実は「医療機器」なのかも?セックストイについて。

今回のトピックスの中身をダイジェストしますと、こんな感じです。

  • 性を隠す時代じゃなくなってる。セックストイの業界が盛り上がるの、すごくいい!
  • ところで、日本には「医療機器」という分類があって、製品がこれにあたると手続きが必要なんですよ。
  • で、セックストイと医療機器って、つながるの?つながるかも。
  • まとめ

では、書いていってみますねー。

1.性を隠す時代じゃなくなってる。セックストイの業界が盛り上がるの、すごくいい!

性的快感を得る目的で使用するセックストイ。
アダルトグッズ、大人のおもちゃ、プレジャートイなどと様々な呼び方で販売されています。
インターネットの普及に伴い、手に入れることも容易になりましたよね。

見た目もインテリアに馴染むようなデザインのものも出てきており、
業界全体のアンダーグラウンド感というか、後ろ暗い感というのが随分払拭されて、
性を楽しもうというポジティブな印象に置き換わってきているなぁと感じます。

2.ところで、日本には「医療機器」という分類があって、製品がこれにあたると手続きが必要なんですよ。

さて、ここでちょっと話を変えて「医療機器」の話をします。

  • この「医療機器」をはじめ、薬機法に定められている「医薬品」「医薬部外品」「化粧品」といった製品を取り扱うためには、業許可を取らなくちゃいけなかったり、製品ごとの手続きが必要だったりします。してなかったら法律違反で逮捕・課徴金もありえます。
  • また、「医療機器」他は、製品が条件を満たせば自然にみなされます。18歳になったら成人、みたいな感じで、条件満たせば医療機器、なわけです。

さて、医療機器と聞くと、字面から見て「医療用の機器、つまりお医者さんが使う道具なんだろうなー」という感じがすると思います。
あっていますが、それは「医療機器」の一側面でしかありません。
体温計とかマッサージ機とか、家庭で使うアイテムだって、実は医療機器だったりするんです。

ここから先、昔の用語が出てきて混乱するかもしれないので、こちらにメモしておきます。
●「薬機法」は2014年(平成25年)に名称変更されるまで、「薬事法」という名前でした[1]。
 正式名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」です。長いのでみーんな「薬機法」とか「医療機器等法」とかって略しています。
●「医療用具」は2002年(平成14年)の薬事法改正で、「医療機器」に法制上の名前が変更されました[2]。

医療機器の定義

医療機器の定義は、薬機法という法律に定められています。

医療機器とは、人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等であって、政令で定めるものをいう。

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第二条

法律の言葉なので、初見だと何言ってるのかよくわからないですよね。
図にするとこんな感じです。

3.で、セックストイと医療機器って、つながるの?つながるかも。

では、セックストイが図の「AかつBかつC」になって、医療機器にあたるのかどうかを見てみましょう。
こんな感じです。

順番に見ていってみましょう。

A【使用対象】が人または動物

これはもう、「はい、そうです。」な物がほとんどですね。

B【使用目的】が①か②のどちらか

①病気の診断・治療・予防
②身体の構造や機能に影響を与える

これは判断が難しいところで、「製品ごとに総合的に判断する」としか言いようがありません。
ただ、下記のような目的の製品だと、該当してきちゃいます。

  • 不感症、EDを治す
  • 膣の拡張
  • 膣内洗浄
  • 骨盤底筋トレーニング

あと番外ですが、下記のような表現にも注意が必要です。

  • 傷を治す、トラブル鎮静:医薬品にあたる
  • 肌の美白/ホワイトニング:医薬部外品にあたる
  • 肌にうるおいを与える:化粧品にあたる

(過去のトピックス「ラブローションを取り巻く規制」もあわせてご覧ください)

C【政令に指定あり」

要はすでに「医療機器」としてリストアップされているかどうか、ということです。

上述の薬機法には施行令という政令がありまして、その別表第一にリストアップされてます。
そしてここに、セックストイに縁がありそうな名前があったりするのです。

わかりやすいものをピックアップしてみました。

機械器具
五十八 整形用機械器具
七十七 バイブレーター

衛生用品
 コンドーム
 避妊用具
 性具

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行令

最後にある「性具」とは具体的にどういうこと?範囲広すぎない?となる方もおられるかと思います。
これについては、かつて裁判所が白黒つけてくれています。

薬事法施行令別表第一に掲げる「性具」とは、人が性交若しくは性交類似行為(自慰を含む)に際し性感の刺激、増進ないし満足のために性器に付着あるいは接触させて使用することを目的とする器具をいうものと解するのが相当である。

[3]東京高裁昭和50年11月25日判決(刑集第28巻4号465頁)

・・・というわけで、「性具ってそういうイメージ!」ってものが「性具」に該当するようです。

ちなみに、添付文書1として押収された製品の名称一覧が見られます。なかなか味わい深いものがあります。
被告によると「一般人向けではない製品群」(全文の理由(第2段)より要約)だそうです。

まとめ

結論としては、「セックストイも、製品によっては医療機器にあたるのかも」ということになります。
多種多様なセックストイですから、個別判断するしかありません。

今現在、かなりのセックストイが、法律的にグレー〜黒な状態で販売されているように見受けられます。
しかし初めにお伝えしたとおり、だいぶ性がオープンになっててマーケットも大きくなってきていますので、いつ規制のメスが入るともしれません。

現に、先日は「骨盤底筋訓練器具」が医療機器であると明確に示されました。
(過去のトピックス「医療機器に「一般的名称:骨盤底筋訓練器具」が加わりました」をご覧ください)

そうなっちゃうと、知らなかったでは済まされないことになっちゃいます。具体的には逮捕・課徴金もありえます。
各事業者さんは、まずは現状の把握だけでも進めていただきたいところです。

おわりに

ここまで読んで、ご自身の製品や企画中の製品について「おや?」と思われた方もいるかもしれません。
医療機器にあたるのか、あたらないのか、の判断は各都道府県に任されています。
各都道府県の「薬務課」みたいな感じの名前の部署にご相談されると、「この製品はあたる、あたらない」を結論づけてくれます。

行政に直接相談はリスクが高すぎ…と思われる場合だったり、相談先がよくわからん!といった場合には、弊事務所にぜひご相談ください。
御社のお名前を行政に出さなくとも、一定の情報収集は可能です。

参考文献

  1. "薬事法の一部を改正する法律(平成25年6月14日法律第69号)"https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000045726.html
  2. "薬事法及び採血及び供血あつせん業取締法の一部を改正する法律(平成14年法律第96号)参考資料". 厚生労働省 . https://www.mhlw.go.jp/topics/2002/09/tp0910-2.html
  3. "東京高裁昭和50年11月25日判決(刑集第28巻4号465頁)". https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail3?id=20538

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