検体検査とは?その定義を探る―人体採取検体の検査ビジネス

先日の別トピックで、業として検体検査を行えるのは誰なのかを確認しました。
今回はそこでも出てきた言葉である「検体検査」とは何かを探っていきましょう。

1. なぜ「検体検査」の定義を探るの?

そもそも、なぜ「検体検査」という言葉について記事にしたのかですが、
私がはっきりとした定義を見つけられなかったからです。なにかご情報お持ちの方おられましたら教えて下さい。

とりあえず現時点で私は「検体検査」=「人体から排出され、又は採取された検体の検査として厚生労働省令で定めるもの」だろうなぁと解釈することにしました。

以下にその解釈に至った理由を説明して参ります。

2. 順を追って説明

(1) 疑問の理由と得た解釈

定義自体は、臨床検査技師等に関する法律の第2条にされています。
でもこの文章、「(以下「検体検査」という。)」がどこまでにかかるのかが、明確には不明じゃないですか??

第二条 この法律で「臨床検査技師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、臨床検査技師の名称を用いて、医師又は歯科医師の指示の下に、人体から排出され、又は採取された検体の検査として厚生労働省令で定めるもの(以下「検体検査」という。)及び厚生労働省令で定める生理学的検査を行うことを業とする者をいう。

臨床検査技師等に関する法律(昭和三十三年法律第七十六号). 令和三年法律第四十九号による改正. https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=333AC1000000076(閲覧:2022−08−12)

つまり、私に生まれた疑問とは、↓こういうことです。

検体検査とは以下1〜5のうちどれか。

  1. 厚生労働大臣の免許を受けて、臨床検査技師の名称を用いて、医師又は歯科医師の指示の下に、人体から排出され、又は採取された検体の検査として厚生労働省令で定めるもの
  2. 厚生労働大臣の免許を受けて、臨床検査技師の名称を用いて、医師又は歯科医師の指示の下に、人体から排出され、又は採取された検体の検査として厚生労働省令で定めるもの
  3. 厚生労働大臣の免許を受けて、臨床検査技師の名称を用いて、医師又は歯科医師の指示の下に、人体から排出され、又は採取された検体の検査として厚生労働省令で定めるもの
  4. 厚生労働大臣の免許を受けて、臨床検査技師の名称を用いて、医師又は歯科医師の指示の下に、人体から排出され、又は採取された検体の検査として厚生労働省令で定めるもの
  5. 厚生労働大臣の免許を受けて、臨床検査技師の名称を用いて、医師又は歯科医師の指示の下に、人体から排出され、又は採取された検体の検査として厚生労働省令で定めるもの

(私の出した解釈)た…たぶん、4??

 <理由>

  1. たぶんちがう。「厚生労働大臣の免許を受けて、」はその前の「臨床検査技師とは、」にかかる言葉だと考える。検体検査をすることができる施設は免許じゃなくて都道府県知事の登録か厚労省医政局への届出だし。
  2. たぶんちがう。「臨床検査技師の名称を用いて、」もまた「臨床検査技師とは、」にかかる言葉だと考える。実際のところ臨床検査専門医が検査をしたりする実態に合わないので。これを検体検査にかかる言葉だと考えるとなんか日本語的にも変だし。
  3. たぶんちがう。「医師又は歯科医師の指示の下に、」もまた「臨床検査技師とは、」にかかる言葉だと考える。診療の用に供さない検体検査に限って検体検査できる施設の定めがある施設告示[1]と矛盾が生じてしまう。
  4. 妥当な気がする。
  5. たぶんちがう。「人体から排出され、」と「又は採取された検体の検査として厚生労働省令で定めるもの」をぶった切るのはさすがにない。

[1]昭和56年3月2日 昭和56年厚生告第17号「臨床検査技師等に関する法律第二十条の三第一項の規定に基づき厚生労働大臣が定める施設」(改正: 平成26年11月21日号外 厚生労働省告示第439号)https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=80025000&dataType=0&pageNo=1(閲覧:2022−08−12)

(2) 「厚生労働省令で定めるもの」とはなにか

これははっきりと、臨床検査技師等に関する法律施行規則に明記されています。
遺伝子検査サービス(ゲノム解析)、血液1滴で検査(がん、生活習慣病等)、尿検査や検便なんかは該当しそうですね。

(法第二条の厚生労働省令で定めるもの)
第一条 臨床検査技師等に関する法律(以下「法」という。)第二条の厚生労働省令で定めるものは、次に掲げるものとする。
一 微生物学的検査
二 免疫学的検査
三 血液学的検査
四 病理学的検査
五 生化学的検査
六 尿・糞便等一般検査
七 遺伝子関連・染色体検査
(法第二条の厚生労働省令で定める生理学的検査)
第一条の二 法第二条の厚生労働省令で定める生理学的検査は、次に掲げる検査とする。
一 心電図検査(体表誘導によるものに限る。)
二 心音図検査
三 脳波検査(頭皮誘導によるものに限る。)
四 筋電図検査(針電極による場合の穿せん刺を除く。)
五 運動誘発電位検査
六 体性感覚誘発電位検査
七 基礎代謝検査
八 呼吸機能検査(マウスピース及びノーズクリップ以外の装着器具によるものを除く。)
九 脈波検査
十 熱画像検査
十一 眼振電図検査(冷水若しくは温水、電気又は圧迫による刺激を加えて行うものを除く。)
十二 重心動揺計検査
十三 持続皮下グルコース検査
十四 超音波検査
十五 磁気共鳴画像検査
十六 眼底写真検査(散瞳どう薬を投与して行うものを除く。)
十七 毛細血管抵抗検査
十八 経皮的血液ガス分圧検査
十九 聴力検査(気導により行われる定性的な検査であつて次に掲げる周波数及び聴力レベルによるものを除いたものに限る。)
イ 周波数千ヘルツ及び聴力レベル三十デシベルのもの
ロ 周波数四千ヘルツ及び聴力レベル二十五デシベルのもの
ハ 周波数四千ヘルツ及び聴力レベル三十デシベルのもの
ニ 周波数四千ヘルツ及び聴力レベル四十デシベルのもの
二十 基準嗅覚検査及び静脈性嗅覚検査(静脈に注射する行為を除く。)
二十一 電気味覚検査及びろ紙ディスク法による味覚定量検査
二十二 直腸肛門機能検査

臨床検査技師等に関する法律施行規則(昭和三十三年厚生省令第二十四号). 令和三年厚生労働省令第百十九号による改正. https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=333M50000100024 .(閲覧:2022−08−15)

(3) 医療法に答えはないか

さて、ここで「検体検査」の定義に話を戻します。

医療法も見てみましょう。
すると「医療法で言う検体検査=臨床検査技師等に関する法律でいう検体検査」だということがわかります、が、情報は増えませんでしたね…。

第十五条の二 病院、診療所又は助産所の管理者は、当該病院、診療所又は助産所において、臨床検査技師等に関する法律(昭和三十三年法律第七十六号)第二条に規定する検体検査(以下この条及び次条第一項において「検体検査」という。)の業務を行う場合は、検体検査の業務を行う施設の構造設備、管理組織、検体検査の精度の確保の方法その他の事項を検体検査の業務の適正な実施に必要なものとして厚生労働省令で定める基準に適合させなければならない

医療法(昭和二十三年法律第二百五号).令和三年法律第四十九号による改正.https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000205 (閲覧:2022−08−12)

3.実際の運用を見る:厚生労働省サイトでの「検体」の扱い

しかたないので、実際の運用を見てみることにします。

下記は厚生労働省医政局のページの記載です。
この書きぶりだと、厚労省は「検体検査」=「人体から排出され、又は採取された検体の検査として厚生労働省令で定めるもの」としているように私には見えます。

人体から排出され、又は採取された検体の検査を業として行う場所は、病院、診療所、助産所又は厚生労働大臣が定める施設内の場所を除き、衛生検査所として、都道府県知事の登録を受ける必要があります。

厚生労働省医政局. "検体測定室等について".厚生労働省. 閲覧2022-08-12.
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000098580.html
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000098580.htmlの一部キャプチャ。ブルーのハイライトは弊事務所にて。

4.結論に戻ってまとめ

というわけで、私は冒頭で申し上げた「検体検査」=「人体から排出され、又は採取された検体の検査として厚生労働省令で定めるもの」だろうなぁという解釈に至りました。

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