広告主を守る「防衛線」の引き方|アフィリエイター管理の3つの柱と証跡管理実務
行政書士の大串です。
2025年11月、大手製薬会社等に対して下された景品表示法に基づく措置命令はニュースを騒がせました。通称ステルスマーケティング規制[1]の運用による事案としては、一般患者によるクチコミ操作が問われた「株式会社スマイルスクエア」事案や、インフルエンサーによる投稿が対象となった「RIZAP株式会社(chocoZAP)」事案も見逃せません。これらは共通して「第三者の投稿に対する広告主の責任」という重い課題を突きつけています。
2026年、広告主が行政審査において「自社に過失はなかった」と主張し、処分の軽減等を勝ち取るためには、単なるマニュアル配布にとどまらない、行政が納得せざるを得ない客観的な「証跡(エビデンス)」の提示が不可欠です。本稿では、実務の現場で求められるアフィリエイターの管理的運用について解説します。
行政が求める「免責」の条件:なぜマニュアルを渡すだけでは不十分なのか
令和4年(2022年)の管理措置指針[2]によるアフィリエイト広告管理の明確化や、前述のステルスマーケティング規制導入以降、行政の審査視点は単なる「個別の表現」から、広告主による「委託先の管理・監督体制の実効性」へとシフトしています。
かつては、形式的な「NGワード集の配布」という事実があれば、事業者として法令遵守の意思があったと見なされ、行政指導の段階で一定の情状酌量(重い処分を避け、注意喚起に留まる等)が得られることもありました。しかし時を経て、従前から存在した「広告主の管理責任」という基準が、具体的な執行事例を経て実効性を伴うものとなっています。2026年現在の審査において法的価値を持つのは、「管理しています」という言葉や形式的な資料配布ではなく、違反が起きた際に即座に機能したことを客観的に証明する「管理実態」の提示です。
「知らないうちに違反が起きていた」という事態は、行政の目には「管理を怠った結果の状態」つまり「管理懈怠」と映ります。この状況を回避し、広告主として「適切に管理を行っていた事実」を客観的に証明するために必要なのが、次に述べる「3つの柱」の構築です。

実務解説:アフィリエイター管理「3つの柱」の具体的運用
管理措置指針[2]、および「広告表示に於ける不当表示等未然防止に関するガイドライン」[3]に基づき、広告主は以下の3つの柱からなる管理体制を構築・運用しなければなりません。
| 管理の柱 | 実務上の具体的なアクション(証跡) | 行政に提示すべき「物証」の例 |
| 1. 周知・啓発 | 広告ガイドラインの配布、受領確認、定期的なコンプライアンス研修の実施。 | 研修資料、電子署名付き受領書、視聴ログ、理解度テストの結果。 |
| 2. 定期確認 | 広告内容の定期的スクリーニング、目視によるダブルチェック。 | パトロール実施報告書、URLリスト、日付入りのスクリーンショット。 |
| 3. 違反時対応 | 違反発見から24時間以内の修正指示、修正完了の確認、悪質な場合の提携解除。 | 指示メールの履歴、修正前後の比較記録、契約解除通知の控え。 |
ざっくりというならば、①マニュアルを現場のアフィリエイター(あるいはインフルエンサー等の外部協力者)へ確実に届け、②掲載内容をチェックし、③さらに違反が起きた際に即座に機能したことを客観的に証明する、というところでしょうか。
柱1:周知・啓発
ただガイドラインを送付するだけでなく、「いつ、誰が、どの内容を理解したか」までを記録します。研修後に実施する「理解度テスト」の結果は、広告主が教育責任を果たしたことを示す強力な証跡となります。
柱2:定期確認(パトロール)
「月に一度、全アフィリエイトサイトを巡回している」という実績を、ログとして残します。URLリストに対し、チェック担当者の印、実施日、および「異常なし」または「修正指示済み」のフラグが立っている管理表は、ガバナンスが機能している証左です。
柱3:違反時の即座対応
違反を発見した際、いかに迅速に動いたかが免責の鍵を握ります。修正指示メールのタイムスタンプ、および修正がなされた後のキャプチャ画像を対比させて保存しておくことで、「自律的な是正能力」を証明できます。
モニタリング体制の構築と「専門家の目」による精査
膨大なアフィリエイトサイトやSNS投稿を漏れなく監視し続けることは容易では有りません。そのため、外部リソースや監視システムの活用を検討する企業も増えていますが、重要なのは手法そのものではなく、どのような手段を用いても「継続的に監視が行われている実態」を客観的なログとして残し続けることです。
形式的な管理=免責ではない
注意すべきは、たとえ何らかのシステムを導入したとしても、それ自体が免責を担保するわけではないという点です。抽出された「疑わしいワード」が、その場の「文脈」や「消費者が受ける印象」において、実際に法に抵触するかどうかの「総合判断」は、行政の解釈に照らした専門的な評価が不可欠です。
また、行政審査における「証拠力」を高めるためには、これらの記録が後から意図的に操作されたものではないことを証明できる状態で保持されていることが望まれます。電子署名を活用した受領管理や、タイムスタンプが記録されたスクリーンショットなど、客観的な第三者が「いつ、どの時点での管理実態か」を確認できる仕組みを整えておくことが、行政に対する強力な弁明材料となります。

結論:管理は「教育」だけでなく「検収」の仕組み化が不可欠
アフィリエイト広告における薬機法・景表法違反のリスクは、すべて広告主に帰属します。アフィリエイターへの丸投げはもちろん、「教育したから大丈夫」という過信も禁物です。投稿前の事前チェック、または投稿後の定期的なモニタリングを仕組み化することが、行政処分を回避するための王道です。

現場のリアル:良かれと思った「プラスアルファ」が命取りに
ここで、実務でよく遭遇する「落とし穴」をご紹介します。 ある事業者様では、アフィリエイター向けに丁寧な勉強会を行い、禁止表現も伝えていました。しかし、実際に公開された記事を見ると、教育した内容を大幅に超える過激な表現が……。
慌てて連絡を取ると、アフィリエイターさんは「先生に教わった通りだと少し地味だったので、もっと売れるように良かれと思って書き足しました!」と笑顔で回答。 そう、アフィリエイターさんの善意が、法律の壁を越えてしまうケースは少なくありません。彼らはプロのライターである前に、売上を追求するパートナーです。だからこそ、最後の一線を越えさせない「物理的な管理体制」が必要なのです。

リスクを最小化するブリッジ:知っておくべき「出口」の話
1. 「知らなかった」では済まされない課徴金のリスク
アフィリエイターが勝手に書いたことだから……という言い訳は、行政には通用しません。不適切な表示が拡散され、売上が発生してしまった場合、現在の制度では売上額に応じた「課徴金」の納付を命じられる可能性があります。 「まさかうちが」と思う前に、以下の記事で具体的な算定基準とリスクを確認しておいてください。
2. 現場でそのまま使える「指示出し用」NG表現集
アフィリエイターさんに「薬機法を守って」と抽象的に伝えても、彼らは困惑してしまいます。本当ならば広告規制の意図をしっかり理解してもらうことがベストなのですが、それは一朝一夕にはできることじゃあないんですよねー。その場しのぎにはなりますが、一番スムーズなのは、具体的な「言い換え案」をセットで渡すことです。 例えば化粧品なら、この記事のリストをそのままマニュアルに貼り付けて渡すだけでも、事故の確率は劇的に下がります。でも長期的視点で「理解してもらう」ための教育もわすれずに。
まとめ:管理コストは「保険料」と考える
アフィリエイター管理には手間がかかります。しかし、ひとたび炎上や行政処分が起きれば、それまでの利益は一瞬で吹き飛びます。管理体制の構築は、事業を継続するための必要経費(保険)だと捉えましょう。
補足:コンプライアンス・ガバナンスを設計する「伴走者」の必要性
アフィリエイト広告をめぐる景品表示法の運用においては、もはや単なる「表現の規制」にとどまらず、企業の「管理体制(ガバナンス)」の実効性が問われるフェーズに入りました。行政は個別の広告表現のみならず、その広告を世に出した貴社の「管理上の措置」が適切に機能していたかを審査しているのです。
「アフィリエイターのせいにできない時代」だからこそ、経営者や法務担当者は、万が一の際に会社を守るための「証跡の城」を築かなければなりません。
当事務所は、単なる書類の代書ではなく、行政の最新の解釈を貴社の実務に落とし込み、強固な防衛線を構築する「設計者」として、2026年の荒波を共に乗り越える伴走をさせていただきます。

【管理体制の診断・構築のご案内】
貴社のアフィリエイター管理体制が、行政の求める「免責要件」を満たしているか、実務的なチェックを承っております。
お問い合わせフォームは本記事の下部にございます。
参考文献・資料
[1]ステルスマーケティング=令和5年(2023年)10月1日施行の「不当景品類及び不当表示防止法(通称:景品表示法)」に基づく「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」
[2]令和4年06月29日内閣府告示第74号改正「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」
[3]令和4年(2022年)5月13日改訂の一般社団法人日本アフィリエイト・サービス協会(JASA)「広告表示に於ける不当表示等未然防止に関するガイドライン」
※本記事の内容は、執筆時点での法令および個人的見解に基づくものです。個別具体的なケースについては、必ず専門家や管轄自治体の窓口へご確認ください。

お気軽にご相談ください。
- 初回相談は無料です。
- 行政書士には秘密保持の義務が課せられております。
- フォームに入力されたメールアドレス以外に、当事務所から連絡差し上げることはいたしません。