクシェアが進んでますので最新の状況は都度要確認です。

名称独占

PTOT法第17条に名称独占の定めがあります。

(名称の使用制限)
第十七条
 理学療法士でない者は、理学療法士という名称又は機能療法士その他理学療法士にまぎらわしい名称を使用してはならない。
2 作業療法士でない者は、作業療法士という名称又は職能療法士その他作業療法士にまぎらわしい名称を使用してはならない。

理学療法士及び作業療法士法(昭和四十年法律第百三十七号)(平成27年8月1日(基準日), https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=340AC0000000137

次は、「(7)エ.臨床検査技師MT」の紹介をしていきます。

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