2026年改正行政書士法がもたらす、「代書」から「伴走者」へのさらなる転換

1. はじめに:2026年、行政書士制度は新たなステージへ

令和8年(2026年)1月1日、行政書士法の一部を改正する法律(令和7年法律第65号)が施行されました。この法改正により、行政書士の役割は以下の4つの軸で「転換」されます。

  • 「使命及び職責」の明文化:単なる事務代行ではなく、行政手続きの円滑化と国民の権利利益の実現に寄与することが法的に定義されました
  • 「救済」の劇的な拡大:特定行政書士が代理できる不服申立ての範囲が、自ら作成した書類に限定されず、事業者の「本人申請」が失敗した場合のリリーフ(救済)まで可能になりました
  • 無資格コンサルへの厳しい姿勢:無資格コンサルタントによる脱法行為ついてより明確に封じ込めを行いました。
  • デジタル社会の信頼保証:紙の書類だけでなく「電磁的記録(デジタルデータ)」の適正性を保証する役割が明確化されました

特に薬機法や医療法など、複雑な規制が絡み合うヘルスケアビジネスにおいて、この法改正は「誰をパートナーに選ぶべきか」という経営判断に直結する大きな変化をもたらします。本稿では、総務省の通知(総行行第283号)に基づき、その核心を解説します。

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こうした法改正を踏まえ、実際にどのような基準でパートナーを選ぶべきかは、こちらの記事にまとめています。

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2. 信頼の法的根拠:行政書士の「使命及び職責」の新設

今回の改正の象徴とも言えるのが、法律の冒頭に「使命及び職責」に関する規定が新設された点です。

  • 社会的使命の明文化:行政書士は、行政に関する手続きの円滑な実施に寄与し、国民の利便を図ることが職責として明記されました。
  • ヘルスケア領域での意義:命や健康に関わるデータに関わるヘルスケア分野において、単なる事務代行ではなく「高い倫理観と社会的責任を持つ公的資格者」であるという法的裏付けは、企業がガバナンスを構築する上での強力な武器となります。
  • 誠実義務の徹底:国民の権利利益の実現に資するという使命を負うことで、クライアントだけでなく、行政当局に対しても透明性の高い、信頼される伴走者としての地位が確立されます。
改正行政書士法の概念図。中央に行政書士徽章(コスモス)を配置し、「使命・職責」の新設を強調。左側に「国民・事業者の権利利益の実現」、右側に「行政当局の手続きの円滑な実施」を配置し、行政書士が官民の架け橋となり、行政運営を支えるパートナーであることを示している。
【第1条の2 新設】単なる「代書」から、国民の権利と行政の適正運営を支える「公共的専門職」へ。法律上の定義が明確化されました。

3. 「不服申立て」の範囲拡大:本人申請のトラブルも救済可能に

実務上、最もインパクトが大きいのは、特定行政書士(法定の研修を修了した行政書士)が、行政庁の不当な処分に対して異議を唱える「救済」の範囲が拡大された点です。

  • 「作成した」から「作成できる」への大転換:
    • 旧法:行政書士自らが作成・提出した書類に係る処分についてのみ、不服申立ての代理が可能でした。
    • 新法:行政書士が「作成することができる」官公署提出書類であれば、たとえ事業者が自ら行った申請(本人申請)であっても、他の行政書士が行った申請であっても、特定行政書士が代理人として参戦できるようになりました。
  • ヘルスケア実務へのインパクト:
    • 自社で申請を試みた結果、不当な「不許可処分」や「改善命令」を受けた際、後から特定行政書士を「リリーフ(救済代理人)」として依頼し、審査請求などの法的な対抗措置を講じることが可能になりました。
    • これにより、許認可の入口(申請)から出口(不服申立て)まで、行政手続きのスペシャリストが一貫して事業者の権利を守る体制が整いました。
不服申立て(審査請求)代理権のBefore/After比較図。改正前は「行政書士が作成した書類」のみが対象だったが、改正後は「作成し得る書類」であれば、事業者自身の本人申請(セルフ申請)が不許可になった場合でも、特定行政書士が代理人として救済(リリーフ)参戦できるようになったことを示すフローチャート。
【救済の劇的拡大】これまでは手が出せなかった「自社申請での失敗」も、特定行政書士ならリカバリー(不服申立て)が可能になります。

4. 業務制限規定(第19条)の明確化:無資格コンサルへの厳格な対処

ヘルスケア業界で散見される「無資格のコンサルタント」による書類作成の代行について、法改正は極めて厳しい姿勢を示しています。

  • 「いかなる名目であっても」の追記:改正法第19条第1項には、「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という文言が追加されました。
  • 脱法行為の封じ込め:これは、「手数料」や「コンサルタント料」といった名目であっても、無資格者が対価を得て官公署への提出書類を作成することは違法であるという現行法の解釈を条文に明示したものです。
  • 企業のガバナンスリスク:改正法により違法性がより鮮明になったことで、無資格者への依頼は「不正な関与」として行政から追及されるリスクが高まります。加えて無資格アドバイザーは法的責任(守秘義務や刑事罰)を負わない身軽な立場でもあるので、そういったところへの依存は、経営上の致命的な欠陥となり得ます。
「適法な資格者」と「リスクのある無資格コンサル」の決定的な違いを、法的な「盾」の有無で表現 左側:行政書士(適法) 特徴: 堂々とした盾を持っている。 盾の内容: 「守秘義務(一生涯・刑事罰対象)」「使命規定」「賠償責任の裏付け」 。 守秘義務(一生涯・刑事罰対象)、使命規定、賠償責任の裏付け 安心・安全の法的保護 右側:無資格コンサル(違法・潜脱) 特徴: 「コンサル料」という看板を掲げているが、足元が不安定で盾を持っていない。 吹き出し: 「名目を変えても逃げられません」という警告マーク。「たとえ「コンサル料」でも違法」という注意マーク 無資格者による潜脱行為への厳格排除 中央(改正の核心): 両者を断絶する壁を中央に配置し、「いかなる名目によるかを問わず」というキーワード。

5. デジタル社会への完全対応:電磁的記録の作成

医療DXが進む中、デジタルデータの適正な取り扱いについても明文化されました。

  • 電磁的記録の包含:行政書士の業務範囲に、従来の紙の書類だけでなく、電磁的記録(デジタルデータ)の作成も含まれることが改めて明確化されました。
  • データの適正性の保証:電子申請が標準となるヘルスケア分野において、単にデータを作るだけでなく、そのデータの適法性と正確性を「行政手続きの専門家」として保証する役割が期待されています。

6. まとめ:2026年、行政書士を「戦略的パートナー」に選ぶ理由

今回の法改正は、行政書士を「書類を揃える人」から、事業者の権利を不当な行政処分から守り、デジタル社会の信頼を支える「救済の担い手」へと進化させます。

複雑怪奇に絡み合うヘルスケア分野の法規制を、事業の「壁」にするのか、それとも競合を引き離す「強固な参入障壁」に変えるのか。それは、2026年を見据え、改正法の趣旨を理解し、救済までを一貫して任せられる行政書士をパートナーに選べるかどうかにかかっています。

参考文献・資料

  • 令和7年6月13日日本行政書士会連合会会長談話「行政書士法の一部を改正する法律の成立を受けて」
  • 行政書士法の一部を改正する法律(令和7年法律第65号)
  • 令和7年6月20日総行行第283号「行政書士法の一部を改正する法律の公布に伴う留意事項について」

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