ヘルスケア法務の伴走者選び|無資格コンサルと「実務を知る士業」の決定的な境界線
行政書士の大串です。
ヘルスケアビジネスの法規制は、迷宮のように複雑です. 薬機法、景表法、食品表示法、さらには医療DXに伴う新たな指針……。これらの法規制を一朝一夕に理解し、実務に落とし込むことは、多忙な経営者にとって至難の業と言えるでしょう。
しかし、そこで手近な「コンサルタント」や専門外の士業に安易に頼ってしまうことは、2026年以降ではさらに高いリスクの行為となったと私は考えています。パートナー選びの失敗は、単なる費用の無駄遣いにとどまらず、措置命令による事業停止や、補助金のリコール、ひいては経営者自身の社会的信用の喪失に直結するからです。
本稿では、法的根拠と実務のリアルの両面から、「最適な法務の伴走者の選び方」を考えて見ようと思います。
【法的整理】無資格コンサル・弁護士・行政書士の違い
まず整理しておかなければならないのは、それぞれの「法的責任」と「職能」の境界線です。

1. 無資格コンサルのリスク
「薬機法に強い」と自称する無資格のコンサルタントは少なくありません。しかし、より正確な表現をするならば、報酬を得て官公署に提出する書類(許認可申請書等)を作成することを業とできるのは、行政書士法および弁護士法に基づき、行政書士と弁護士の二つの国家資格者に限られます[1]。
2026年1月施行の行政書士法改正では、たとえ「コンサルタント料」という名目であっても手続きを代行していれば違法であることがより明確化されました[2]。つまり脱法行為許さないモードが強まっております。依頼側へのリスク波及(過去に依頼した無資格者による手続きが不正とみなされて、それが波及して…)も怖いところですよね。

行政書士法の改正法の条文レベルでの詳細な変更点については、近日中に公開予定の別記事で詳しく解説します。
また、無資格コンサルタントには行政書士や弁護士のような法的な「守秘義務」の法的担保[3]がない点も、機密情報の多いヘルスケア分野では致命的な欠陥といえます。
行政書士や弁護士の守秘義務は「資格返上後も一生涯続く、法律で強制される義務で、刑事罰対象」なのに対し、無資格コンサルタントの守秘義務は「契約次第のもの、刑事罰の対象外」なのです。
行政書士・弁護士・無資格コンサルの守秘義務比較
| 比較項目 | 行政書士 | 弁護士 | 無資格コンサルタント |
|---|---|---|---|
| 法的根拠 | 行政書士法 第12条 | 弁護士法 第23条 | 民法(契約自由の原則) |
| 義務の性質 | 法律で強制される義務 | 法律で強制される義務 | 契約に基づく任意合意 |
| 刑事罰 | 対象(懲役または罰金) | 対象(懲役または罰金) | 対象外 |
| 有効期間 | 資格返上後も一生涯 | 資格返上後も一生涯 | 契約次第 |
| 主な役割 | 予防法務・行政手続き | 紛争解決・法務の最終守護神 | 助言(法的責任なし) |
2. 弁護士と行政書士の役割分担:それぞれの専門性をいかす
前項でお話した通り、行政書士法及び弁護士法の規定により、弁護士は行政書士の業務を行う資格を有しています[1]。御存知のとおり弁護士は、訴訟や高度な法的紛争の解決において、比類なき専門性を発揮する「法務の最終守護神」です。
一方で、ビジネスにおいて最も重要な法律の使い方を考えてみたとき、紛争の解決はとても大事ですが、多くの事業者にとってはそのような紛争状態に陥らないための「予防法務」ではないでしょうか。この「予防法務」って、実は行政書士の本分でもあるんです。
行政実務の現場に特化した行政書士は、単に書類を整えるだけでなく、行政当局との緊密な対話を通じて、紛争により事業を停滞させないガバナンス体制を主導します。そして法定の研修を修了した「特定行政書士」であれば、万が一提出した書類について行政庁と見解の相違が生じ、不当な不許可処分等が下された場合でも、行政庁に対する不服申立て(審査請求等)の代理人として、事業者の権利を守るための法的な対応が可能です[4]。許認可に端を発する一連の行政手続きにおいては、現場実務と救済手続きの両面を熟知した行政書士が入口から出口まで伴走することで、必要十分な対応が可能といえるでしょう。
「許可取得」はスタートに過ぎない:維持・更新の重要性
ヘルスケア分野をはじめとする許可を必要とするビジネスにおいて、許可証を受領した瞬間は、ゴールのテープを切ったのではなく、マラソンのスタート地点に立ったに過ぎません。
実務の現場で求められる「ライフサイクル管理」
力量のある専門家が必要とされるのは、以下のような維持管理の実務が事業の継続を左右するからです。これらを怠ることは、重大な経営リスクに直結します。
- 数年おきの更新: 許可期限の管理を誤れば、即座に「無許可営業」となり、販売停止・業務停止を招きます。
- 変更届の義務: 役員の交代、事務所の移転、構造設備の微細な変更など、その都度適切な届出が必要です。
- GMP・QMS・GQP・GVP体制の維持: 製造業者、製造販売業者やメーカーに求められる、製造管理・品質管理(GMP/QMS/GQP)や安全管理(GVP)の体制は、一度作れば終わりではありません。法改正や通知、さらには最新の各種規格(JIS, IEC, ISO等)のアップデートに合わせて常に手順書を更新し、実態が伴っている「証跡」を残し続ける必要があります。
- 広告表現規制の継続的把握: 2026年のAI監視網の強化(ネットパトロールの仕組み参照)により、従来の言い換え表現が通用しなくなるケースが増えています。行政の最新の執行トレンドを常に把握し、表現をブラッシュアップする体制が不可欠です。
行政書士の強み:実務の連続性を理解した設計
行政書士の多くはそれぞれ得意分野を持っています。そしてしっかりと力量のある行政書士ならば、その分野において実務の連続性を理解し、鮮度ある法令や規制等の知識を保持しているものです。
力量のある行政書士は、単なる会社設立や業許可取得といった単発手続きにとどまらず、「将来の更新や各種規格への適応を見据えた、適切な目的・資産要件を備えた会社を作る」といった、いわば「出口(維持)」から逆算した入口の設計も可能だったりします。信頼できる専門家を運よく見つけたら、単発手続きだけではなくその分野全体を相談してみましょう。無駄なコストとリスクを最小化するための確実なアプローチとなるかもしれません。
薬事や医療のような「法律がややこしい分野」こそ「別注」が賢い
法律や通知が複雑に絡み合うヘルスケア領域に関しては、「専門家を使い分ける」ことこそがリスク管理上の強力な選択肢となり得ることをご存知でしょうか。
例えば、皆さんが体調を崩した際、すべてのトラブルを近所の内科だけで済ませることはないですよね。耳の不調なら耳鼻科、肌のトラブルなら皮膚科、骨折なら整形外科といったように、症状に合わせて、その分野のプロフェッショナルである「専門医」を探して受診されているはずです。
お医者様に専門分野があるのと同様に、法律がややこしい分野でその道に精通した法務の専門家を頼るのはごく自然で、合理的な判断だと思います。
一朝一夕ではない薬事・医療法務
ヘルスケア領域は、薬機法や医療法、景表法…と複数の法律に関係してきます。それぞれについての解釈は、法律の文言だけでなく、膨大な数の「通知」「事務連絡」、さらには最新の執行事例を横断的に捉える必要があります。
一般的な士業がすべての分野において最新の「鮮度」を保つのは現実的ではありません。ここで先程の「その道に精通した法務の専門家」という考えが生きてきます。すでに別の顧問がいても、薬事・医療等の「ややこしい領域」だけは「専門の行政書士」にセカンドオピニオンを求める、あるいは「別注」することは、業界では賢いリスクヘッジとして実は結構広がってきています。
行政書士の守秘義務と「セカンドオピニオン」の考え方
「別の先生に相談したことが今の顧問にバレて、関係が悪くならないか」というご心配もあるかと思います。これに対しては、「行政書士は前述の通り守秘義務で縛られておりますので、ご相談いただいた内容や事実が、貴社の許可なく既存の顧問や第三者に漏れるリスクはかなり低いと言える」とお答えいたします。
実際のところ、知見のある専門家であれば、自社の顧問先が特定分野でより高度な知見を求めて外部を活用することに対し、不快感を示すことはまずありません。むしろ、事業の安全性を高めるための賢明な判断として歓迎するはずです(行政書士間での案件の紹介しあいはかなり「あるある」ですし、弊事務所のような分野特化の事務所に他行政書士から紹介案件が舞い込むのも、この証左とも言えますね)。
万が一、専門分野の使い分けに不快感を示すアドバイザーがいるとしたら、それはその方のスタイルの問題です。貴社の事業成長を最優先に考えるならば、気兼ねなく「その分野のプロ」の門を叩いてみるのが吉と言えるでしょう。
2026年改正法が求める「伴走者」としての姿勢
改正行政書士法では、デジタル社会への対応や国民の利便向上に努めることが我々行政書士の職責として明記されました[5]。
単に「言われた書類を揃える」だけの旧来型の先生ではなく、ご依頼主のビジネスモデルを深く理解し、最新のAI監視環境や実地調査から貴社を「守りながらアクセルを踏ませてくれる」パートナーを選んでください。
まとめ:貴社のビジネスが「安全に加速する」ことを祈って
複雑怪奇に絡み合った法規制を、自分の事業を阻む「壁」にするのか、それとも競合を引き離す「強固な参入障壁」に変えるのか。それは、誰をパートナーに選ぶかがターニングポイントかもしれません。 貴社にとって最適な専門家と出会い、ビジネスが適正に、そして力強く発展していくことを心より願っております。
【専門家活用・セカンドオピニオンのご相談】
現在の管理体制や、特定領域(薬事・医療法・景表法等)のスポット依頼に関するご相談、顧問契約のご相談を承っております。守秘義務を遵守し、既存の顧問先との関係にも配慮した形でサポートいたします。
お問い合わせフォームは本記事の下にございます。
参考文献・資料
- [1]行政書士法第19条第1項及び弁護士法第3条・第72条
- [2]行政書士法第19条第1項及び第23条の3の改正
- [3]行政書士法第12条第1項及び弁護士法第23条
- [4]行政書士法第1条の4第2項
- [5]行政書士法第1条の2第2項

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