【フェムテック法規制】セックストイは雑品?医療機器?セクシャルウェルネス参入の壁と将来の規制動向

この記事は、2022年7月28日に公開した旧記事を、2026年という今のフェムテック市場に合わせてボリュームマシマシにしたものです。

行政書士の大串です。近年、フェムテック市場の拡大に伴い、プレジャートイ(セックストイ)は、百貨店や大手ドラッグストアにも並ぶ「セクシャルウェルネス製品」へと進化を遂げています。しかし、流通のメインストリームに乗るためには、越えなければならない法規制の壁が存在します。

本記事では、事業者が市場参入し、大手流通を突破するための法的ポジショニングと、将来の規制動向について解説します。

【この記事の結論(30秒でわかる要約)】

  • 現在の法的分類: 日本の現行法上、セックストイは原則として「雑品」であり、医療機器には該当しません。ただし、「不感症の改善」など治療目的を謳うと未承認医療機器として薬機法違反となります。
  • IoT化等による新たな壁: 最新デバイスの輸入・開発においては、アプリ連動によるSaMD(プログラム医療機器)該当リスクに加え、通信機能に対する電波法(技適)、バッテリーに対するPSE(電気用品安全法)のクリアが求められます。また、防水・抗菌等の表現における景品表示法の根拠資料の確保も重要です。
  • 将来の動向: 国際規格「ISO 3533」の発行や米国FDAの動向を踏まえ、将来的には日本でも「健康器具」としての規制や医療機器化へとシフトする重要な動向が見込まれます。

「アダルト」から「ウェルネス」へ。プレジャートイ市場の変革と法規制

フェムテックの台頭も後押ししたのか、セクシャルウェルネス製品は「日用品・ヘルスケアデバイス」として市民権を得つつあります。大手百貨店でポップアップストアが展開され、ドラッグストアにスタイリッシュなパッケージが並ぶ時代です。

しかし、市場がオープンになるほど、大手流通チェーンやECプラットフォームの審査は厳格化します。バイヤーが警戒するのは「法的なグレーゾーン」です。コンプライアンスを重視する現代において、クリーンで適法な製品設計と広告表現の徹底が、ブランドの命運を分ける課題となっています。

セックストイの法的分類:なぜ「医療機器」に該当しないのか?

日本の現行法において、セックストイを直接的に規制する単独の法律はありません。ビジネスを展開する上で、まずは基本的な法的切り分けを理解する必要があります。

基本的には「雑品」、でも医療機器にもなり得ます

現時点において、単に性的快感やリフレッシュを目的とするプレジャートイは、法的な扱いは「雑品」という位置付けになります。人の身体の構造や機能に影響を及ぼすことを目的としなければ「医療機器」には基本的には該当しません。そのため、医療機器としての製造販売業許可などがなくても、原則として販売が可能です。

薬機法における医療機器の定義を示す3要素のベン図
医療機器とは?(対象・目的・政令指定の3要件)

セックストイが図の「AかつBかつC」になって、医療機器にあたるのかのチェックが気になる方は、こちらのアコーディオンを開いて見てみてください。

これはもう、「はい、そうです。」な物がほとんどですね。

①病気の診断・治療・予防
②身体の構造や機能に影響を与える

これは判断が難しいところで、「製品ごとに総合的に判断する」としか言いようがありません。
ただ、下記のような目的の製品だと、該当してきちゃいます。

  • 不感症、EDを治す
  • 膣の拡張
  • 膣内洗浄
  • 骨盤底筋トレーニング・・・骨盤底筋トレーニングについては別記事もあります。参考にどうぞ(別記事リンク)。

あと番外ですが、下記のような表現にも注意が必要です。

  • 傷を治す、トラブル鎮静:医薬品にあたる
  • 肌の美白/ホワイトニング:医薬部外品にあたる
  • 肌にうるおいを与える:化粧品にあたる

要はすでに「医療機器」としてリストアップされているかどうか、ということです。

薬機法には施行令という政令がありまして、その別表第一にリストアップされてます。
そしてここに、セックストイに縁がありそうな名前があったりするのです。

わかりやすいものをピックアップしてみました。

機械器具
五十八 整形用機械器具
七十七 バイブレーター

衛生用品
 コンドーム
 避妊用具
 性具

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行令

最後にある「性具」とは具体的にどういうこと?範囲広すぎない?となる方もおられるかと思います。
これについては、かつて裁判所が白黒つけてくれています。

薬事法施行令別表第一に掲げる「性具」とは、人が性交若しくは性交類似行為(自慰を含む)に際し性感の刺激、増進ないし満足のために性器に付着あるいは接触させて使用することを目的とする器具をいうものと解するのが相当である。[3]東京高裁昭和50年11月25日判決(刑集第28巻4号465頁)

・・・というわけで、「性具ってそういうイメージ!」ってものが「性具」に該当するようです。

ちなみに、添付文書1として押収された製品の名称一覧が見として押収された製品の名称一覧が見られます。なかなか味わい深いものがあります。被告によると「一般人向けではない製品群」(全文の理由(第2段)より要約)だそうです。

境界線を分ける「使用目的」と「形状」の罠

というわけで注意すべきなのが何なのかはおわかりですね。そう、製品の「使用目的(広告表現)」です。「リフレッシュ」であれば雑品として扱われますが、人の身体の構造や機能に影響を及ぼすことを目的して扱ったとき、例えばパッケージやLPで「不感症の克服」「膣の機能回復」といった医療・治療的な効果を謳った瞬間に、その製品は「医療機器として扱われるべきもの」となります。医療機器に求められる必要な手続きや許可を備えてない場合には、「未承認医療機器の流通」とみなされ、薬機法違反に問われてしまいます。

セックストイの医療機器の該非判定における実務上の罠(目的と政令指定)を示す赤字入りベン図
記憶に留めておくと便利な、医療機器の「使用目的」「使用対象」と「政令指定」

特に、体内挿入型の製品については、粘膜への安全性や、既存の医療機器(膣洗浄器など)への該当性が厳格に問われる傾向にあります。物理的な形状と広告表現の双方が、法的リスクの境界線を決定づけます。

現代のトイ開発・輸入における「薬機法以外」の落とし穴

D2Cブランドやスタートアップが海外の最新デバイスを輸入販売する際、薬機法以外の規制を見落とす事例が散見されます。

アプリ連動型トイと「SaMD(プログラム医療機器)」の境界線

近年トレンドとなっているのが、スマートフォンアプリと連動するIoTデバイスです。単に強弱をアプリで操作する程度であれば問題ありません。しかし、デバイス内蔵のセンサーで膣圧や体温を測定し、アプリ側が「あなたの性機能の状態を評価し、改善のためのトレーニングを指示する」といったアルゴリズムを実装した場合、そのソフトウェアはSaMD(プログラム医療機器)に該当するリスクが浮上します。

関連記事

SaMDについてはコチラの記事で解説していますので、あわせてお読みください。

【2026年最新】ヘルスケアアプリはどこから「医療機器プログラム(SaMD)」? 該当性基準とビジネスモデルの分岐点

スマートフォン等を利用したヘルスケアアプリが医療機器プログラム(SaMD)に該当するかどうかの判断の線引きと、承認・認証ルートかウェルネスルートかのビジネスモデル…

輸入事業者が直面する「電波法(技適)」と「PSE(電気用品安全法)」の壁

IoTセックストイ輸入時の「技適(電波法)」と「PSE(電気用品安全法)」チェックフロー
外製IoTデバイス輸入時に立ちはだかる、通信機能とバッテリーの規制。

実務の現場で、事業者のビジネスが税関でストップしかける事例として「技適」と「PSE」が挙げられます。

薬機法上は「雑品」として扱われたとしても、Bluetooth等でスマホと通信する機器であれば、日本の電波法に基づく技術基準適合証明(技適)が必要です。さらに、PSE(電気用品安全法)への対応も求められます。最新のトイはUSB充電式が主流ですが、特定のエネルギー密度を超えるリチウムイオンバッテリーを内蔵している場合や、専用のACアダプターを同梱して輸入・販売する場合、PSEマークの取得(適合性検査等)が義務付けられます。

輸入を進めた結果、通関時や発売直前に技適とPSEの未取得が発覚し、製品の回収や海外工場での再設計を余儀なくされるケースがあります。ハードウェアを扱う以上、これらの技術適合要件は初期段階でバッチリ確認しておく必要があります。

「防水」「抗菌」等の広告表現と「景品表示法」のリスク管理

最新のデバイスでは「完全防水」や「抗菌素材使用」といった機能性をアピールする製品も増えています。しかし、海外メーカーが言うことを鵜呑みにして、そのまま日本の広告に記載することにはリスクが伴います。

景品表示法(優良誤認)の観点から、もし違反が疑われた際(不実証広告規制に基づく資料提出を求められた際)に、さっと客観的な裏付け資料を出せる状態にしておくことが大事です。輸入事業者は、販売前に必ずメーカーから「防水規格(IPX等)の試験レポート」や「抗菌性試験の証明書」等のソースをもらい、自社でエビデンスを保管する実務を徹底してください。


景品表示法違反を防ぐための広告エビデンス(試験レポート)確保の実務フロー
メーカーのカタログスペックを鵜呑みにしない、企業防衛のためのエビデンス確保フロー。

【独自考察】規制の今後と国際規格(ISO 3533)の行方

現在の「雑品」というポジションは、将来にわたって保証されるものではありません。持続可能なビジネスを構築するためには、国際的なルールメイキングの潮流を捉える必要があります。

セックストイの安全性に関する国際規格(ISO 3533)の誕生

2021年、セックストイの安全性等に関する国際規格「ISO 3533」が発行されました[4]。素材の安全性、リスク評価、ユーザー情報の提供などに関するグローバルな基準です。大手百貨店やグローバルなECプラットフォームでは、このISO基準を満たしていることが、事実上の仕入れ要件になっていくと見込まれます。

「健康器具」としての厳格化。日本でも医療機器化する日は来るか?

米国FDA(食品医薬品局)では、特定のバイブレーターが医療機器(クラスⅡ)として扱われる事例が存在します[5]。日本においても、フェムテック市場の成熟に伴い、「セクシャルヘルス機器」としての法整備が議論されるようになる未来の可能性があります。近いかどうかは、わかりませんが、そうなると法的エビデンスに基づいて製品を設計・管理しているブランドが市場に生き残ることになりますね。

まとめ|「嗜好品」から「ヘルスケア」へ昇華させるための法務戦略

セクシャルウェルネス製品は、その表現ひとつで「アダルトグッズ」として流通を拒まれるか、「ヘルスケア商品」として市場を牽引するかの分かれ道に立たされます。また、IoT化に伴うSaMD該当性や、技適・PSE・景表法といった様々な壁、将来的な法規制の強化など、事業者がクリアすべきハードルは存在します。新規事業としてブランドを立ち上げる際は、補助金採択を「無駄」にしないための初期の事業戦略と連動したリーガルチェックが有用です。

行政書士A

おおぐし行政書士事務所では、薬機法・景表法の遵守はもちろん、技適・PSE等の関連法規や、国際規格(ISO)を見据えた事業構築をサポートしています。百貨店展開や大手ECでの成功を目指すメーカー様、最新デバイスの輸入リスクを事前にクリアにしたい事業者様は、無料相談をご活用ください。

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免責事項: 本記事は執筆時における法令および個人的な実務見解に基づくものであり、特定の事案に対する法的助言を構成するものではありません。また、行政書士は弁護士法第72条の規定により、個別の法的紛争に関する代理交渉等を行うことはできません。製品の具体的な該非判定や個別の手続きについては、必ず専門家にご相談ください。

参考

  1. "薬事法の一部を改正する法律(平成25年6月14日法律第69号)"https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000045726.html
  2. "薬事法及び採血及び供血あつせん業取締法の一部を改正する法律(平成14年法律第96号)参考資料". 厚生労働省 . https://www.mhlw.go.jp/topics/2002/09/tp0910-2.html
  3. "東京高裁昭和50年11月25日判決(刑集第28巻4号465頁)". https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail3?id=20538
  4. "ISO 3533:2021 Sex toys — Design and safety requirements for products in direct contact with genitalia, the anus, or both". https://www.iso.org/standard/79631.html,(参照 2026-04-23).
  5. 米国食品医薬品局(FDA).“Product Classification (Device: Vibrator, genital, therapeutic)”.U.S. Food and Drug Administration.https://www.accessdata.fda.gov/scripts/cdrh/cfdocs/cfpcd/classification.cfm?id=4378,(参照 2026-04-23).

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