医療資格者の業務範囲を整理してみる (7)ケ.言語聴覚士ST

さてやっと最後。言語聴覚士です。
他の職種ページへの移動は、本シリーズの「0(前提)」ページにリンクを置いてありますのでそちらから。

(7)ケ.言語聴覚士ST

1. 身分の根拠法

言語聴覚士は、ST(Speech Therapist)と呼ばれることがあります。
そしてその身分の根拠法は「言語聴覚士法」。こちらの略称は寡聞にして存じ上げません。

第二条 この法律で「言語聴覚士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、言語聴覚士の名称を用いて、音声機能、言語機能又は聴覚に障害のある者についてその機能の維持向上を図るため、言語訓練その他の訓練、これに必要な検査及び助言、指導その他の援助を行うことを業とする者をいう。

言語聴覚士法(平成九年法律第百三十二号)施行日: 平成二十八年四月一日, https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=409AC0000000132

この赤太字部(弊事務所追加)が、言語聴覚士の資格職としての業です。

★医師又は歯科医師との関わり

医療関係職種のうち、言語聴覚士はその業を行うにあたって「医師又は歯科医師の指示」を要求されていないレア職です。

もちろんチーム医療ですから、関係は下記のように規定されていますが、独立性高いんですねぇ。

(連携等)
第四十三条
 言語聴覚士は、その業務を行うに当たっては、医師、歯科医師その他の医療関係者との緊密な連携を図り、適正な医療の確保に努めなければならない。
2 言語聴覚士は、その業務を行うに当たって、音声機能、言語機能又は聴覚に障害のある者に主治の医師又は歯科医師があるときは、その指導を受けなければならない。
3 言語聴覚士は、その業務を行うに当たっては、音声機能、言語機能又は聴覚に障害のある者の福祉に関する業務を行う者その他の関係者との連携を保たなければならない。

言語聴覚士法(平成九年法律第百三十二号)施行日: 平成二十八年四月一日, https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=409AC0000000132

2. 業務

まずは図で大枠を見ましょう。

本シリーズの「0(前提)」で紹介した厚労省作成の図を簡略化し、いくつかの要素を追加した上で、言語聴覚士の業務範囲等を書き込んだ図を作成しました。

言語聴覚士の業務範囲
  • 言語聴覚士は、「言語訓練その他の訓練と必要な検査及び助言その他援助」を業とする者で、①業務独占はありませんが、②診療の補助として専門業務を業とすることができ、(第17条)、そして③その他診療の補助に当たらない業務(保健指導含む)を行うことができます。

①業務独占:なし

言語聴覚士には業務独占の定めはありません。

②診療の補助

言語聴覚士には、「診療の補助」として業とすることが可能と定められている業務(下引用の青太字部(弊事務所追加))があります。
(診療の補助とは本来看護師の業務独占ですが、これら業務のみ言語聴覚士に限定解除されていると理解しています。)

第四十二条 言語聴覚士は、保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)第三十一条第一項及び第三十二条の規定にかかわらず、診療の補助として、医師又は歯科医師の指示の下に、えん下訓練、人工内耳の調整その他厚生労働省令で定める行為を行うことを業とすることができる。

言語聴覚士法(平成九年法律第百三十二号)施行日: 平成二十八年四月一日, https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=409AC0000000132

ここで言う厚生労働省令とは、言語聴覚士法施行規則を指します。該当部分を引用します。

(法第四十二条第一項の厚生労働省令で定める行為)
第二十二条
 法第四十二条第一項の厚生労働省令で定める行為は、次のとおりとする。

 機器を用いる聴力検査(気導により行われる定性的な検査で次に掲げる周波数及び聴力レベルによるものを除く。)
  周波数千ヘルツ及び聴力レベル三十デシベルのもの
  周波数四千ヘルツ及び聴力レベル二十五デシベルのもの
  周波数四千ヘルツ及び聴力レベル三十デシベルのもの
 ニ 周波数四千ヘルツ及び聴力レベル四十デシベルのもの
 聴性脳幹反応検査
 眼振電図検査(冷水若しくは温水、電気又は圧迫による刺激を加えて行うものを除く。)
 重心動揺計検査
 音声機能に係る検査及び訓練(他動運動若しくは抵抗運動を伴うもの又は薬剤若しくは器具を使用するものに限る。)
 言語機能に係る検査及び訓練(他動運動若しくは抵抗運動を伴うもの又は薬剤若しくは器具を使用するものに限る。)
 耳型の採型
 補聴器装用訓練

言語聴覚士法施行規則(平成十年厚生省令第七十四号)施行日: 令和二年十二月二十五日, https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=410M50000100074
★診療の補助の限定解除の理解

診療の補助に関しては下記のように理解しています。

  1. 医師法により、医行為を業とすることは医師の業務独占と定める
    • ※本シリーズの「(1)医師」ページ参照
  2. 医行為の一部を「診療の補助」として、保助看法により看護師に限定解除(主治の医師又は歯科医師の指示が必須)
  3. その「診療の補助」のうち一部の各専門業務を、各専門資格保持者に限定解除している(根拠は個別法)。
    • 言語聴覚士の場合は、以下の行為を「診療の補助」として業とすることができる。
      1. えん下訓練、人工内耳の調整その他厚生労働省令で定める行為を行うこと(医師又は歯科医師の指示の下)

③その他の業務

可能な医療関連行為をひとつひとつ挙げていたらきりがありませんが、とりあえず保健師の業務独占と考えられがちな保健指導だけ。

保健指導は、保健師その他の独占業務ではないため、その他職種も行うことができます。
もうちょっと詳しくは、当シリーズの「(3) 保健師」のところを参照。

その他、医療従事者間の具体的な業務分担については、厚労省の役割分担通知を本シリーズの「0(前提)」ページでかるーく紹介していますが、現在進行系でタスクシフト・タスクシェアが進んでますので最新の状況は都度要確認です。

3. 名称独占

言語聴覚士法第48条に名称独占の定めがあります。

第四十五条 言語聴覚士でない者は、言語聴覚士又はこれに紛らわしい名称を使用してはならない。

言語聴覚士法(平成九年法律第百三十二号)施行日: 平成二十八年四月一日, https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=409AC0000000132

さて、長くかかった医療関係職のまとめ。やっとここまでで完走です。ありがとうございました。
歯科領域もそのうちまとめるかもしれません。

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