【法人設立ポイント解説】ベンチャーのための戦略的会社設立ガイド#1 ヘルスケア事業編

【法人設立ポイント解説】ベンチャーのための戦略的会社設立ガイド#1 ヘルスケア事業編
はじめに:なぜヘルスケア事業の会社設立は特殊なのか?
ヘルスケア分野で新たな事業を立ち上げる。その熱意とビジョンを実現するための重要なマイルストーンの一つが「法人設立」です。しかし、ヘルスケア事業における法人設立は、一般的なITベンチャーや小売業と比較して、特殊で複雑な視点が求められます。
なぜなら、人や動物のの生命や健康に直接関わるこの領域は、薬機法や医療法といった厳格な法規制、事業内容に応じた許認可、保険制度との関連、そして長期にわたる研究開発など、設立段階から織り込んでおかなければならない特有の要因が複雑に絡み合っているからです。
実のところ、「とりあえずこれかな?」と選んだ法人格や定款に定めた事業目的が、後の許認可取得の障壁になったり、資金調達を困難にしたりするケースは結構あるあるなんです。
このコラムシリーズ「ベンチャーのための戦略的会社設立ガイド ヘルスケア事業編」は、そんなヘルスケア・ベンチャーならではの「落とし穴」を前もって知っていただくことで、あなたの事業モデルに最適な法人設立を戦略的に行う助けになればと作成したものです。
Webコラムということで当然ながら全般にわたり「一般論」ではありますが、まずはシリーズの1つ目である本コラムで、ご自身の事業について「一般論」を確認してみてください。そしてあなたの事業についてお悩みでしたら、ぜひ個別にご相談くださいね。
さあ、見てみましょう。
事業モデルを3つの軸でセルフチェックしよう
最適な法人形態は、事業の数だけ存在します。まずは以下の3つの軸で、ご自身の事業がどこに位置するのかを客観的に整理してみましょう。
【軸1】事業類型:モノづくり系 vs サービス提供系
あなたの事業は、形のある「製品」を開発・提供するものですか?それとも、専門的な「サービス」を提供するものですか?
- モノづくり系:
- 医療機器、体外診断用医薬品、SaMD(プログラム医療機器)、再生医療等製品、医薬品、化粧品、健康食品などの開発・製造・販売。
- サービス提供系:
- 医療機関(クリニック、病院)、介護事業所(訪問看護、デイサービス)、薬局、オンライン健康相談、治験関連サービス(CRO, SMO)、医療系人材紹介など。
【軸2】法規制:規制の対象内か、対象外か
あなたの事業は、薬機法、医療法、介護保険法といったヘルスケア領域特有の法規制の直接的な対象となりますか?
- 規制対象事業:
- 医療機器の製造販売業、化粧品の製造販売業、医療機関の開設、介護保険サービスの指定事業者など、事業開始に行政からの**「許認可」や「指定」が必須**となる事業。
- 規制対象外事業(グレーゾーン含む):
- 規制対象外のヘルスケアアプリ、健康管理システムの開発・提供、健康食品のECサイト、医療系コンサルティングなど、直接的な許認可が不要な事業。ただし、将来的に規制対象となる可能性や、広告表現など関連法規の遵守は必要です。
【軸3】事業戦略:EXIT志向か vs スモールビジネス志向か
事業の将来像をどのように描いていますか?
- EXIT(イグジット)志向:
- ベンチャーキャピタル(VC)など外部からの資金調調達を積極的に行い、将来的にIPO(株式上場)やM&A(事業売却)を目指す、急成長を前提とした事業モデル。
- スモールビジネス志向:
- 自己資金や小規模な融資を中心に、まずは着実に事業を成長させることを目指すモデル。地域貢献や、専門家としての知見を活かした安定的な事業運営を重視。
分析結果別・コラムガイド
3つの軸の組み合わせで、あなたの事業の輪郭が見えてきたはずです。その組み合わせによって、選ぶべき法人形態の有力候補や、設立時に注意すべきポイントは大きく異なります。
以下のガイドを参考に、ご自身の事業に最も近いモデルの詳細解説コラム(※準備中)へとお進みください。
Case 1:モノづくり系 × 規制対象 × EXIT志向
(例)革新的なSaMDを開発し、VCから資金調達して世界を目指す!
- 有力な法人格: 株式会社
- 設立時のポイント: ストックオプション発行を見据えた定款設計、将来の製造販売業許可を織り込んだ事業目的の記載、研究開発フェーズでの資金調達戦略。
- ⇒ 詳細は『【法人設立ポイント解説】ベンチャーのための戦略的会社設立ガイド#2 医療機器・SaMD開発編』へ(11/21公開予定)
Case 2:サービス提供系 × 規制対象外 × スモールビジネス志向
(例)医師がオンラインで健康相談サービスを仲間と始める。
- 有力な法人格: 合同会社(LLC)
- 設立時のポイント: 低コストかつ迅速な設立、共同経営者間の利益配分や意思決定ルールの柔軟な設計、個人情報保護体制の構築。
- ⇒ 詳細は『【法人設立ポイント解説】ベンチャーのための戦略的会社設立ガイド#3 オンライン健康サービス編』へ(11/28公開予定)
Case 3:サービス提供系 × 規制対象 × スモールビジネス志向
(例)地域に根差した訪問看護ステーションを開設したい。
- 有力な法人格: 株式会社、合同会社、NPO法人
- 設立時のポイント: 指定事業者申請の要件(人員、設備)との連携、地域貢献性をアピールできる法人格の選択、助成金・補助金の活用。
- ⇒ 詳細は『【法人設立ポイント解説】ベンチャーのための戦略的会社設立ガイド#4 訪問看護・介護事業編』へ(12/5公開予定)
Case 4:サービス提供系 × 規制対象 × (特殊)
(例)自由診療のクリニックを開設し、関連サービスも展開したい。
- 有力な法人格: 医療法人、MS法人
- 設立時のポイント: 医療法人とMS法人の役割分担と連携、節税効果の最大化、非営利性と収益事業の両立。
- ⇒ 詳細は『【法人設立ポイント解説】ベンチャーのための戦略的会社設立ガイド#5 医療法人とMS法人編』へ(12/12公開予定)
まとめ:最初のボタンの掛け違いを防ぐために
ヘルスケア事業の成功は、その専門性や技術力だけでなく、事業モデルに最適な法的な器を選ぶことから始まります。最初のボタンを掛け違えると、後から修正するには多大な時間とコストがかかります。
このコラムでご自身の進むべき方向が見えたら、ぜひ一度、ヘルスケア分野に詳しい専門家にご相談ください。あなたのビジョンを確実かつスムーズに実現するための、マイルストーンを一緒に置いていきましょう。

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