医療資格者の業務範囲を整理してみる (4)助産師
本シリーズ、今回は助産師について。
他の職種ページへの移動は、本シリーズの「0(前提)」ページにリンクを置いてありますのでそちらから。
(4)助産師(助産)
身分の根拠法
助産師の身分の根拠法は保健師助産師看護師法(保助看法)です。
第三条 この法律において「助産師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、助産又は妊婦、じよく婦若しくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子をいう。
保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)施行日: 平成三十一年四月一日, https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000203_20190401_430AC0000000066
★妊婦、じよく婦とは
なお、妊婦、じよく婦(じょくふ、褥婦)とはなんぞやとなったので調べてみると、やはり疑義照会がされてました。
妊婦とは妊娠期間中の婦人を云うのであるが、妊娠当初においては、平常時の婦人と外見上変化がないので、一般的にいって妊娠したものとの徴候があらわれてから分娩開始までの期間における婦人をいう。
産婦とは、分娩徴候があらわれてから後産が完了するまで、即ち分娩が完全に終る迄の期間における婦人をいう。
じょく婦とは、分娩終了後母体が正常に回復するまでの期間(凡そ六週間)における婦人をいう。
医療法第二条と保健婦助産婦看護婦法第三条とはこれらの字句を同意義に用いている。
「医療法中の疑義について」昭和二四年六月九日医収第六六九号三重県衛生部長あて厚生省医務局長回答https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta0669&dataType=1&pageNo=1#:~:text=%E3%81%98%E3%82%87%E3%81%8F%E5%A9%A6%E3%81%A8,%E6%84%8F%E7%BE%A9%E3%81%AB%E7%94%A8%E3%81%84%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%80%82
業務
まずは図で大枠を見ましょう。
本シリーズの「0(前提)」で紹介した厚労省作成の図を簡略化し、いくつかの要素を追加した上で、助産師の業務範囲等を書き込んだ図を作成しました。
- 助産師は①助産を業務独占します。②しかし、一部の他職種が助産行為をすることもできます。また、助産師は③その他業務も行うことができます。
①業務独占:助産
助産師は助産を業務独占する職種です。根拠条文は保健師助産師看護師法(保助看法)第30条。
第三十条 助産師でない者は、第三条に規定する業をしてはならない。ただし、医師法(昭和二十三年法律第二百一号)の規定に基づいて行う場合は、この限りでない。
保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)施行日: 平成三十一年四月一日, https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000203_20190401_430AC0000000066
②他職種による助産
★医師による助産
保助看法及び医師法を所管する厚生労働省は、「助産行為を含む医業」とし、医業に助産行為が含まれるという見解を示しています。
よって医師も助産行為ができます。
参考:「分娩における医師、助産師、看護師等の役割分担と連携等について」平成19年3月30日医政発第0330061号 各都道府県知事あて厚生労働省医政局長通知, https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb5740&dataType=1&pageNo=1)。
③その他の業務
★療養上の世話と診療の補助
助産師は、看護師の業務独占範囲の業務(療養上の世話と診療の補助)を行うことができます(第31条第2項)。
第三十一条 看護師でない者は、第五条に規定する業をしてはならない。ただし、医師法又は歯科医師法(昭和二十三年法律第二百二号)の規定に基づいて行う場合は、この限りでない。
保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)施行日: 平成三十一年四月一日, https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000203_20190401_430AC0000000066
2 保健師及び助産師は、前項の規定にかかわらず、第五条に規定する業を行うことができる。
そもそも、助産師は、助産師国家試験及び看護師国家試験に合格しないとなれないのです(平成18年改正)。
第七条 保健師になろうとする者は、保健師国家試験及び看護師国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受けなければならない。
保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)施行日: 平成三十一年四月一日, https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000203_20190401_430AC0000000066
2 助産師になろうとする者は、助産師国家試験及び看護師国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受けなければならない。
3 看護師になろうとする者は、看護師国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受けなければならない。
診療の補助を定義づけていると言われる保助看法第37条でも助産師の関与を受容しています。
看護師の業務独占についてもうちょっと詳しくは、本シリーズの「(5)看護師、准看護師」ところで述べます。
★その他業務
可能な医療関連行為をひとつひとつ挙げていたらきりがありませんが、とりあえず保健師の業務独占と考えられがちな保健指導だけ。
保健指導は、保健師その他の独占業務ではないため、助産師も行うことができます。
もうちょっと詳しくは、当シリーズの「(3) 保健師」のところを参照。
その他、医療従事者間の具体的な業務分担については、厚労省の役割分担通知を本シリーズの「0(前提)」ページでかるーく紹介していますが、現在進行系でタスクシフト・タスクシェアが進んでますので最新の状況は都度要確認です。
名称独占
保助看法42条の3に名称独占の定めがあります。
第四十二条の三 (略)
保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)施行日: 平成三十一年四月一日, https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000203_20190401_430AC0000000066
2 助産師でない者は、助産師又はこれに紛らわしい名称を使用してはならない。
3 (略)
4 (略)
【個人的な思うところ】
個人的な希望ですが、法律の第三条にはっきり「女子」と書いてあるのは、今後変わるだろうと期待しています。業務の性質上、国民の理解に時間はかかるかもしれませんが、「法律」で門戸を閉ざしているのは好ましく思わないので。
では、次は「(5)看護師、准看護師」をいっぺんに行こうと思います。
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