【医療機器ポイント解説】中古医療機器ビジネスの鍵「修理業許可」を解説

【医療機器ポイント解説】中古医療機器ビジネスの鍵「修理業許可」を解説

はじめに

医療機器ビジネスは、新製品の開発・販売だけではありません。中古医療機器の流通や、納入後のメンテナンス・修理も、社会のニーズに応える重要な事業です。しかし、医療機器の「修理」を業として行うためには、薬機法(医薬品医療機器等法)に基づく専門の「修理業許可」が必要になることをご存じでしょうか。

本記事では、この「修理業許可」とは何か、どのような場合に必要で、どういった要件が求められるのかを解説します。

1. なぜ「修理業許可」が必要なのか?

  • 目的は、修理後の品質・安全性・有効性の確保 医療機器は人の生命や健康に直接関わるため、故障した機器を修理する際にも、新品と同様の品質、安全性、有効性が維持されなければなりません。このため、誰でも自由に修理できるわけではなく、一定の基準を満たした事業者のみに許可が与えられます。
  • 「修理」の定義 薬機法における「修理」とは、故障、破損、劣化等の箇所を、本来の状態・機能に復帰させること(保守点検を除く)を指します。部品の交換やオーバーホールもこれに含まれます。清掃や消耗品の交換といった保守点検のみを行う場合は、許可は不要です。
  • 例外:製造業者が自社製品を修理する場合 自ら製造(設計、組立、滅菌など)した医療機器については、その製造業者は「修理業許可」なく修理を行うことができます。ただし、これはあくまで自社製品に限った話であり、他社製品を修理する場合や、承認が廃止された製品を修理する場合には、原則通り「修理業許可」が必要となります。
  • こんなケースも「修理業許可」が必要です 実務上、許可の要否が問題になりやすい以下のケースでも、原則として修理業許可が必要です。
    • 出張修理(オンサイト修理): 医療機関などを訪問し、その場で修理を行う場合。
    • 修理業務の取り次ぎ: 自ら修理を行わず、他の修理業者に業務を委託する場合。
    • リース・保守契約: 契約内容に、故障時の修理費用が含まれている場合。
    • 修理の判断・指示を行うコールセンター: 単なる受付でなく、修理内容の判断や担当者の派遣指示まで行う場合。

2. 専門分野で分かれる「9つの修理区分」

修理業許可は、オールマイティな許可ではありません。取り扱う医療機器の種類や技術分野に応じて、以下の9つの「修理区分」に分かれており、事業者は修理したい機器が含まれる区分の許可を取得する必要があります。

  • 第一区分: 特定保守管理医療機器のうち、画像診断システム関連(X線診断装置、CT、MRIなど)
  • 第二区分: 特定保守管理医療機器のうち、生体現象計測・監視システム関連(心電計、脳波計など)
  • 第三区分: 特定保守管理医療機器のうち、治療用・処置用機器関連(レーザー治療器、人工呼吸器など)
  • 第四区分: 特定保守管理医療機器のうち、体外診断用機器関連(血液分析装置など)
  • 第五区分: 特定保守管理医療機器のうち、鋼製器具・機械器具関連(手術台、汎用輸液ポンプなど)
  • 第六区分: 特定保守管理医療機器のうち、歯科用機器関連
  • 第七区分: 特定保守管理医療機器のうち、上記以外のもの
  • 第八区分: 特定保守管理医療機器以外の医療機器であって、特掲する区分のもの
  • 第九区分: 特定保守管理医療機器以外の医療機器であって、上記以外のもの

3. 事業所に必須!「責任技術者」の設置

修理業許可を取得する上で、最も重要な人的要件が「責任技術者」です。

  • 役割 修理を行う事業所ごとに1名以上の設置が義務付けられています。修理された医療機器の試験検査や、修理作業の管理、記録の作成などを担当する、現場の品質責任者です。
  • 資格要件 取り扱う修理区分によって求められる要件が異なりますが、基本的には以下のいずれかを満たす必要があります。
    • (ア) 大学等で特定の専門課程を修了し、修理等の実務経験がある者
    • (イ) 高校等で特定の専門課程を修了し、より長い修理等の実務経験がある者
    • (ウ) 厚生労働大臣の登録を受けた者が行う「基礎講習」及び「専門講習」を修了した者
  • 責任技術者の実務上のポイント
    • 継続的研修の義務: 責任技術者は、毎年度、厚生労働大臣に届出を行った者が行う研修を受講する義務があります。
    • 兼務の可否: 業務に支障がない限り、他の資格(例:医薬品卸売一般販売業の管理者)との兼務も可能です。
    • 不在時の対応: あらかじめ手順書で代理者を定めておくことで、責任者が一時的に不在の場合でも、出荷可否判定などの業務を代行できます。

4. 許可取得後の遵守事項と事業所の構造設備

許可取得後も、事業を継続するためには様々なルールを守る必要があります。

  • 品質管理体制と記録
    • 修理を行う事業所は、QMS省令に準じた品質管理体制を維持し、修理や試験検査に関する記録を正確に作成・保管する義務があります。
  • 製造販売業者との連携
    • 修理を行う上で、その医療機器の製造販売業者から情報提供を受けるなど、連携が求められる場面もあります。
  • 事業所の構造設備基準
    • 修理業の事業所は、薬局等構造設備規則に基づき、床の材質(板張り、コンクリート等)などが定められています。また、同一ビル内での移転は変更届で足りますが、ビル自体の改築などの場合は新規申請が必要になるなど、移転時にも注意が必要です。

まとめ:専門性を証明し、信頼される修理事業を

医療機器の修理業許可は、事業者がその分野における専門的な技術力と、適切な品質管理体制を持っていることを公的に証明するものです。自社が参入したい修理分野はどの区分に該当するのか、そして責任技術者の要件を満たす人材はいるのか。これらを明確にし、計画的に準備を進めることが、信頼される修理ビジネスの第一歩です。

医療機器の修理業許可に関するご相談や、責任技術者の要件確認など、お気軽にお問い合わせください。

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