医療資格者の業務範囲を整理してみる (7)キ.義肢装具士PO
さて今回は、義肢装具士について。
他の職種ページへの移動は、本シリーズの「0(前提)」ページにリンクを置いてありますのでそちらから。
(7)キ.義肢装具士PO
身分の根拠法
義肢装具士は、PO(Prosthetist and Orthotist)と呼ばれることがあります。
そしてその身分の根拠法は「義肢装具士法」。こちらの略称は寡聞にして存じ上げません。
第二条 この法律で「義肢」とは、上肢又は下肢の全部又は一部に欠損のある者に装着して、その欠損を補てんし、又はその欠損により失われた機能を代替するための器具器械をいう。
義肢装具士法(昭和六十二年法律第六十一号)施行日: 平成二十八年四月一日, https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=362AC0000000061
2 この法律で「装具」とは、上肢若しくは下肢の全部若しくは一部又は体幹の機能に障害のある者に装着して、当該機能を回復させ、若しくはその低下を抑制し、又は当該機能を補完するための器具器械をいう。
3 この法律で「義肢装具士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、義肢装具士の名称を用いて、医師の指示の下に、義肢及び装具の装着部位の採型並びに義肢及び装具の製作及び身体への適合(以下「義肢装具の製作適合等」という。)を行うことを業とする者をいう。
この赤太字部(弊事務所追加)が、義肢装具士の資格職としての業です。
★医師の具体的な指示を要す行為
また、38条では厚生労働省令で定める行為については「医師の具体的な指示」を要求する旨示されています。
もともと義肢装具士の業は「医師の指示」を必要としますが(第2条第3項)、より裁量を狭める表現かと思います。
(第2条第3項の記述からは、「(技師及び装具の)製作」が抜けていることから、そこらへんはプロの技的な判断かしらと思ったりもしました。)
第三十八条 義肢装具士は、医師の具体的な指示を受けなければ、厚生労働省令で定める義肢及び装具の装着部位の採型並びに義肢及び装具の身体への適合を行つてはならない。
義肢装具士法(昭和六十二年法律第六十一号)施行日: 平成二十八年四月一日, https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=362AC0000000061
これは義肢装具士法施行規則に示されています。
(法第三十八条の厚生労働省令で定める義肢及び装具の装着部位の採型並びに義肢及び装具の身体への適合)
義肢装具士法施行規則(昭和六十三年厚生省令第二十号)施行日: 令和二年十二月二十五日, https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=363M50000100020
第三十二条 法第三十八条の厚生労働省令で定める義肢及び装具の装着部位の採型並びに義肢及び装具の身体への適合は、次のとおりとする。
一 手術直後の患部の採型及び当該患部への適合
二 ギプスで固定されている患部の採型及び当該患部への適合
業務
まずは図で大枠を見ましょう。
本シリーズの「0(前提)」で紹介した厚労省作成の図を簡略化し、いくつかの要素を追加した上で、義肢装具士の業務範囲等を書き込んだ図を作成しました。
- 義肢装具士は、「義肢装具の装着部位の採型」と「義肢装具の製作適合」を業とする者で、①業務独占はありませんが、②診療の補助として専門業務を業とすることができ、そして③その他診療の補助に当たらない業務(保健指導含む)を行うことができます。
①義肢装具士の業務独占:なし
義肢装具士には業務独占の定めはありません。
②義肢装具士による診療の補助
義肢装具士には、「診療の補助」として業とすることが可能と定められている業務(下引用の青太字部(弊事務所追加))があります。
(診療の補助とは本来看護師の業務独占ですが、これら業務のみ言語聴覚士に限定解除されていると理解しています。)
第三十七条 義肢装具士は、保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)第三十一条第一項及び第三十二条の規定にかかわらず、診療の補助として義肢及び装具の装着部位の採型並びに義肢及び装具の身体への適合を行うことを業とすることができる。
義肢装具士法(昭和六十二年法律第六十一号)施行日: 平成二十八年四月一日, https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=362AC0000000061
2 前項の規定は、第八条第一項の規定により義肢装具士の名称の使用の停止を命ぜられている者については、適用しない。
★診療の補助の限定解除の理解
診療の補助に関しては下記のように理解しています。
- 医師法により、医行為を業とすることは医師の業務独占と定める
- ※本シリーズの「(1)医師」ページ参照
- 医行為の一部を「診療の補助」として、保助看法により看護師に限定解除(主治の医師又は歯科医師の指示が必須)
- ※本シリーズの「(5)看護師、准看護師」ページ参照
- その「診療の補助」のうち一部の各専門業務を、各専門資格保持者に限定解除している(根拠は個別法)。
- 義肢装具士の場合は、以下の行為を「診療の補助」として業とすることができる。
- 義肢及び装具の装着部位の採型
- 義肢及び装具の身体への適合を行うこと
- 義肢装具士の場合は、以下の行為を「診療の補助」として業とすることができる。
※「診療の補助」としての業務への医師の関与については、第37条に明記はありません。ですが、そもそも「診療の補助」は看護師に対して主治医の指示を要求していること(保助看法)、加えて、第2条第3項で医師の指示を要求していることから、医師の指示は必要とされると考えるのが妥当かなーと考えています。(義肢装具士の業が診療の補助の業を内包しているだろうという考え。)
③その他の業務
可能な医療関連行為をひとつひとつ挙げていたらきりがありませんが、とりあえず保健師の業務独占と考えられがちな保健指導だけ。
保健指導は、保健師その他の独占業務ではないため、その他職種も行うことができます。
もうちょっと詳しくは、当シリーズの「(3) 保健師」のところを参照。
その他、医療従事者間の具体的な業務分担については、厚労省の役割分担通知を本シリーズの「0(前提)」ページでかるーく紹介していますが、現在進行系でタスクシフト・タスクシェアが進んでますので最新の状況は都度要確認です。
名称独占
義肢装具士法第41条に名称独占の定めがあります。
第四十一条 義肢装具士でない者は、義肢装具士又はこれに紛らわしい名称を使用してはならない。
義肢装具士法(昭和六十二年法律第六十一号)施行日: 平成二十八年四月一日, https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=362AC0000000061
さて、次は「(7)ク.救急救命士EMT」。やっと終わりが見えてきました…。
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