【医療機器ポイント解説】医療機器の広告ルールと事例紹介

【医療機器ポイント解説】医療機器の広告ルールと事例紹介
はじめに
製品を開発し、いよいよ市場へ!その魅力を多くの人に伝えるために不可欠なのが「広告」です。しかし、医療機器の広告には、薬機法(医薬品医療機器等法)や関連ガイドラインに基づく厳しいルールが存在します。「これくらいなら大丈夫だろう」という表現が、思わぬ法令違反に繋がることも。
本記事では、医療機器広告の基本ルールから、具体的なOK/NG事例までを分かりやすく解説します。
1. 医療機器広告の3つの大原則
医療機器の広告で、特に注意すべきは以下の3点です。
- ① 誇大広告の禁止(薬機法第66条) 事実と異なる、または事実を誤認させるような過大な表現はできません。
- ② 特定疾病用医療機器等の広告の制限(薬機法第67条) がんなど、厚生労働大臣が指定する疾病に使用される医療機器の広告は、原則として医薬関係者(医師、薬剤師など)向けに限定されます。
- ③ 未承認等の医療機器の広告の禁止(薬機法第68条) 承認や認証を得ていない医療機器について、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告はできません。
2. 具体例で学ぶ!OK表現 vs NG表現
実際の広告で問題になりがちな表現を、ケース別に見ていきましょう。
| テーマ | NG表現の例 | 広告可能な表現の考え方 |
|---|---|---|
| 効能・効果 | 「〇〇が完全に治る」「飲むだけで痩せる」 | 承認された効能・効果の範囲内での表現(例:「〇〇の症状の緩和」) |
| 安全性 | 「副作用の心配は一切ありません」「100%安全」 | リスクについても適切に記載する(例:「ご使用の際は添付文書をよくお読みください」) |
| 性能・品質 | 「世界一の技術」「最高の性能」 | 客観的な事実に基づく表現(例:「当社従来品比〇%向上」「〇〇賞受賞」) |
| 他社製品との比較 | (具体的な根拠なく)「A社製品より優れている」 | 客観的なデータに基づき、比較の条件を明示した上での表現 |
| 著名人・個人の推薦 | (個人の感想として)「この治療器のおかげで長年の痛みが消えました!」 | 著名人が使用しているという事実は述べられますが、効能効果を保証するような表現はNGです。また、医師等の医療従事者が推薦しているかのような表現も、一般の方の誤解を招くおそれがあるため認められません。 |
| 使用前・使用後 | 使用前後の写真を並べ、劇的な変化を強調する表現。 | 事実の範囲内であっても、効果を保証するものと見なされやすいため、原則として使用は避けるべきです。 |
3. 誰に向けた広告か?で変わるルール
広告規制の厳しさは、広告の「受け手」が誰かによって大きく異なります。
- 一般人向けの広告 最も厳しい規制がかかります。医学的な知識がない一般の方々が誤解しないよう、表現には細心の注意が必要です。客観的な事実であっても、一般人が見て過度な期待を抱くような表現は認められない場合があります。
- 医療従事者(医師、看護師など)向けの広告 専門家向けであるため、一定の範囲で専門的な表現が許容されます。客観的な臨床データや学術論文を引用することも可能ですが、もちろん誇大な表現は禁物です。
4. 広告は誰が見ている? - 広告監視の仕組み
「バレなければ大丈夫」という考えは通用しません。医療機器広告は、様々な方面から監視されています。
- 行政による監視 厚生労働省や都道府県の薬務課が、ウェブサイトやチラシなどの広告内容を常に監視しています。
- 広告監視モニター事業 都道府県によっては、一般のモニターから不適切な広告の情報を収集する制度を設けている場合があります。不適切な広告は、いつでも誰かに見られているという意識が重要です。
5. もし違反してしまったら?
薬機法に違反した広告を行うと、厳しいペナルティが課される可能性があります。
- 措置命令・中止命令 厚生労働大臣や都道府県知事から、広告の中止や内容の改善を命じられることがあります。
- 刑事罰 悪質な場合には、懲役や罰金といった刑事罰の対象となる可能性もあります。
- 課徴金納付命令 特に、誇大広告によって不当な利益を得たと判断された場合、その違反期間中の対象商品の売上額の4.5%にあたる課徴金の納付を命じられることがあります。これは、違反広告によって得た利益を没収し、「違反した者勝ち」を許さないための、非常に強力な制度です。
まとめ:広告表現は、専門家と共に慎重な確認を
魅力的な広告を作りたいという気持ちは、事業者として当然のものです。しかし、医療機器広告は、人の健康や安全に関わるという大前提を忘れてはなりません。広告案が固まったら、必ず公開前に薬機法の専門家に相談し、表現に問題がないかを確認するプロセスを組み込むことが、事業のリスク管理において極めて重要です。
おおぐし行政書士事務所では、広告表現のリーガルチェックや、プロモーションに関するご相談も承っております。

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