2026年までのリカバリーウェア規制を語るー「家庭用遠赤外線血行促進用衣」に関して

リカバリーウェア市場が急成長する一方で、実は今、多くの事業者が『法規制の急変』という見えない壁に直面しています。本記事では、2025年末に発生した大規模な自主回収事案の背景にある、行政の『定義の厳格化』を深掘りします。単なる制度解説に留まらず、2026年以降のEC広告基準までを見据えた、実務家視点の包括的分析をお届けします。

リカバリーウェア(家庭用遠赤外線血行促進用衣)の規制強化に関するタイムライン図(2022年〜2026年)。2022年の一般的名称新設、2025年のQ&A改訂と「リライブシャツ」の自主回収事案、2026年の日本ホームヘルス機器協会によるEC広告基準制定の動きを時系列で解説。
2022年の「家庭用遠赤外線血行促進用衣」創設から、2025年の定義厳格化、そして2026年のEC広告基準制定へ。リカバリーウェア市場は「届出さえすれば良い」時代から、実効性のあるコンプライアンスが問われるフェーズへと移行している。

はじめに:リカバリーウェア市場の急成長と規制整備の流れ

日本でのリカバリーウェア市場は、ここ数年で急激な成長を遂げていますよね。アスリートから一般の方まで幅広く認知が広がっているように感じます。

現在販売されているリカバリーウェアをつらつらと見ていくと、核となる技術は「生地に微細な鉱物やセラミックスを練り込んで、人体から放出される熱を遠赤外線として再輻射させることで、血行促進や疲労回復を促す」というもののようです。さてこの「衣類による健康増進」というコンセプト、日本の医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下、薬機法)の境界線上でちょいちょい話題となっていました。(なにせ業界そこそこ長いので、いろんな事業者さんの挑戦は耳目にしてきました。)ですが、ここまで議論が巻き起こったのは、やはり今回のリカバリーウェア騒動が初めてのように思います。

当初、リカバリーウェアは「雑品」としての一般衣類としての販売が行われているのみでした。そのうちに挑戦的な企業さんから既存の医療機器一般的名称である「温熱用パック」として販売されるようになり、その広告の訴求力の強さもあり爆発的に広がりました。しかし、この医療機器「温熱用パック」というのは本来、外部から加熱したパックを患部に当てる器具を想定した枠でして、常時着用する衣類としての実態とは乖離があったんです。それに、一般衣類として販売される製品の方にも問題がありまして…。こちらは一般衣類(雑品)なのに「疲労回復」や「血行促進」といった医療機器的な効能効果を標榜しちゃったら、薬機法における無許可・無承認医療機器の広告制限に火の玉ストレートに抵触しちゃうという、広告上のリスクが常にあったわけです。

このような状況を背景に、厚生労働省は2022年、リカバリーウェアの法的地位を明確化し、消費者が安全かつ適切に製品を選択できる環境を整えるため、新たな一般的名称「家庭用遠赤外線血行促進用衣」を新設しまして、現在は着々と規制整備が進んでいる、という状況ですね。

本記事では、2022年の歴史的転換点から、2025年の運用指針の改訂、さらには2026年に向けた業界の最新動向に至るまで、行政および業界団体による通知や公式見解を基に、リカバリーウェア規制の変遷を整理してお知らせしていこうと思います。

第一章:2022年の制度改革と「家庭用遠赤外線血行促進用衣」の創設

2022(令和4)年10月11日、平成16年7月20日付け薬食発第0720022号の一部が改正され、一般医療機器(クラスI)の一般的名称として「家庭用遠赤外線血行促進用衣」(JMDNコード:71105001)が新たに定義されました。これが、いわゆる「リカバリーウェア」を医療機器としようとする場合に検討すべき規制の一丁目一番地となるわけです。

→【PMDAウェブサイトにあるPDFへのリンク】2022(R04)1011_薬生発1011第7号「厚労大臣指定医療機器(告示)の施行について」等の改正について

1.1 何が変わった?新一般的名称の定義と技術的要件

2022年10月改正によるリカバリーウェア(衣類形状)の定義変更。温熱用パックとの技術的要件の違いを比較した図解。
従来の「温熱用パック」から、衣類専用の一般的名称が独立した背景と定義の差。

さて、まずは参考として、「温熱用パック」の定義を記載しておきます。(太字は弊所の施した加工です)

温熱用パック

【一般的名称定義】
加熱媒体の入ったパックを加熱装置で加熱したものを患部に当て、消炎鎮痛処置(温熱治療)を行うパックをいう。冷却装置で冷却することにより、冷熱を供給する冷却パックを兼ねるものもある。本品は再使用可能である。

続いて、前述の通知による「家庭用遠赤外線血行促進用衣」の定義は以下のようなものです。(太字は弊所の施した加工です)

家庭用遠赤外線血行促進用衣

【一般的名称定義】
遠赤外線の血行促進作用により疲労や筋肉のこり等の症状改善を行うことを目的とした、衣類形状の器具をいう。生地に鉱物等による特殊な加工が施されており、一定程度の遠赤外線を輻射する。上半身用及び下半身用があり、それぞれ少なくとも上腕部および大腿部を被覆する。ただし、パーツ形状は含まないものとする。

2022(R04)1011_薬生発1011第7号「厚労大臣指定医療機器(告示)の施行について」等の改正について

結構違いますよね。(というか、改めて見てみると温熱用パックの定義でいわゆるリカバリーウェアを流通させていたのはかなり無理があるというか…)

「家庭用遠赤外線血行促進用衣」の定義には、従来の「温熱用パック」にはなかった「衣類形状」という要素が組み込まれました。また、加熱装置への言及がなくなり、加工による遠赤外線の輻射が前提となっています。つまり自分で発熱するタイプの能動型の温熱器具とは明確に区別されることとなりました。

項目温熱用パック家庭用遠赤外線血行促進用衣
定義の核心加熱装置による消炎鎮痛遠赤外線の輻射による血行促進
主な形状患部適用型パックシャツ、ズボン等の衣類形状
主な効能消炎鎮痛処置疲労回復、筋肉のこり改善

1.2 温熱用パックからの移行手続き(薬生機審発1214第1号)

新名称の創設に伴い、厚生労働省は2022(令和4)年12月14日付で通知を発出しました。この通知は、既存の届出品目の整理を強く求めるものでした。

→【厚生労働省ウェブサイトにあるデータへのリンク】2022(R04)1214_薬生機審発1214第1号「一般的名称「家庭用遠赤外線血行促進用衣」の新設に伴う既存品目等の取扱いについて」

本通知により、「温熱用パック」として届け出られている医療機器のうち、「家庭用遠赤外線血行促進用衣」の定義に該当するものは、速やかに廃止し、新名称へ移行するか、あるいは医療機器としての届出を取り下げることとなったのです。移行にあたっては、後述する業界団体の「自主基準」を満たすことが必須条件とされ、1年間の猶予期間が設けられました。

この整理によって、衣類形状なのに「パック」と称する、というような不自然な分類が解消されることとなりました。事業者さんにとっては大変なことでしたが、遠からず整理されることは界隈では多くの人が心のなかで予見していたことなので(けっこう皆さん「温熱パックは無茶だよね…」と思ってらしたし語ってました)、この整理は「通知待ち」みたいな状態でもありましたね。私自身、ご相談に来られた方にそう説明差し上げてましたし。

第二章:一般衣類(雑品)と医療機器の境界線

さて、事業者さんにとってリカバリーウェア規制で一番気になるのは、「広告でどこまで訴求できるのか」と言うところでしょう。一般医療機器としての届出を行っている製品と、そうでない一般衣類との間には当然「標榜の境界線」があります。

これについても、厚生労働省は通知にて示しました。

→【厚生労働省ウェブサイトにあるデータへのリンク】2022(R04)1214_薬生監麻発1214第1号「遠赤外線を輻射する衣類等の取扱いについて」

2.1 「血行促進」標榜の緩和と制限

本通知では、まず、「血行促進」を標榜することが医療機器でなくても可能とする規制緩和が示されてます。

着用した使用者自身の体温により(衣類等からの遠赤外線の輻射によるものを含む。)血行を促進する使用目的又は効果を有する衣類等(能動型のもの、電動式のもの又は身体への侵襲性があるものは除く。)は、血行促進といった標ぼうのみをもって医療機器に該当するとは判断しない。

2022(R04)1214_薬生監麻発1214第1号「遠赤外線を輻射する衣類等の取扱いについて」

ただ当然、血行促進という言葉を超えて、より具体的な身体への変化や改善を謳う場合は、依然として「家庭用遠赤外線血行促進用衣」としての医療機器届出が必要となります。次項に続きます。

2.2 医療機器届出が必要となる標榜例

通知および関連する質疑応答(Q&A)では、「家庭用遠赤外線血行促進用衣」で標榜できる範囲の限界も示されています。

→【厚生労働省ウェブサイトにあるデータへのリンク】2025(R07)0310_事務連絡「一般医療機器「家庭用遠赤外線血行促進用衣」の取扱いに係る質疑応答集(Q&A)について」

具体的には、

一般医療機器(クラスⅠ)とは、人体への影響がごく軽微であるものを対象とする分類であるため、その使用目的や効果においても、使用者への影響はごく限定されたものであることが前提となる。

A2, 2025(R07)0310_事務連絡「一般医療機器「家庭用遠赤外線血行促進用衣」の取扱いに係る質疑応答集(Q&A)について」

ことから、血行促進用衣として認められる「使用目的又は効果」の範囲は、

「血行促進」「筋肉のこり改善」「疲労の回復、改善」「筋肉の疲れを軽減」等

A1, 2025(R07)0310_事務連絡「一般医療機器「家庭用遠赤外線血行促進用衣」の取扱いに係る質疑応答集(Q&A)について」

に制限される旨が示されています。

そして続いて

遠赤外線の技術を利用した衣類等について、「筋肉痛、腰痛、生理痛、神経痛、関節炎等の症状改善や消炎効果」「むくみの改善」「代謝の促進」「運動効率の向上」「冷え性の改善」等の効果を標ぼうして製造販売したい場合

A3, 2025(R07)0310_事務連絡「一般医療機器「家庭用遠赤外線血行促進用衣」の取扱いに係る質疑応答集(Q&A)について」

には、新医療機器としての承認を前提に、臨床試験データ集めて相談してね、と明示しています。

2.3 まとめ(エビデンスがあれば、何でも広告可能?)

リカバリーウェアで標榜可能な「血行促進」「疲労回復」等の表現と、薬機法違反となる「安眠」「冷え性改善」等の逸脱表現の境界線。
根拠資料(エビデンス)があっても、一般医療機器の枠組みを超える「疾患の治療・予防」を連想させる表現は認められない。

第三章:業界団体による「自主基準」の技術的詳細

行政の通知を実務レベルで補完するのが、業界団体の自主基準です。

この製品の場合、一般社団法人日本医療機器工業会および一般社団法人日本ホームヘルス機器協会等が策定した「家庭用遠赤外線血行促進用衣自主基準」が出されています。この基準は、厚生労働省でも「適当であると判断」され、「家庭用遠赤外線血行促進用衣の製造販売届出を行う際には本自主基準を参考とするよう」指導されているものです。

→【厚生労働省ウェブサイトにあるデータへのリンク】2022(R04)1014_事務連絡「一般社団法人日本医療機器工業会の作成した「家庭用遠赤外線血行促進用衣自主基準」について」

この自主基準での要求事項を、ちょっと覗いてみましょう。

3.1 赤外線放射特性の測定(物理的エビデンス)

製品が医療機器として認められるためには、まず物理的に「一定程度の遠赤外線を輻射する」ことを証明しなければなりません。本自主基準では、ISO 19618:2017を準用し、FTIRスペクトロメータ(フーリエ変換赤外分光光度計)を用いた測定が示されています。

具体的には、測定面を肌に接する面として、波長5〜20μmの波長領域において、遠赤外線加工を施した製品の全放射率が、未加工の対照試料に比べて「5%以上」上回ることが求められています。赤外線放射特性の測定に波長5〜20μmという領域が採用され、かつ未加工品比「5%以上」の向上が求められている理由については、行政の検討過程や技術的背景から以下の通り説明されています。

①波長領域として波長5〜20μmが採用されている理由

  • 既存規格(JIS T 2001)との親和性: 基準策定にあたり2つの基準・規格を参考としたとされています。そしてそのいずれも、波長域設定の明確な根拠は示されていないようで、担当チームの落胆が目に浮かびます。
    • 「家庭用赤外線治療器」の認証基準(JIS T 2001):このJIS規格では、家庭用赤外線治療器の分光放射率の測定範囲として5000~13000nm(=5-13 μm)が定められています。
    • 「社団法人遠赤外線協会の赤外線加工の認定制度における基準」:これによると、波長域は4~20μmと定められています。
  • 物理的・技術的な妥当性:
    • 下限(5 μm): 繊維への赤外線加工(鉱物練り込み等)による分光放射スペクトルへの影響は、5 μm 未満の領域では極めてわずかであることから、効果を測定する境界として 5 μm が設定されました。ただし、技術的に 4 μm を含むデータであっても、結果に大きな差が出ないため許容される運用となっています。
    • 上限(20 μm): 現在の科学技術では波長ごとの影響について細かい検証は不可能であるため、既存の研究範囲や業界の実績に照らして、最も現実的な境界線として20μmを採用した、と私は解しました。m常温域の赤外線は可視光のように特定の波長を切り出してその影響を検証することが難しく、人体に降り注ぐ量を波長ごとに定量することも原理的に困難であること、そして、生体への影響に関する研究の多くが概ね 3-30μm の範囲で行われていることや、参考にされた既存のJIS規格(13μm)および繊維業界の基準(上限 20μm)を踏まえ、「現時点で範囲を絞り込む根拠がない」として 20μmが採用されたようです。

②「5%以上」の向上が求められている理由

ある文献*での評価方法に「5%以上上回ること」と「10%以上上回ること」とされており、この設定基準の根拠は示されていなかった。しかし、各社にヒアリング調査を行った結果、5%が妥当だとして採用されたようです。

なお、この「5%以上」という数値は、物理的な放射率だけでなく、生理的な「血流増加率(120分着用時)」の基準値としても同様に採用されており、こんがらがらなくていいですねいいですね!

3.2 血行改善性能の臨床評価(生理的エビデンス)

物理的な放射特性は3.1で検証しました。なので次は、実際に人体において血流が増加することを証明する番です。自主基準の「附属書1」には、以下のようにプロトコルが定められています。

  • 安静維持: 被験者は試験開始前に15分以上、安静な状態を維持する。
  • 測定機器: クラスIIに該当する医家向け医療機器(レーザードップラー血流計等)を使用し、医師または医師の指示を受けた専門家が評価を行う。
  • 測定時間: 原則として120分間の推移を測定するが、製品の特性により短縮も可能である。
  • 評価項目: 血流量のほか、舌下温、皮膚温、血圧なども記録し、多角的に温熱効果を評価する 。未加工品に対する加工品の血流量を対比し、その差が5%以上である場合には、遠赤外線の効果による十分な血流量の増加があったものと判定する。

3.3 生物学的安全性と原材料管理

衣類は長時間肌に接触するため、安全性の確保も極めて重要です。というわけで自主基準では、以下の事項が求められています。

  • 化学的要求事項: 鉱物や金属を使用する場合、RoHS指令に準拠し、重金属汚染がないことを証明する。
  • 生物学的安全性: ISO 10993(JIS T 0993)に基づき、細胞毒性、皮膚刺激性、感作性の評価を行う。
  • 原材料特定: 機能を付与するために添加された鉱物粉体等の一般名および配合比を、製造販売届出書に明記しなければならない。

第四章:2025年8月の明確化―Q&A改訂と「全体輻射」の要求

2025年8月18日、厚生労働省は「家庭用遠赤外線血行促進用衣」に関するQ&Aを改訂しました。

→【厚生労働省ウェブサイトにあるデータへのリンク】2025(R07)0818_事務連絡「一般医療機器「家庭用遠赤外線血行促進用衣」の取扱いに係る質疑応答集(Q&A)の一部改訂について」

4.1 形状制限の明確化と「上腕部・大腿部」の被覆

2025年8月のQ&A改訂に基づく、家庭用遠赤外線血行促進用衣の適正な被覆範囲(上腕・大腿部のカバー必須)のOK/NG事例。
2025年の規制厳格化により、タンクトップやサポーター形状は「衣類」としての全体性が否定される傾向にある。

本改定では遠赤外線機能を付与する範囲の明確化がなされ、「家庭用遠赤外線血行促進用衣」として届け出ることができるのは、原則として「長袖シャツ」「長ズボン」「半袖シャツ」「半ズボン」の4種類に限定されることが明示されました(A5,A6)。

さらに、単に形状が合致していれば良いわけではなく、被覆範囲についても示されています。曰く…

  • 上半身用: 少なくとも「上腕部」を被覆すること。
  • 下半身用: 少なくとも「大腿部」を被覆すること。

つまり、以下はダメってことですね。

  • 衣類の一部分にのみ遠赤外線機能を付与した製品。
  • 輻射機能を持つプリント、シール、ワッペンを部分的に施した製品。
  • 裏地の一部のみに加工を施した製品。

というわけで、この規定により、タンクトップやショートパンツのような形状、あるいはサポーター、レッグウォーマーといった「パーツ形状」の製品は、この一般的名称での届出対象から完全に除外されたわけです。

4.2 製造販売届出書の記載の是正

既に届出を済ませている事業者に対しても、自主点検と是正のための措置が求められています(Q11)。

つまり、製造販売届出書の「形状、構造及び原理」欄において、当該製品が「長袖シャツ」等であることを明確に記載しなければならず、実態と異なる届出を行っている場合は速やかに修正(または廃止)する必要があるというわけです。

後追いで規制ができるがゆえの、先行事業者にかかる負担を考えると苦しいものがありますが、医療機器規制としてはやむを得ないんでしょうねぇ。(とはいえ、温熱用パックから一般的名称が新設された流れで「衣類なのにパックはおかしいだろう」というところもあったので、「『一部分だけ医療機器の機能を有する』衣類」全体が医療機器として取り扱うことが妥当かを考えると、「こうなることは予見可能性はゼロだった」とは言いづらいところはあるかなーとも思ったりはします。)

第五章:リライブシャツ自主回収事案に見る規制の影響

2025年の規制強化は、実際に大規模な製品回収を引き起こしています。その象徴的な事例として、株式会社りらいぶさんによる「リライブシャツα」および「リライブスパッツα」の自主回収を紹介します。

医療機器回収の概要(クラスⅢ)一般的名称: 家庭用遠赤外線血行促進用衣、販売名: (1)リライブシャツα (2)リライブスパッツα
※本記事は令和 7年11月 4日作成の情報を参照し作成しました。

5.1 回収の経緯と理由

株式会社りらいぶ(以下りらいぶ社)さんは2025年11月に自主回収を発表してらっしゃいます。

  • 回収理由:2025年8月改訂Q&Aによって示された改訂定義に該当しないことを認識したこと。
  • 回収数量:2024年9月24日出荷分からの、2製品の合算469,018着(リライブシャツα 355,026着、リライブスパッツα 113,992着)

これら製品は、生地の特定のプリント加工部位に遠赤外線輻射機能を持たせる設計を採用していたようです。これはかねての運用下では医療機器として受理されていましたが、2025年8月改訂Q&Aで示された改定定義には該当しないんですよね…。りらいぶ社さんは「健康被害の報告はない」としつつも、法令遵守の観点から自ら回収を決断されたとのことで、頭が下がります。

5.2 訴求しての回収

また本事案では、回収対象はQ&A改定通知の発出より前の出荷分にまで遡っています。Q&A改定通知発出後の出荷からでもいいような気がしますよね。でもこれはおそらく、2025年8月のQ&A改訂が「新しいルールを作った」のではなく、「2022年の創設当初からある定義の解釈を、行政が公式に厳格化した」という性質を持っているが故によるものかと考えます。

理由として以下を思いつきました。

  • 定義への根本的な不適合: リライブシャツαのような「特定のプリント部分のみに機能を持たせる」設計は、改訂後の見解において、医療機器一般的名称「家庭用遠赤外線血行促進用衣」の定義をそもそも満たしていないと明確にされました 。つまり、通知発出後の出荷分だけでなく、過去に販売された製品も「本来の定義に合致しない状態で医療機器として流通していた」ことになります。
  • 行政による自主点検の要請: 厚生労働省は2025年の改訂に際し、既に届出済みの製品についても定義から逸脱していないか「自主点検」を行い、不備があれば速やかに是正(修正または廃止)するよう事業者に強く求めていました。
  • 薬機法上の法的リスク回避: 「医療機器」として届け出ている以上、その実態が定義や届出内容と異なれば、形式的に薬機法違反(不適正な届出や虚偽表示)とみなされるリスクが生じます。同社は「安全性に問題はない」としつつも、法令遵守の観点から「定義に合致しない製品」を市場に残さないための経営判断として、過去の出荷分(2024年2月以降)を含めた大規模な自主回収に踏み切られたのでしょう。
  • 誠実な対応によるブランド保護: りらいぶ社さんは「定義の認識に不足があった」と公式に認め、過去分の遡及回収を行うことで、医療機器メーカーとしての信頼性と誠実さを担保しようとされたのかもしれません。少なくとも私の中で同社の株は爆上がりしてます。

ともあれ、Q&Aの改訂は「今後のルール」を決めただけでなく、既存製品の「答え合わせ」の結果を突きつけた形となったわけです。あらためて、怖っ!!

回収事案の概要詳細根拠・背景
対象製品リライブシャツα / リライブスパッツα一般医療機器(クラスI)
回収規模約48万着2024年2月以降の販売分
主な理由プリント部位のみの機能付与2025年8月改訂Q&Aへの不適合
企業の対応自主回収、返金またはクーポン提供誠実な対応としての社会的評価
行政の姿勢定義の厳格な適用と自主点検の要請薬機法に基づく監視指導の強化

5.3 業界への波及効果と教訓

この事案は、医療機器ビジネスにおける「一般的名称の定義」の重みを再認識させますね。

医療機器は「規制産業」であり、一度届出が受理されたからといって、その後のルール変更から免れるわけではありません。特に一般医療機器(クラスⅠ)製品というのは、要求されている手続きは「届出」であり、第三者機関による認証や厚生労働省大臣による承認がなされるわけではないわけで。個人的にはここに一般医療機器(クラスⅠ)製品特有の怖さがあると思っています。

本件を機に、他のメーカー各社も自社製品の再点検を加速させたことを祈ります。特にプリント手法で機能を付与しているメーカーさんは、繊維全体に鉱物を練り込む方式への転換や、一般医療機器としての届出を取り下げて「一般衣類(雑品)」として販売継続する道を選択するなど、戦略の再構築を迫られています。

こうした突発的な規制変更や定義の厳格化に際し、自社製品が適合しているかを即座に判断できる体制は整っていますか?一般医療機器の製造販売業者には、法遵守を監督する『三役』の設置が義務付けられています。最新の人的要件については、[一般医療機器の三役要件解説記事]をご確認ください。

【医療機器ポイント解説】誰がなる?どんな役割?医療機器の「三役(五役)」を徹底解説

医療機器の三役(総括、国内品責、安責)と管理監督者・管理責任者の要件を整理。薬機法・QMS省令に基づく各役職の役割、資格、兼任ルールを根拠条文を交え行政書士が解説…

第六章:広告表現の適正化と景品表示法・薬機法の交差点

医療機器としての届出を維持している製品であっても、その広告表示については厳格なルールが適用されます。ここではその一端をご紹介。

6.1 承認・届出範囲内の標榜

「家庭用遠赤外線血行促進用衣」が標榜できる範囲は、あくまで「遠赤外線の血行促進作用による、疲労や筋肉のこり等の改善」という範囲に限定されます(本稿第2章をご参照ください)。

  • 許可される表現: 「血行促進」「筋肉のこりをほぐす」「疲労回復」「筋肉の疲れをとる」
  • 逸脱とされる表現: 「冷え性の改善」「むくみの軽減」「消炎効果」「安眠効果」 他

たとえ実際の試験で「睡眠の質の向上」や「痛みの軽減」といったデータが得られていたとしても、クラスI医療機器である以上、その枠を超えた標榜は「誇大広告」と見なされるでしょう。

6.2 消費者庁による景品表示法の監視

薬機法だけでなく、消費者庁による景品表示法(優良誤認)の監視も年々強化されています。景品表示法第5条第1項に基づき、商品の品質が実際よりも著しく優良であると誤認させる表示(優良誤認)は禁じられています。

景品表示法では特に「合理的根拠」を提示できるようにしていることが重要です。消費者庁は、広告の根拠となる試験データが、実際の使用状況(例えば24時間着用するのか、短時間なのか)と合致しているかをよく見ているようなのでその点も要注意。リカバリーウェアのエビデンスとして、自主基準に基づく赤外線放射特性や血流量変化のデータが適切に整備されていることは、薬機法上も景品表示法上のリスク回避のためにも不可欠です。

6.3 打ち消し表示と体験談の制限

業界自主基準のひとつである医療機器適正広告ガイド(2024年2月改定)によると、「着るだけで〜」や「魔法のような効果」といった安易な強調表現は、医療機器としての品位を損なうものとして制限されています。また、個人の感想を用いた体験談は、それが「効能効果を保証するものではない」との注釈(打ち消し表示)があったとしても、消費者に誤解を与える場合は不適切と判断されますので、ここらも抑えておきましょう。

リカバリーウェアにおいて『血行促進』は言えても『不眠改善』が言えないように、ヘルスケア商材には常に表現の壁が存在します。SNSやECサイトで法を遵守しつつ、最大限の訴求を行うための基礎知識は[こちらの広告コンプライアンス解説]にまとめています。

【医療機器ポイント解説】医療機器の広告ルールと事例紹介

医療機器の広告、その表現は薬機法違反かも?行政書士が誇大広告の禁止、具体的なNG事例、課徴金制度まで解説。広告担当者、薬事担当者の方に。

第七章:2026年に向けた展望と業界団体の動向

リカバリーウェア規制は2026年以降どうなっていくでしょうかね。近い未来を考えると、個人的には、法リテラシーの浅い新規参入企業が「場を荒らす」ことへの対策として自主基準が整えられてゆき、規制が降りてきたことによるこのカオスは落ち着いていくのではないかなと思っています。

7.1 EC広告基準の制定と流通指針

報道※2によると、2026年1月、日本ホームヘルス機器協会は賀詞交歓会で、2025年に「リカバリーウエア(家庭用遠赤外線血行促進用衣類)」の専門部会を立ち上げたこと、そして「ECにおける広告基準の制定」に着手していることを明らかにしたとされています。

※2:日本流通産業新聞オンライン,2026.01.26,「日本ホームヘルス機器協会、 リカバリーウエアの基準整備 EC対応強化も賀詞交歓会で報告」, https://online.bci.co.jp/article/detail/4503, 2026/02/24閲覧 及び日本ネット経済新聞, 2026.01.15, 「日本ホームヘルス機器協会、リカバリーウエアの規準整備 EC対応強化も賀詞交歓会で報告」, https://netkeizai.com/articles/detail/17088, 2026/02/24閲覧

デジタル時代に即した新たな流通指針としては、以下の事項がポイントとなってくるでしょうね。

  • 届出番号の明示義務: 全てのECサイト上で医療機器届出番号を容易に確認できるようにする。
  • ヘルスリテラシーの向上: 消費者に対し、医療機器と一般衣類の違いを正しく啓発する。
  • 海外製品への対応: 日本の薬機法を遵守していない海外製リカバリーウェアの流入に対する監視体制の構築。

7.2 洗濯による機能低下への対応

リカバーリーウェア界隈で新たな課題として浮上しているのが、洗濯による性能の維持です。「リカバリーウェアを洗濯すると機能が低下する恐れがある」との指摘も起きているようです。

ですので今後の自主基準の改訂においては、以下のような性能担保が議論される可能性ありかもしれません。

  • 耐用期間の明示: 洗剤や漂白剤の影響を考慮した、一定回数の洗濯後の放射特性の維持証明。
  • メンテナンスガイドライン: 柔軟剤の使用制限など、機能を維持するための適切な洗濯方法の消費者への周知。

7.3 技術革新と規制の共進化

繊維技術の進化により、従来の鉱物練り込み型だけでなく、新たなアプローチによるリカバリーウェアも登場しています。例えば、特定の波長の光のみを透過・反射させる光学繊維や、ナノテクノロジーを用いた素材などについては、私レベルでも耳に入って来ています。行政は「リカバリーウェアという言葉の中には、医療機器に該当しないものも含まれている」との立場を崩していませんので(そりゃそうだ)、今後も新たな技術が登場するたびに、その該当性が厳しく問われることになるでしょう。

結論

近年のリカバリーウェア規制の変遷を辿ると、そこには「市場の育成」と「消費者の保護」そして「医療機器の品質、有効性及び安全性の確保」という三つの目的の間での、綱引きが見て取れますね。

2022年の「家庭用遠赤外線血行促進用衣」の新設は、曖昧だった機能性衣類の法的地位に一つの解答を与えた。しかし、その後の運用の中で、安易なプリント加工や不十分な被覆範囲の製品が氾濫したことを受け、2025年のQ&A改訂へと至った。りらいぶ社の自主回収事案は、この規制の「実効性」を市場に知らしめる決定的な出来事となった。

今後の製造販売業者に求められるのは、単なる「届出の受理」をゴールとする姿勢ではなく、医療機器メーカーとしての倫理観に基づいた品質管理、有効性担保そして安全性確保です。基本に立ち戻るわけです。行政による監視指導は、今後さらにECやSNSなどのデジタル空間へと拡大していくことが予想されます。各事業者さんにおいては、基準をしっかりと理解し、科学的根拠に基づいた真摯な製品開発と広告標榜を行うことが、持続可能な市場形成につながり、ひいては自社の成長となると心に留めて事業を推進していただきたいと思います。

2026年、リカバリーウェア市場は『届出の受理』がゴールだった時代から、継続的な『リーガルチェック』が必須の時代へと変わりました。自社製品の定義適合性や、LPの広告監修に不安がある方は、当事務所の[ヘルスケア法務サポート]をご活用ください。行政書士が実務に即したアドバイスを提供します。

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