【フェムテック法規制】吸水ショーツ・月経カップは医薬部外品?医療機器?生理用品と雑品の境界線を徹底解説
【この記事の結論(30秒でわかる要約)】
フェムテック製品のうち生理用品類の国内展開において、最も注意すべきは「医療機器」および「生理処理用品(医薬部外品)」への該当性です。
- 月経カップ・ディスク: 身体に挿入する性質上、「一般医療機器(クラスⅠ)」に該当します。2023年に策定された「自主基準」により、生理用タンポンと同等の品質・安全性が厳格に求められます。
- 吸水ショーツ(医薬部外品): 「生理処理用品」としての承認を得るには、反復使用や洗濯を前提とした高度な安全性試験が必要です。
- 吸水ショーツ(雑品): 原則「衣類」ですが、LPで「経血の吸収」を主目的とすると、無許可販売として行政指導の対象になります。 「青い液体ならセーフ」という誤解は、事業を根底から揺るがします。最新の行政指針に基づき、適法な立ち位置を早期に確定させることが不可欠です。
1. 「経血を集める・吸収するアイテム」は法律上どう扱われる?フェムテック参入の壁
D2CやOEMの広がりにより、フェムテック市場への参入障壁は一見低くなったように見えます。しかし、日本の法律は「月経」に関連するアイテムに対し、厳格な法規制の網をかけています。
スタートアップが直面する2つの悩み
多くの事業者が陥るのが、以下の2つのジレンマです。
- 自社製品が「医療機器」や「医薬部外品」に該当してしまわないか? 許認可の取得にはコストと時間がかかりますが、これを知らずに無許可で販売を行うと、製品回収や行政処分という致命傷を負います。
- 「雑品(衣類など)」として売る場合、どう魅力を伝えればよいか? 薬機法を遵守しつつ、消費者にメリットを伝える「表現の境界線」を見極める実務能力が問われます。
2. 【早見表】月経関連アイテム・吸水製品の法的分類
あなたが扱おうとしている製品はどこに分類されますか?以下の表で確認してください。

| 製品名称の例 | 使用目的 | 想定される主な法的分類 | 備考・注意点 |
|---|---|---|---|
| 月経カップ、月経ディスク、生理用タンポン | 経血(血液)を吸収・回収 | 医療機器 | 【製造・輸入元になる場合】第三種製造販売業許可や品目届出等が必須 【小売・販売のみを行う場合】 一般医療機器のため販売業の許可・届出は不要 |
| 生理用ナプキン、経血吸収ショーツ | 経血(血液)を吸収 | 医薬部外品 | 【製造・輸入元になる場合】製造販売業許可や品目承認等が必要 【小売・販売のみを行う場合】 販売業の許可・届出は不要 |
| 吸水ショーツ、布ナプキン、サニタリーショーツ(月経時に着用する用のショーツ)、パンティライナー、尿取りパッド、おりものシート | 水、尿、おりものを吸収 | 雑品(衣類等) | 生理・経血についての言及はできない。それを暗示させるのもNG。あくまで「サニタリーサポート」 |
3. 体内挿入型アイテム(月経カップ・ディスク)の「医療機器該当性」
海外のOEM工場から月経カップ等を仕入れてAmazon等で売ろうとするケースが散見されますが、経血処理を訴求する場合、それらは「衣類」でも「雑貨」でもありません。
法律上の位置付け:一般医療機器(クラスⅠ)

膣内に留置して経血を回収するカップ状の器具は、薬機法上で「一般医療機器(クラス1)」に分類されます。そのため、製造販売にあたっては「第三種医療機器製造販売業」以上のライセンスと品目届出が必須です。一般的名称は「生理用タンポン」として、いわゆるタンポンと同じ枠組みで規制がなされています。
2023年策定「自主基準」
注目すべきは、2023年3月に周知された「月経用(生理用)カップ自主基準1」です。この自主基準は、トキシックショック症候群(TSS)に関する警告表示や、カップ容量の測定(許容差±3mL以内)などの体内に挿入するカップ型の器具を想定した品質基準を示すものです。医療機器は届出(クラスⅠ)であっても品質管理を行うことは必須ですから、それが明確にされているのはとてもありがたいですね。この自主基準への適合が実務上の必須要件となっています。
2023年3月23日付事務連絡「一般社団法人日本衛生材料工業連合会の作成した月経用(生理用)カップ自主基準について」
- 物理的・化学的要求事項: 引張強度や漏れにくさ、材料から有害物質が溶け出さないこと(溶出物試験)の証明。
- 生物学的安全性: 粘膜に直接触れるため、細胞毒性や感作性(アレルギー反応)がないことを確認する試験。
- 適正な取扱説明の義務化: TSS(毒性ショック症候群)のリスク回避、最長使用時間(12時間以内)、煮沸消毒や薬液消毒(ミルトン等)の具体的な手順の記載。
「海外で販売されているんだから、日本でも売れるはず」と思い込んで輸入しても、日本独自の基準を満たしていなければ、適法に流通させることはできません。
4. 医薬部外品(生理処理用品)として承認を得るためのハードル
続いて、ナプキンやショーツを用いて経血を(体外で)吸収させる物は、薬機法上で「医薬部外品(生理処理用品)」に分類されます。そのため、製造販売にあたっては「医薬部外品製造販売業」ライセンスと品目についての承認を得る必要があります。このハードル、特に承認を得るハードルは高いのが現状です。

承認を得るために、この品目がどういうものであるべきかは「生理処理用品製造販売承認基準2」、「経血吸収ショーツ等にかかる評価の観点について3」に示されています。後者の一部を示すと以下のようなものです。
経血吸収ショーツは再利用を前提とした試験データが求められるのがポイントですね。
2021年10月21日付厚労省事務連絡「経血吸収ショーツ等に係る評価の観点について」及び「経血吸収ショーツ等に係る広告表現の考え方について」について」
- 反復使用の安全性評価: 血液を用いた吸水性能試験に加え、洗濯による劣化が品質にどう影響するかを証明する必要があります。
- 皮膚・粘膜への影響: 長時間、血液の塊が肌に接することによる炎症リスクの評価が求められます。
- 白色の原則: 日本の生理処理用品には「表面材は白色」というJIS規格に準じた慣習があり、黒色や紺色が主流の吸水ショーツはこの点でも承認が困難です。
このように高いハードルを理由に、「雑品(衣類)」として広告表現を工夫する戦略を選ぶ事業者様も多い状況です。
5. 「吸水ショーツ」を雑品として売るための広告表現の境界線
「雑品」として売る場合、最も危険なのは「血液を吸収/回収している」「生理用ナプキンの代わりになる」という誤認を誘う表現です。

「青い液体ならセーフ(?)」という落とし穴
ここで、私が遭遇した事例を紹介します。LPに経血吸収を強く示唆する動画を掲載していたため、私が「これは医薬部外品(無承認無許可)にあたる」と指摘した際、担当者はきょとんとしてこう言いました。「え?でも動画で使っているのは『青い液体』ですよ?赤じゃないから大丈夫じゃないんですか?」
確かに、ガイドラインでは「赤い液体の使用」は経血を暗示するためNGとされています。しかし、「液体の色が青ければ、文脈を問わずセーフ」というわけではありません。たとえ青い液体を使っても、「ナプキンが不要になる」「経血を吸収」という文脈で使用するならば、それは立派な「生理処理用品(無承認)」の標榜です。
行政指針に基づくOK/NGのライン
2021年の厚労省事務連絡に基づき、表現を整理します。
- NG例: 「ナプキン○枚分の吸収力」「経血をしっかり吸収」「ナプキンなしで過ごせる」
- OK例: 「吸水サニタリーショーツ(商品名)」「○○mlの水分を吸収」「生理用品(ナプキン等)のバックアップに」「サニタリー期間を快適にサポート」

6. まとめ|「開発・輸入前」の法規制診断が事業を守る
フェムテック製品は、機能の見せ方一つで法律上の扱いが「医療機器」「医薬部外品」「雑品」と激変します。
「青い液体」といった小手先のテクニックに頼るのではなく、2023年の最新自主基準や行政ガイドラインに基づき、製品の立ち位置を正しく定義することが、最短で成功するための道筋です。

おおぐし行政書士事務所からのメッセージ
製品開発やOEM委託が進んでから「法律上、販売できない」と判明するロスは、スタートアップにとって耐え難いものです。おおぐし行政書士事務所では、最新の「月経カップ自主基準」への適合性確認や、吸水ショーツの「該当性確認」、LPのリーガルチェックなどの支援業務を承っております。
まずは無料相談にて、貴社のお悩みやビジネスモデルをお聞かせください。
免責事項: 本記事の内容は、執筆時点の法令・ガイドラインに基づく個人的見解であり、具体的な案件については個別事情により判断が異なる場合があります。実務に際しては、必ず管轄の薬務課や専門家にご相談ください。
参考資料
- 2023年3月23日付事務連絡「一般社団法人日本衛生材料工業連合会の作成した月経用(生理用)カップ自主基準について」 ↩︎
- 令和3年6月28日薬生発0628第4号「生理処理用品製造販売承認基準について」 ↩︎
- 2021年10月21日付厚労省事務連絡「経血吸収ショーツ等に係る評価の観点について」及び「経血吸収ショーツ等に係る広告表現の考え方について」について」 ↩︎

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