「海外化粧品を輸入して売りたい!」実務ガイド:ステップ1 | その製品、日本で売れる?成分チェックと日本名特定

輸入化粧品の実務ガイド基礎知識編(「海外化粧品を輸入して売りたい!」実務ガイド:基礎知識編 | 成功へのロードマップと全4ステップの全体像)で示した通り、輸入ビジネスの「ステップ1」は、手元にあるその製品が「日本のルールで販売できるか」の一次判定を行うことです。

海外では人気でも、日本の基準ではNGというケースは珍しくありません。せっかく輸入したのに「販売禁止」で全品廃棄……という最悪の事態を避けるために、まずはこの記事で成分チェックの「正しい進め方」を把握しましょう。

1. 大前提:薬機法で「禁止された化粧品」に該当しないことの確認

 海外メーカーと交渉を始める前に、まず私たちが何を「証明」しなければならないのかを知る必要があります。それは、輸入しようとする製品が、日本の法律(薬機法)で定められた「禁止された化粧品」に該当しないことです。

チェックすべき基準の全体像

 日本の水際(通関)および国内流通において、クリアしなければならない主なハードルは以下の通りです。

  • 成分・分量の基準:
    • 承認化粧品の内容との一致(承認が必要な製品の場合)
    • 「化粧品基準」(配合禁止・制限成分)への適合
    • 「生物由来原料基準」(BSE対策等)への適合
    • 「タール色素を定める省令」(法定色素)への適合
  • 品質・衛生状態の基準:
    • 異物混入、変質、病原微生物による汚染がないこと

💡 さらに深く知りたい方へ

 これら各基準の法的な詳細解釈や、実際に安全性を証明するための「試験検査」の実務については、以下の記事でさらに深掘りして解説しています。

日本で流通が禁止される化粧品とは:化粧品基準から品質保証の試験検査まで

日本で流通が禁止される化粧品とは?薬機法第56条の成分規制(化粧品基準・生物由来原料基準・タール色素省令)を徹底解説。品質保証のエビデンスとなる試験検査(微生物…

2. 基礎知識:輸入前に知っておくべき「2つの成分名称」

海外製品を輸入する際、成分には「共通名称(INCI名)」と「日本独自の法定名称(化粧品表示名称)」があることを理解しなければなりません。

INCI名(インキめい)とは?

「化粧品原料の国際命名法」に基づいてつけられた化粧品原料の国際的名称で、米国パーソナルケア製品評議会(PCPC)が作成・管理しています。INCI名(私は「インキめい」と読みます)やINCI名称と呼ばれたりします。

PCPCはアメリカの業界団体ですし、INCI名は厳密には「万国共通の公的名称」とは言えません。しかし、化粧品の成分表示をグローバルに統一するためのアイデアから生まれたもので、アメリカやEUをはじめ、多くの国が自国の成分表示ルールを作成する際にこのINCI名を参照しています。日本も例外ではなく、化粧品を輸出入する際の「共通言語」として事実上の標準(デファクトスタンダード)となっているため、実務上は非常に重宝されます。

現在、一般的に日本で手に入る化粧品の成分のほとんどは、既にINCI名が登録されています。世界中で製造・販売されている化粧品は、おおむねINCI名に則った配合成分の表示がなされている現状からも、化粧品の成分を特定する際に国際的に通用する名称として使われていると言えるでしょう。

化粧品成分表示名称(日本名)とは?

対してこちらは「日本語の名称」ですね。2001年4月から日本国内で化粧品を販売する際はパッケージに全成分を表示することが原則となりましたが、その表示する成分の名称は日本化粧品工業連合会※作成の「化粧品成分表示名称リスト」を利用することとされています[1]。

※日本化粧品工業連合会(粧工連/「しょうこうれん」と読みました)は、2023年4月に日本化粧品工業会(粧工会/「しょうこうかい」と読みます)に改組しました。私はいまでもうっかり「しょうこうれん」と言いがちです。

 もともと全成分表示は、「配合成分に関する情報を消費者に正確に伝えて、消費者がアレルギーなどを起こす可能性のある成分を避けたりと、消費者が製品を選択しやすくする」といった目的がありますので、一つの成分に対して企業が好き勝手に名前をつけるのはその目的に反しちゃいますからね。

  • たとえば「H2O」も「水」と表示する場合と「天然水」と表示するのではイメージが異なりますし、アレルギーのある場合なんてアレルギー物質を避ける難易度が上がりまくりになっちゃいます。
  • INCI名をそのままカタカナ読みしただけでは「表示名称」とは認められません。例えば、INCI名が「Water」であっても、表示名称は「水」でなければならず、適切な変換(和訳)が必須となります。

 現在は「一つのINCI名に対して一つの化粧品表示名称」の方針でリストが作成・管理されています(初期に作成した名称などでは、まだ整理が及んでなくて一つのINCI名に対して複数の表示名称があったりします)。

💡 さらに深く知りたい方へ

実務上「化粧品表示名称がない」「INCI名がない」成分ってままあるんですけど、そういう成分を配合した化粧品を日本で流通させるためには、作成手続きが必要です。手続きはこちらで解説しています。

新規・海外化粧品原料の必須手続き|INCI名・表示名称作成申請 完全ガイド

その海外化粧品原料、どう表示する?新規成分の利用に必須な「INCI名」と「表示名称」の作成申請手続きを解説。PCPCと日本化粧品工業会への申請方法と注意点をまとめまし…

3. 海外メーカーから情報を引き出す「交渉」のテクニック

 日本の「化粧品基準」への適合を証明するには、パッケージ裏面のリストだけでは不十分です。メーカーから詳細な「処方情報」を引き出すことが必要なんです…が、結構面倒くさがられるのはあるあるですね。

「日本の薬事行政って厳しくて有名なんだけど、それ本当なんだよね。面倒なのは最初だけだから、おねがい!」と協力を仰ぐしかありません。

3.1 実務上の重要資料リスト

 これらは法的に名称が指定されているわけではありませんが、日本の基準への適合を客観的に証明するためにも、実務上は入手が強く推奨される資料です。

  • Ingredients list: いわゆる成分表です。単なる材料(原料)リストではないことに注意が必要です。材料そのものが混合物である場合、その原料が何でできているのかを分解して開示してもらう必要があります。また、最終的な全成分をすべて足して100%になるかどうかの確認も必須です。
  • 製品仕様書(Product Specification): 最終製品の外観、pH、比重、規格などが記載された、その製品の「正解」を定義する書類です。日本での受入検査の基準となります。
  • 取り決め書(Quality Agreement): 海外メーカーとの間で、品質管理(GQP)の責任分担や、仕様変更時の連絡体制、不良品発生時の対応などを明確に取り決めた契約書類です。
  • SDS(Safety Data Sheet) / TDS(Technical Data Sheet): CAS番号の特定と、重金属や微生物限度などの品質基準の確認。
  • Manufacturing Process: 反応による副生成物(不純物)の残留リスクを推定。
  • Certificate of Origin: 植物の学名・部位や、BSE対象成分のトレーサビリティ確保。

4. INCI名から日本名(表示名称)を特定するフロー

入手した情報を基に、以下のフローで「日本名」を特定します。

  1. 名称の識別とヒアリング: Ingredients listに記載された各成分が、正式なINCI名か原料の商品名(Trade Name)かを識別します。商品名であった場合にはメーカーに追加ヒアリングを行い、すべての構成成分をINCI名で開示してもらうよう情報を整えます。
  2. 既存日本名との照合: 各INCI名を粧工会のデータベースで検索し、日本での公式な表示名称に翻訳します。特に植物エキス等は、抽出部位(根、葉、花など)や抽出溶媒(水、BG、エタノールなど)の違いによって名称が細かく分かれているため、入手したTDSや成分表と照らし合わせた厳密な確認が必要です。
  3. 名称がない場合の対応: その原料を使うには、新たにINCI名や表示名称を作成・申請する必要があります。時間の余裕がない場合には、さくっと当該成分を入れ替えて日本用処方に変更してもらうこともあります。
新規・海外化粧品原料の必須手続き|INCI名・表示名称作成申請 完全ガイド

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5. 日本の「化粧品基準」照合:よくある地雷の例

翻訳した成分を日本のリストに照らします。実務で「地雷」となりやすいポイントです。

  • 防腐剤: 日本では配合禁止の「ホルマリン遊離型」が海外処方に含まれていないか。
  • 着色剤: 日本の法定色素(83種類)と一致するか。特に「粘膜使用制限」に注意。
  • 紫外線吸収剤: 日本の配合上限を超えていないか。
日本で流通が禁止される化粧品とは:化粧品基準から品質保証の試験検査まで

日本で流通が禁止される化粧品とは?薬機法第56条の成分規制(化粧品基準・生物由来原料基準・タール色素省令)を徹底解説。品質保証のエビデンスとなる試験検査(微生物…

6. 2026年最新の注意点:ワシントン条約とCBD

  • ワシントン条約 (CITES): 植物・動物由来を問わず、学術名(ラテン語)で特定し附属書を確認。サメ由来スクワランや生薬エキス(ロクジョウ等)は特に注意が必要です。
  • CBD: かつての「部位証明書」に代わり、現在はTHC(テトラヒドロカンナビノール)の残留限度値への適合確認が実務の主眼となっています。

まとめ:成分チェックはビジネスを支える「保険」です

成分チェックを疎かにすることは、全回収前提で輸入し販売しようとしているのとイコールです。

  • 輸入後の販売禁止・全品回収損害
  • 健康被害による賠償金、課徴金リスク(売上の 4.5%)

これらを回避するための「一次判定」こそが、輸入ビジネス成功の鍵です。

ビジネス成功へのロードマップ(詳細連載へ)

ここからは、実際にビジネス(製造販売ルート)を歩むための具体的なステップを解説します。

税関クリアし輸入するために

基礎知識編

「海外化粧品を輸入して売りたい!」実務ガイド:基礎知識編 | 成功へのロードマップと全4ステップの全体像

【行政書士執筆】2026年最新の化粧品輸入販売実務ガイド。関税法第70条の「他法令の証明」や改正薬機法に基づくオンライン申請(輸入確認証)のポイントを徹底解説。「海…

まずはここから。「他法令の証明」の説明含め全体をお伝えしています。

成分・法定表示の事前確認

STEP 1

「海外化粧品を輸入して売りたい!」実務ガイド:ステップ1 | その製品、日本で売れる?成分チェックと日本名特定

海外化粧品輸入の最初の関門「成分チェック」を徹底解説。日本の薬機法・化粧品基準に基づき、INCI名から表示名称への翻訳フローや、メーカー交渉に必要な重要書類(Ingre…

海外の成分表を日本の「化粧品基準」に照合。ここでの判断ミスは全回収のリスクに直結します。

海外メーカーと交渉、取決め

STEP 2

「海外化粧品を輸入して売りたい!」実務ガイド:ステップ2 | 海外メーカーとの品質取決め(GQP)と交渉

海外化粧品メーカーとの交渉・GQP品質取決めの要点を行政書士が解説。「企業秘密」という拒絶を突破し、成分情報を引き出す具体的アプローチや、1%ルール活用術、契約書…

海外メーカーから情報を引き出す交渉とNDA締結について。

2種類の「業許可」の取得

STEP 3

化粧品製造販売業許可取得の完全ガイド – 申請から運用までのステップ –

化粧品製造販売業許可の申請ガイド。許可要件からGQP/GVP手順書の作成、総括の役割、行政による立入検査のポイントまで具体的に解説。スムーズな事業開始と法令遵守のため…

「製造販売業」と「製造業」の許可。人的要件(三役)の常勤性など、実務上の壁を解説した記事です。

販売開始のための届出実務

STEP 4

「海外化粧品を輸入して売りたい!」実務ガイド:ステップ4 | 販売開始のための届出実務

化粧品輸入の最終関門「製造販売届」を攻略。2026年現在の実務で「窓口でのFD申請」がまだ多い理由や、PMDAへの外国製造業者届、受理される販売名の命名ルールまで徹底解…

輸入化粧品では、2つの届け出でようやく「他法令の証明」をクリアできるようになります。

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