【新規内装】工事発注前に確認すべき構造設備規則|「ローカルルール」と独立通路の罠

【この記事の結論(30秒でわかる要約)】

  • 薬局の新規開設において事業者が直面する重大なリスクは、多額の資金を投じた内装工事の完了後に、保健所の実地調査で「構造要件の未達」が発覚することです。この問題の根底には、法規制が二重・三重の構造を持っているという事実があります。
  • 国の「薬局等構造設備規則」というベースラインを満たして図面を作成しても、管轄する市区町村(保健所)ごとに、国の基準をさらに詳細化した「ローカルルール(独自基準)」が運用されています。工事発注後にこれらの抵触が発覚した場合、物理的な改修工事を強いられ、追加費用と大幅なスケジュールの遅延が生じることが見込まれます。
  • これを防ぐためには、内装業者に工事を発注する前の図面段階で、管轄保健所に対する法的根拠を持った事前相談と図面スクリーニングを実施することが不可欠です。本稿では、その具体的な対応策について解説します。

薬機法が定める「構造設備規則」の基本

薬局を開設するための最も基本的な要件は、「医薬品、 医療機器等の品質、 有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」の下位法令である「薬局等構造設備規則1」に規定されています。この規則は、医薬品という生命や健康に直結する物品を扱う施設の特性上、衛生管理、品質保持、および安全な調剤業務の遂行を担保するために設けられています。

国の基準として定められている主な要件は、面積、環境、採光・照明、および特定の設備の有無に大別されます。以下の表は、「国の基本ルール」の主要な数値を整理したものです。

構造設備項目薬局等構造設備規則における基本要件(国基準)
全体面積おおむね19.8平方メートル以上とし、薬局の業務を適切に行うことができる広さ。
調剤室の面積6.6平方メートル以上の面積を有すること。
環境・区画換気が十分であり、かつ清潔であること。常時居住する場所や不潔な場所から明確に区別されていること。
採光・照明医薬品を通常陳列・交付する場所は60ルクス以上、調剤台の上は120ルクス以上の明るさを確保すること。
保管・貯蔵設備冷暗貯蔵のための設備(冷蔵庫等)、および鍵のかかる貯蔵設備を有すること。
閉鎖構造要指導医薬品または一般用医薬品を販売しない時間帯がある場合、その陳列・交付場所を閉鎖できる構造であること。

ここで特筆すべきは、全体面積に関する「おおむね19.8平方メートル以上」という規定です。国の法律ではこれ以上の具体的な規定はありませんが、例えば東京都の場合、この「おおむね」とは「基準面積の10パーセント以内の減少(約17.82平方メートル)までしか許容しない」という厳格なローカルルール(審査基準2)として運用されています。

さらに注意すべき東京都のローカルルールとして、更衣室やトイレ、調剤に直接関係のない事務室などの「付属設備の面積」は、この19.8平方メートルの要件には算入できないという点があります。国の基準だけを見て図面を引く設計士が、トイレを含めた全体で19.8平方メートルの図面を引いてしまうと、東京都内の保健所の事前相談はNGを出されちゃうことになります。

設計士の視点からは、「調剤室として6.6平方メートルの区画を作り、陳列棚と冷蔵庫を置き、明るい照明をつければ国の法律はクリアできる」という認識になりがちです。しかし、この認識こそが、後述するローカルルールや独立性の問題に直面する主な要因となります。

最も多い不許可の理由「独立通路の罠」

新規開設において、保健所や地方厚生局からの指導により計画の変更を余儀なくされるケースの中で、特に注意すべきものが「構造上の独立性」に関する要件、いわゆる「独立通路の罠」です。

この要件は、日本の医療制度における「医薬分業(医師の処方と薬剤師の調剤を分離し、相互牽制を働かせる制度)」の根幹に関わるものです。健康保険法に基づく「保険薬局」の指定を受けるためには、特定の保険医療機関(病院やクリニック)と一体的な構造であったり、一体的な経営を行っていたりしてはならないという厳格なルールが存在します3

令和6年(2024年)4月1日より適用された厚生労働省の最新の通知(保医発0305第15号)により、この独立性の要件は明確化され、確認が強化されています。設計段階で以下のパターンのいずれかに該当する場合、保険薬局としての指定は受けられません。

これら4つの構造NGパターンは、厚生労働省の公式通知(保医発0305第15号)、および管轄保健所への許可申請時に提出を求められる「薬局の独立性に関する申告書4」等の公的判断指標に基づく厳格な基準です。

構造上のNGパターン(一体的な構造の禁止)具体的な状況と行政的判断基準
パターンA:建物内所在(インショップ型)医療機関と同一の建物内に存在し、実質的に当該医療機関の「調剤所」と同様と見なされる構造。
パターンB:専用通路による接続医療機関の建物と保険薬局が、患者専用の連絡通路や渡り廊下などで直接接続されている構造。完全に密閉された空間での直結は禁止。
パターンC:敷地内における往来制限医療機関と同一敷地内に存在し、薬局の出入り口が公道等から容易に確認できない場合。または、医療機関の休診日に公道から薬局へ自由に行き来できない構造。
パターンD:患者の限定的動線一般人が自由に往来できる構造を有しておらず、実質的に隣接する特定の医療機関を受診した患者の来局しか想定できないような閉鎖的な動線設計。

近年増加している医療モールや、ビル内テナントへの薬局併設について、国の最新通知(保医発0305第15号)では「患者を含む一般人が自由に行き来できる構造」であることが求められています。

しかし、一部の自治体(例えば埼玉県越谷市など)では、これを独自の「ローカルルール(審査・指導基準)」として極めて厳格に運用しています。例えば、越谷市の審査基準5では、薬局自体が「通路となる構造」であってはならず、他の店舗との間に「明確な隔壁(ドアー等を含む。)」を設けることが規定されています。

さらに同市の基準では「薬局の入口が公道に面していること」も求められるため、実際の行政指導においては、患者がクリニックでの診察を終えて薬局に向かう際、店舗間を直接通り抜けることはできず、必ず一度「建物の共用通路」または「屋外(公道)」に出るような動線設計が求められます。この問題を工事完了後に指摘された場合、店舗の出入り口を根本から作り直す必要が生じるため、内装工事のやり直しには多大な負担が見込まれます。

【実務の落とし穴】専門設計士も悩ませる「各地のローカルルール」

国の基本基準をクリアし、独立通路の問題を回避したとしても、都道府県や各政令指定都市・特別区の保健所が独自に設定している「ローカルルール」の存在を考慮する必要があります。

薬局開設における国の構造設備規則と東京都独自のローカルルールの関係図
国の基準(薬機法)をクリアしていても、東京都や管轄保健所の独自ルールで図面修正を求められるケースがあります。

特に入念な精査が求められるのが、東京都が定めている「東京都薬局等許可等審査基準及び指導基準」です。

行政手続法では、行政庁に対して、第5条で法的拘束力のある「審査基準」を設定する義務が、そして第36条では事実上の要件として機能する「行政指導指針(指導基準)」を定めた場合には公表する義務が課せられています6。そして薬局開設の許可において、この行政庁とは、原則として都道府県知事、薬局の所在地が保健所を設置する市や特別区にある場合はその市の市長又は特別区の区長を指します(薬機法第4条第1項)。

前述の、東京都が定めている「東京都薬局等許可等審査基準及び指導基準」は、まさにこれにあたり、「国の基準を満たしているから大丈夫」という認識の設計士に図面作成を依頼した場合、この都の審査・指導基準に抵触し、図面スクリーニング段階で不適合となるケースがありえます。

以下に、国の薬局等構造設備規則(基本ルール)と、東京都が定める審査・指導基準との差異を整理します。

構造・設備項目国の基本ルール(薬局等構造設備規則)東京都のローカルルール(審査・指導基準)
待合室の面積特定の規定なし6.6平方メートル以上の確保を要求(指導基準)
調剤室の形状6.6平方メートル以上の面積を要求(形状指定なし)間口および奥行きがそれぞれ約1.3メートル以上ある部分で面積を計算(指導基準)
天井の高さ特定の規定なし床面から2.1メートル以上あること(審査基準)
透視面(窓)規定なし(見通せること等の要件なし)待合の床面から0.9m以内の高さに、縦1.0m×横1.3m以上の透明ガラスを設置(指導基準)
薬剤師数と面積特定の規定なし(一律6.6平方メートル以上)薬剤師2名時は9.9平方メートル以上、3人目以降は1人につき3平方メートルを追加(指導基準)

この対比から読み取れる実態は極めて重要です。国の規則では「調剤室は6.6平方メートル以上」としか書かれていません。しかし、東京都内で細長い形状の調剤室を設計した場合、たとえ床面積が7.0平方メートルあっても「間口・奥行き1.3メートル未満」のデッドスペースは有効面積から差し引かれて計算されるため、基準未達として不許可に直結します。

天井の高さについても、都の基準では「2.1メートル以上」が法的拘束力を持つ「審査基準」として位置付けられています。ビル内テナントで梁やエアコン配管などの影響により一部天井が低くなっている場合、この要件をクリアできず、申請自体が受理されない事態になりかねません。

また、患者が待合室から調剤室内の薬剤師の動作を確認できるようにするための「透視面」についても、都の基準では「床から0.9メートル以内の高さに、縦1.0メートル、横1.3メートル以上の透明ガラス」という、設計段階から折り込むべき十センチ単位の指導基準が定められています。

これらを知らずに「国の法律は満たしているから」と内装工事を完了させてしまった場合、保健所の実地調査において不適合と判断され、店舗を大きく改修しなければならない「後の祭り」のリスクが生じます。

行政書士A

『設計士さんが国の基準で作ったから大丈夫』と安心していませんか?

薬局の構造設備には、国の法律に上乗せされる「都道府県と特別区独自の審査・指導基準」が存在します。さらに「付属設備(トイレや更衣室等)は面積から除外される」などの実務上の罠もあり、工事着手後に発覚して「後の祭り」になるケースも。
工事着手前に、当事務所の「薬局開設支援」をご活用下さい。当事務所より、薬機法に基づく構造設備要件とローカルルールの図面スクリーニングを含む、開局準備に向けたサービス案内を申し上げます。

確実な許可取得へ。当事務所の「図面段階での事前相談」サポート

これまでに挙げた法的・物理的な課題を回避し、予定通りの開局を実現するためには、専門家を交えた「図面段階での事前相談」というプロセスが重要です。行政手続きの専門家である行政書士が提供するサポートは、書類作成にとどまらず、行政機関との円滑な調整とリスクマネジメントの中核を担います。

当事務所では、面談時に「構造要件(図面確認)」、「人的要件(薬剤師等の資格確認)」、「管理者要件(兼務制限等の精査)」という法的3大要件についてのスクリーニングを実施し、隠れたリスクを早期にに排除します。

特に、開設許可後に多くの調剤薬局さんが申請を行う公費負担医療の指定申請のうち、「指定自立支援医療機関(育成医療・更生医療、精神通院医療等)」指定においては、薬機法とはまた異なる独自の構造要件が定められています。たとえば、東京都における指定要領では「通路、待合室など、身体障害者に配慮した設備構造が確保されていること」と規定7されており、実務上は段差の排除や手すりの設置、十分な車椅子スペースの確保などが求められます。これを無視して内装図面を決定してしまうと、薬局開設自体はできても、公費負担医療の取り扱い指定を受けられないため、のちに一部の処方せんを受け付けられないという事態になりかねません。

また、保健所の担当官が提示するローカルルールの中には、法的拘束力のある「審査基準」と、行政側の要望である「指導基準」が混在しています。例えば、東京都における「待合室の面積6.6平方メートル確保」などは、法令上はあくまで「指導基準」です。

テナントの物理的な制約上、指導基準を完全に満たすことが難しいケースも存在します。現在の行政手続法下では、形式上の要件に適合している申請について、正当な理由なく受理を拒むことは禁じられています。さらに同法第8条により、行政庁が申請を拒否する場合には、同時にその「処分の理由」を提示する義務を負います。法的背景を熟知した専門家が代理人として折衝することで、法令の範囲内で合理的な着地点を見出すための論理的な代替案の提示が可能となります。

さらに、保健所での許可取得後には、地方厚生局による「保険薬局の指定」プロセスが控えています。保険薬局の指定は原則として毎月1日付けで行われますが、その申請には締切日が存在し、各都道府県の事務所ごとに毎月10日から15日頃に設定されています8

事前の図面スクリーニングを怠り、実地調査での指導により再工事となった場合、この厚生局の申請締切日に間に合わなくなる可能性があります。締切日に遅れれば、保険薬局の指定日は1ヶ月後ろ倒しとなり、初期の事業計画に深刻な影響を与えることが見込まれます。図面段階での事前相談は、単なる許可取得の手続きではなく、円滑な事業運営を開始するための重要なステップなのです。

まとめ:仕事の合間に、開局日を見据えた確実なステップを

他店舗や病院での勤務を続けながら新規開局を目指す薬剤師の皆様にとって、行政手続きや内装業者との細かな法適合調整に割ける時間は極めて限られています。だからこそ、初期段階で「手戻りのない設計プラン」を確立させることが、開局日を遅らせない唯一の近道です。

当事務所では、多忙なオーナー様に代わって管轄保健所への緻密な確認を行い、ローカルルールに合致した図面での工事進捗を支援致します。書類の作成や役所との調整といった実務プロセスを切り分けることで、今の業務に注力したままの、目標とするスケジュールでの開局への道が見えてきます。

まずは図面のたたき台を拝見し、個別の条件に沿った図面スクリーニングを行います。当事務所の無料相談にて、円滑なプロジェクト推進のための提案を致します。

参考(参考文献・関連URL)

  1. e-Gov 法令検索."薬局等構造設備規則".https://laws.e-gov.go.jp/law/336M50000100002,(参照 2026-06-04). ↩︎
  2. 東京都保健医療局."東京都薬局等許可審査基準".https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/hokeniryo/2026-05-25-121002-518,(参照 2026-06-15). ↩︎
  3. 厚生労働省保険局医療課長他.“「保険医療機関及び保険医療養担当規則の一部改正等に伴う実施上の留意事項について」の一部改正について(令和6年3月5日保医発0305第15号)”.https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001219504.pdf,(参照 2026-06-15). ↩︎
  4. 大田区."薬局の独立性に関する申告書".https://www.city.ota.tokyo.jp/jigyousha/imu/yakkyoku_tetsuzuki.files/yakkyoku-dokukritu.pdf,(参照 2026-06-15). ↩︎
  5. 越谷市."薬局等許可の審査基準及び指導基準".https://www.city.koshigaya.saitama.jp/kurashi_shisei/fukushi/hokenjo/yakuji/iryoukiki/iryoukikikyokasnnsei_files_shinsakijunVer.6.pdf,(参照 2026-06-04). ↩︎
  6. e-Gov 法令検索."行政手続法(平成五年法律第八十八号)".https://laws.e-gov.go.jp/law/405AC0000000088?occasion_date=20271211,(参照 2026-06-15). ↩︎
  7. 東京都福祉局. "東京都指定自立支援医療機関(育成医療・更生医療)指定要領別紙". https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/fukushi/2-siteiyouryo_ikuseikouse22-4-1beppy_,(参照 2026-06-15). ↩︎
  8. 関東信越厚生局."保険医療機関・保険薬局の指定申請(新規指定等)手続き".https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/shinsei/shido_kansa/hoken_shitei/shitei_shinsei.html,(参照 2026-06-15). ↩︎

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