フェムテック参入の「急所」を解く|吸水・経血吸収ショーツと月経カップの該当性判断ガイド
行政書士の大串です。
2026年となった今、フェムテック市場は単なる「トレンド」の枠はもう超えたと感じています。
フェムテックは「女性版骨太の方針2025」において国家の成長戦略に組み込まれた社会インフラとしての地位を固めました。政府が市場拡大を強力に後押しする一方で、利用者の広がりを受けた規制の整備も急速に進んでいます。
特に、2019年改正薬機法に基づくガバナンス強化の「5年見直し」を経て、2025年からは行政の監視体制が極めて実効性の高いものへと変貌を遂げました。市場が広がるにつれて徐々に明るみに出てきたのは、「医療機器該当性」の難しさです。製品分類を一歩誤れば、未承認医療機器の販売という重大な違法行為に直結し、事業停止や補助金返還などの経営リスクを招く恐れがあります。
本稿では、当事務所へのお問い合わせが多い「月経処理製品とそれに類するもの」を例に、最新の公的指針を踏まえた境界線ガイドを解説申し上げます。
比較表で見る、なぜ同じ「ショーツ」「体液処理」で規制が変わるのか
一見すると似たような機能を持つ製品であっても、その「目的」と「構造」によって、法的な位置付けは全く異なります。
| 分類 | 代表的な製品例 | 法的根拠・指針 | 必要な手続き | 広告表現の自由度 |
|---|---|---|---|---|
| 雑品 | 吸水ショーツ | 非規制(一般商材) | 不要 | 極めて低い(生理・経血の言及不可) |
| 医薬部外品 | 経血吸収ショーツ | 2021年10月21日事務連絡等 | 製造販売承認 | 高い(生理用ナプキンと同等) |
| 医療機器 | 月経カップ | 2023年3月23日事務連絡等 | 製造販売届出 | 中程度(自主基準に基づく表示) |
1. 吸水ショーツ(雑品)の限界と監視の目
吸水ショーツは、現時点では「衣類(雑品)」扱いです。しかし、行政は「広告全体が消費者に与える印象」を実態ベースで判断します。
- 赤い液体を用いた吸水実験の映像や、ナプキン・タンポンの個数との比較表示は、経血吸収(医療的効能)を強く暗示するものとして「不適切」と断定されています。
- 「多い日に」という表現も、広告全体のトーンによっては「経血吸収用」と認識され、アウトとなる「総合判断」の原則が適用されます。
2. 経血吸収ショーツ(医薬部外品)へのステップアップ
「経血を吸収処理すること」を目的とするならば、医薬部外品の承認が不可欠です。
- 審査では、単なる吸水量だけでなく、洗濯後の吸水力(規定回数の洗濯後も性能が維持されるか)や長時間接触による皮膚・粘膜への影響評価など、再利用を前提としたシビアな試験データが求められます。
- トキシックショック症候群(TSS)に関する警告表示や、カップ容量の測定(許容差±3mL以内)などの自主基準への適合が実務上の必須要件となっています。

経血吸収ショーツの薬機法上の分類についてはこちらの記事で述べています。
3. 月経カップ(一般医療機器)
膣内に挿入して経血を回収する月経カップは、薬機法上の「一般医療機器(クラスI)」です。

経血吸収だけでなく、セクシャルウェルネス領域の潤滑剤についても該当性判断は難しいところです。こちらの記事で解説しています。
【ケース別】2026年に生き残るための「守りのライティング」と「攻めの戦略」
監視網がデジタル化された2026年、行政は「広告全体を消費者目線で見てどう受け取るか」という実態ベースでの判断を徹底しています。
吸水ショーツ(雑品)の「守りのライティング」
厚生労働省のワーキンググループでの議論を踏まえると、以下の表現となるでしょうか。
- NG: 「ナプキンはもう不要」「タンポン○本分の吸水力」「赤い水滴のイラスト」
- OK: 「サニタリー期間のバックアップに」「ナプキンとの併用ができます」「多い日や軽い日に」
※「総合判断」の原則にご注意ください。
許可取得を見据えた「攻めの戦略」
「雑品」としての曖昧な訴求に限界を感じているのであれば、医薬部外品や医療機器へのステップアップこそが、効果的な訴求を実現するための「唯一の解」となります。
それに伴い必要となる高度な体制構築(GQP(品質管理)やGVP(安全管理)、QMS体制など)や、各種規格・自主基準への適合は、外部の専門家に頼るのも良いと思います。実際のところ、ステップアップに伴う産みの苦しみを乗り越えた先には、競合他社が容易に追随できない強固な参入障壁(堀)に守られた「ブルーオーシャン」が広がっている可能性があります。

「製品が良いから、売れる会社を作ろう」……もしそうお考えなら、少しだけ待ってください。フェムテック事業における最大の落とし穴は、「会社を作った後に、ライセンス要件を満たせないことが発覚する」というパターンです。
実務のご相談で非常に多いのが、異業種参入ゆえの「ビジネス感覚のズレ」です。 例えば、自社で許可を取るにしても、OEMで展開するにしても、以下のコストと手間が経営を圧迫します。
- 責任者の確保: 法定要件を満たす専門職の雇用コスト
- 場所の制限: 薬務課の指導に基づく、物理的な区切りや設備投資
- 文書の山: 作成・管理し続けなければならない膨大なGVP/GQP手順書
これらを無視して登記を進めてしまうと、後から「事業目的に必要な文言が入っていない」といった理由で、定款変更や登記のやり直しが発生します。その際にかかる登録免許税や専門家への報酬、それ以上に「数ヶ月単位のタイムロス」は、スタートアップにとって致命傷になりかねません。
【行政書士の視点:成功の鍵は「法規制からの逆算」】 2026年の起業スタイルは、まず「どのライセンス(医療機器、医薬部外品、あるいは雑品)で戦うか」を確定させ、その要件から会社スペックを逆算することです。この「一歩目の精度」が、後の補助金採択率や、ライセンス取得までのスピードを劇的に左右します。
「最短ルートで、無駄なくフェムテック事業をスタートさせたい」 そう願うなら、箱(会社)を作る前に、まずはこちらのガイドで「正しい逆算方法」を確認することをお勧め申し上げます。
▶ 設立完全ガイド#1株式会社編:事業目的と資本金で失敗しないための「逆算」思考

弊所でも専門的知見から全力でバックアップいたします。改正行政書士法により、企業のリーガルサポートとしての側面が明確に位置づけられたので、やる気は満々です。(詳細はこちらの行政書士法改正に関する記事をご覧ください)。
補助金・公的支援と「薬機法コンプライアンス」の密接な関係
昨今の経済産業省系補助金(ものづくり補助金等)の審査において、コンプライアンス要件はもはや無視できない重みを持っています。
補助金適正化法に基づき、重大な薬機法違反(未承認医療機器の販売等)が発覚した場合、過去に受給した補助金の全額返還だけでなく、数年間にわたる「指名停止措置」が下されるリスクがあります。事業計画の策定段階で、専門家による「該当性判断」のエビデンスを持っておくことは、単なる法令遵守を超えた、経営の安定化戦略そのものです。

補助金とコンプライアンスとの関係は、こちらの記事で詳しく解説しております。
まとめ:コンプライアンスは「コスト」ではなく「無形の資産」である
2026年以降のフェムテック市場において、法令遵守は「守り」の施策ではなく、ブランドの信頼性を担保する「攻め」の資産です。厚生労働省や各業界団体が示すガイドラインは、一見厳格ですが、裏を返せば「これを守れば適正に事業が行える」という地図でもあります。
当事務所では、製品の企画段階からの該当性判断、製造販売業許可の取得、および「攻め」と「守り」を両立させた広告ライティングの監修まで、最新の事務連絡や自主基準を反映した一気通貫のサポートを提供しております。
貴社の製品・サービスの該当性判断や薬事戦略について、迷いが生じた際はどうぞお早めにご相談ください。
【個別相談のご案内】
貴社の製品・アプリの該当性判断に関するご相談も承っております。
お問い合わせフォームは本ページの下部にございます。
参考文献・資料
- 2021年10月21日付厚労省事務連絡「経血吸収ショーツ等に係る評価の観点について」及び「経血吸収ショーツ等に係る広告表現の考え方について」について」
- 2023年3月23日付事務連絡「一般社団法人日本衛生材料工業連合会の作成した月経用(生理用)カップ自主基準について」

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