医療資格者の業務範囲を整理してみる (7)エ.臨床検査技師MT

さて今回は、臨床検査技師について。
他の職種ページへの移動は、本シリーズの「0(前提)」ページにリンクを置いてありますのでそちらから。

(7)エ.臨床検査技師MT

身分の根拠法

臨床検査技師は、MT(Medical Technologist)と呼ばれることがあります。
そしてその身分の根拠法は「臨床検査技師等に関する法律」。寡聞にしてこの略称は知らないです。

第二条 この法律で「臨床検査技師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、臨床検査技師の名称を用いて、医師又は歯科医師の指示の下に、人体から排出され、又は採取された検体の検査として厚生労働省令で定めるもの(以下「検体検査」という。)及び厚生労働省令で定める生理学的検査を行うことを業とする者をいう。

臨床検査技師等に関する法律(昭和三十三年法律第七十六号)施行日: 令和三年十月一日, https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=333AC1000000076

この赤太字部(弊事務所追加)が、臨床検査技師の資格職としての業です。

★厚生労働省令で定める検体検査/生理学的検査とは

第2条及び、後でご紹介する第20条の2で言及される「厚生労働省令で定める検体検査/生理学的検査」とは何なのでしょうか。
これは臨床検査技師等に関する法律施行規則に明記されています。

(法第二条の厚生労働省令で定めるもの)
第一条 臨床検査技師等に関する法律(以下「法」という。)第二条の厚生労働省令で定めるものは、次に掲げるものとする。
一 微生物学的検査
二 免疫学的検査
三 血液学的検査
四 病理学的検査
五 生化学的検査
六 尿・糞便等一般検査
七 遺伝子関連・染色体検査
(法第二条の厚生労働省令で定める生理学的検査)
第一条の二 法第二条の厚生労働省令で定める生理学的検査は、次に掲げる検査とする。
一 心電図検査(体表誘導によるものに限る。)
二 心音図検査
三 脳波検査(頭皮誘導によるものに限る。)
四 筋電図検査(針電極による場合の穿せん刺を除く。)
五 運動誘発電位検査
六 体性感覚誘発電位検査
七 基礎代謝検査
八 呼吸機能検査(マウスピース及びノーズクリップ以外の装着器具によるものを除く。)
九 脈波検査
十 熱画像検査
十一 眼振電図検査(冷水若しくは温水、電気又は圧迫による刺激を加えて行うものを除く。)
十二 重心動揺計検査
十三 持続皮下グルコース検査
十四 超音波検査
十五 磁気共鳴画像検査
十六 眼底写真検査(散瞳どう薬を投与して行うものを除く。)
十七 毛細血管抵抗検査
十八 経皮的血液ガス分圧検査
十九 聴力検査(気導により行われる定性的な検査であつて次に掲げる周波数及び聴力レベルによるものを除いたものに限る。)
イ 周波数千ヘルツ及び聴力レベル三十デシベルのもの
ロ 周波数四千ヘルツ及び聴力レベル二十五デシベルのもの
ハ 周波数四千ヘルツ及び聴力レベル三十デシベルのもの
ニ 周波数四千ヘルツ及び聴力レベル四十デシベルのもの
二十 基準嗅覚検査及び静脈性嗅覚検査(静脈に注射する行為を除く。)
二十一 電気味覚検査及びろ紙ディスク法による味覚定量検査
二十二 直腸肛門機能検査

臨床検査技師等に関する法律施行規則(昭和三十三年厚生省令第二十四号). 令和三年厚生労働省令第百十九号による改正. https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=333M50000100024 .(閲覧:2022−08−15)

業務

まずは図で大枠を見ましょう。

本シリーズの「0(前提)」で紹介した厚労省作成の図を簡略化し、いくつかの要素を追加した上で、臨床検査技師の業務範囲等を書き込んだ図を作成しました。

臨床検査技師の業務範囲
  • 臨床検査技師は、検体検査と生理学的検査を業とする者で、①業務独占はありませんが、②診療の補助として専門業務を業とすることができ、そして③その他診療の補助に当たらない業務(保健指導含む)を行うことができます。

①臨床検査技師の業務独占:なし

臨床検査技師には業務独占の定めはありません。

②臨床検査技師による診療の補助

臨床検査技師には、「診療の補助」として業とすることが可能と定められている業務(下引用の赤太字部(弊事務所追加))があります。
(診療の補助とは本来看護師の業務独占ですが、これら業務のみ言語聴覚士に限定解除されていると理解しています。)

第二十条の二 臨床検査技師は、保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)第三十一条第一項及び第三十二条の規定にかかわらず、診療の補助として、次に掲げる行為(第一号、第二号及び第四号に掲げる行為にあつては、医師又は歯科医師の具体的な指示を受けて行うものに限る。)を行うことを業とすることができる。
一 採血を行うこと。
二 検体採取を行うこと。
三 第二条の厚生労働省令で定める生理学的検査を行うこと。
四 前三号に掲げる行為に関連する行為として厚生労働省令で定めるものを行うこと。

2 前項の規定は、第八条第一項の規定により臨床検査技師の名称の使用の停止を命ぜられている者については、適用しない。

臨床検査技師等に関する法律(昭和三十三年法律第七十六号)施行日: 令和三年十月一日, https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=333AC1000000076

ここあたりは下記のように理解しています。

  1. 医師法により、医行為を業とすることは医師の業務独占と定める
    • ※本シリーズの「(1)医師」ページ参照
  2. 医行為の一部を「診療の補助」として、保助看法により看護師に限定解除(主治の医師又は歯科医師の指示が必須)
  3. その「診療の補助」のうち一部の各専門業務を、各専門資格保持者に限定解除している(根拠は個別法)。
    • 臨床検査技師の場合は、以下の行為を「診療の補助」として業とすることができる。
      1. 生理学的検査
      2. 採血、検体採取、厚生労働省令で定める行為(医師又は歯科医師の具体的な指示を受けて行うもの限定)

※「生理学的検査」への医師又は歯科医師の関与については、第20条の2に明記はありません。ですが、そもそも「診療の補助」は看護師に対して主治医の指示を要求していること(保助看法)、加えて、第2条では医師又は歯科医師の指示を要求していることから、医師又は歯科医師の指示は必要とされると考えるのが妥当かなーと考えています。(第2条の業が診療の補助の業を内包しているのではないかという考え。)

③その他の業務

可能な医療関連行為をひとつひとつ挙げていたらきりがありませんが、とりあえず保健師の業務独占と考えられがちな保健指導だけ。

保健指導は、保健師その他の独占業務ではないため、その他職種も行うことができます。
もうちょっと詳しくは、当シリーズの「(3) 保健師」のところを参照。

その他、医療従事者間の具体的な業務分担については、厚労省の役割分担通知を本シリーズの「0(前提)」ページでかるーく紹介していますが、現在進行系でタスクシフト・タスクシェアが進んでますので最新の状況は都度要確認です。

名称独占

臨床検査技師法第20条に名称独占の定めがあります。

(名称の使用制限)

第二十条 臨床検査技師でない者は、臨床検査技師という名称又はこれに紛らわしい名称を使用してはならない。

臨床検査技師等に関する法律施行規則(昭和三十三年厚生省令第二十四号). 令和三年厚生労働省令第百十九号による改正. https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=333M50000100024 .(閲覧:2022−08−15)

以前は類似の「衛生検査技師」という職もありました。
この資格は、平成17年5月2日公布の臨床検査技師、衛生検査技師等に関する法律の一部を改正する法律(平成17年法律第39号)により、平成18年3月をもって取得が廃止となりました。(新規免許交付申請の受付も平成23年3月末で終了。)
ただし、すでに免許を受けている方は、引き続き衛生検査技師として業務を行うことができます。
薬剤師さんはこの資格をお持ちの方も多いですね。

さて、次回は「(7)オ.視能訓練士CO」を紹介してまいります。

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