【スタートアップ必見】医療機器アプリ(SaMD)やIoT機器の販売・貸与業許可は必要? 管理者要件の「特例」と遵守事項

本記事は、ソフトウェア・アプリ(SaMD)やIoTウェルネス機器に特化して解説しています。コンタクトレンズや物理的なハードウェア機器の販売・貸与業の全体像を知りたい方は、こちらの基本解説記事をご覧ください。

ヘルスケアアプリやIoTウェルネス機器を開発し、いざ市場へローンチしようというフェーズで立ちはだかるのが「薬機法」の壁です。

医療機器ビジネスは、製品を「作る(製造販売業)」だけでなく、それを顧客に「売る・貸す(販売業・貸与業)」というプロセスがあって初めて成り立ちます。たとえ自社で製造を行わず、他社が作ったアプリやデバイスを仕入れて販売・サブスク提供するだけでも、扱う製品によっては薬機法に基づく「許可」や「届出」が必要になることをご存じでしょうか。

「医療機器の販売には、何年も業界経験がある専門人材を雇わないといけないのでは…?」と不安に思うスタートアップ経営者の方も多いはずです。しかし医療機器プログラム(SaMD/サムディーと読みます)に限っては、要件をクリアする「特例」が存在します。

本記事では、自社のビジネスモデルに許可や届出が必要かを判断するポイントと、スタートアップが知っておくべき「管理者の要件(SaMD特例を含む)」、そして許可不要の機器でも守るべき「遵守事項」について分かりやすく解説します。


1. 許可・届出の要否は「扱う機器のリスク分類」で決まる

販売業・貸与業の規制は、全ての医療機器に一律でかかるわけではありません。人体へのリスクに応じた「クラス分類」と、「特定保守」が必要かどうかによって、必要な手続きが変わります。

医療機器プログラム(SaMD)のクラス分類と必要な手続き

リスク分類SaMD・デジタルヘルス関連などの医療機器の例販売・貸与に必要な手続き販売業者・貸与業者の遵守事項
クラスⅢ・Ⅳ(高度管理医療機器)のうちのSaMD治療用アプリ、診断支援AIプログラムなど許可(審査あり、営業所管理者の設置必須)あり
クラスⅡ(管理医療機器)のうち
特定管理医療機器
家庭用IoT血圧計、高血圧症治療補助プログラムなど、下欄の家庭用4品目以外のクラスⅡのSaMDはすべて届出(審査なし、営業所管理者の設置必須)あり
クラスⅡ(管理医療機器)のうち
指定を受けた家庭用管理医療機器のうちのSaMD、IoT機器
(SaMDは4品目のみ)家庭用マッサージ器用プログラム、針付バイブレータ用プログラム、家庭用心電計プログラム、家庭用心拍数モニタプログラム、(IoT機器)家庭用電気マッサージ器、家庭用エアマッサージ器、針付バイブレータ、家庭用電気磁気治療器、家庭用電動式吸入器など、電気通信機能を持たせることが可能な有体物許可も届出も不要(営業所管理者の設置も不要)あり
クラスⅠ(一般医療機器)のうちのSaMDなし。一般医療機器(クラスⅠ)に相当する医療機器プログラムは存在しません。なしなし

※ウェルネス機器(非医療機器)の場合は、薬機法上の販売業の許可・届出は不要ですが、広告表現の規制(景表法・薬機法)を遵守する必要があります。

SaMDやIoT機器のクラス分類と販売・貸与に必要な手続き(許可・届出)の対応表
【図解】扱う機器のリスク分類と必要な手続き

2. 【要注意】スタートアップの最大の壁「営業所の管理者」要件とSaMDの特例

販売・貸与業の許可や届出を行う上で、最も重要な人的要件が「営業所の管理者」の設置です。営業所ごとに1名の設置が義務付けられており、品質確保や従業員への教育を担当します。

実は、他業種から参入するスタートアップにとって、一般的な医療機器の管理者要件は非常に高いハードルとなります。しかし、ソフトウェア(SaMD)の場合は大きな特例(救済措置)が用意されています。やったね!

一般的なハードウェア医療機器を扱う場合

物理的な医療機器(高度管理医療機器など)を販売する場合、以下の厳しい実務経験が求められます。

  • 要件: 医療機器の販売・貸与業務に「3年以上」従事した後、基礎講習を修了した者(または医師・薬剤師などの有資格者)
  • 課題: スタートアップが「実務経験3年」を持つ人材をゼロから採用するのは至難の業です。

【特例】医療機器プログラム(SaMD)のみを扱う場合

ここがスタートアップにとって最大のポイントです。扱う製品が「医療機器プログラム(SaMD)」のみである場合、実務経験の要件が免除されます。

  • 要件:実務経験は不要。厚生労働大臣の登録を受けた者が行う「基礎講習」を受講するだけで管理者の資格を得られます。
  • メリット: つまり、社長ご自身や社内のエンジニアであっても、数日間の講習を受けるだけで、適法にSaMDの販売・貸与業の管理者になることが可能です。(※製造販売業における「三役」の要件とは異なりますのでご注意ください)。
SaMD(医療機器プログラム)における営業所管理者の要件特例(実務経験不要)
【図解】SaMD限定!実務経験が不要になる管理者要件の特例

3. 許可取得・届出後も油断禁物!クラスⅠでも求められる「遵守事項」

「うちはクラスⅠ(一般医療機器)だから手続き不要だ」「届出を出したからもう安心」と思うのは危険です。薬機法では、手続きが不要なクラスⅠであっても、医療機器を流通させる以上は守るべきルール(遵守事項)が厳格に定められています

【特に重要な3つの遵守事項】

  1. 記録の作成と保管(トレーサビリティ): 誰から仕入れ、誰に販売・貸与したかを正確に記録し、一定期間(原則6年)保管する義務があります。万が一アプリにバグ(不具合)があり、健康被害が出た際の回収(リコール)に備えるためです。
  2. 従業員への教育訓練: 管理者は、従業員に対して品質確保に関する研修を計画的に実施する必要があります。
  3. 管理者の意見の尊重: 経営者(許可取得者)は、法令遵守のために管理者が述べる意見を尊重し、事業運営に反映させなければなりません。

これらを怠り、不適切な管理や記録の不備が発覚した場合、行政指導や業務停止処分の対象となるリスクがあります。

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この3つ以外に、どんな事が義務・努力義務なのかを知りたい方は、こちらの基本解説記事をご覧ください。


4. 【ケース別】あなたのビジネスモデルに必要な手続きは?

デジタルヘルス領域における具体的なビジネスモデルに当てはめてチェックしてみましょう。

  • ケースA:自社で開発した「疾患治療用アプリ(クラスⅢ)」を医療機関向けにサブスク提供したい
    • 必要な手続き: アプリそのものが高度管理医療機器にあたるため、「高度管理医療機器等販売業・貸与業の許可」が必要です。ただし前述の通り、プログラム特例により実務経験不要で管理者を設置できます。
  • ケースB:海外製のIoT血圧計(クラスⅡ)を輸入し、自社の健康管理アプリとセットで一般消費者に直販したい
    • 必要な手続き: ハードウェア(血圧計)がクラスⅡであるため、「管理医療機器販売業・貸与業の届出」が必要です。この場合、ハードウェアを扱うため「実務経験1〜3年+専門講習」などの管理者要件を満たす必要があります。
  • ケースC:医療機器には該当しない「ウェルネス機器・睡眠トラッカー」を販売したい
    • 必要な手続き:販売業の許可・届出は不要です。ただし、販売時のLPや広告において「不眠症が治る」といった医療機器的な効果効能を謳うと、薬機法違反(未承認医療機器の広告禁止)となります。

まとめ:ビジネスモデルの適法性は「開発前」に確定させよう

医療機器・ヘルスケアビジネスにおいて、「完成してから売り方を考える」のは極めてハイリスクです。販売業の許可が必要なことに後から気づき、要件を満たす人材がいなくてリリースが半年遅れる……といった事態は絶対に避けなければなりません。

「自社のアプリはSaMDに該当するのか?」「このIoTデバイスを売るには、誰を管理者として立てればいいのか?」

おおぐし行政書士事務所では、ヘルスケアスタートアップの皆様へ向けた『事業モデル・法規制リスクの無料診断』を実施しています。後戻りのないスムーズな市場参入を実現するために、まずは企画・開発の初期段階でお気軽にご相談ください。

行政書士A

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