薬機法改正(2021年)と化粧品広告:知らないと怖い「課徴金制度」と今すぐできる対応策

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薬機法改正(2021年)と化粧品広告:知らないと怖い「課徴金制度」と今すぐできる対応策

化粧品の魅力を消費者に伝える広告は、ビジネスの成長に不可欠です。しかし、その表現には「薬機法」という厳しいルールが存在します。特に2021年8月1日に施行された課徴金制度は、違反事業者に対して巨額の金銭的負担を課す可能性があり、化粧品ビジネスを行うすべての事業者にとって「知らなかった」では済まされない重要事項となっています。

本記事では、この課徴金制度を中心に、薬機法の広告規制の基本から、化粧品広告で陥りやすい具体的なNG表現と正しい言い換え例、そして違反を未然に防ぐための事業者の対応策まで、網羅的に解説します。

薬機法における広告規制の基本

まず、どのような広告が薬機法の規制対象となり、どのようなルールを守る必要があるのか、基本を押さえましょう。

規制の対象となる「広告」とは?

薬機法上の「広告」は、ウェブサイト、SNS投稿、インフルエンサーマーケティング、動画広告、パンフレット、雑誌・新聞広告など、顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図があれば、媒体を問わず全てが対象となります。たとえ費用を払っていないSNSの投稿であっても、事業者が内容に関与し、製品の販売に繋げる意図があれば広告とみなされる可能性があります。

広告の三大原則

化粧品広告には、主に以下の3つの原則があります。

  1. 虚偽・誇大広告の禁止(薬機法第66条第1項): 事実と異なる、または事実以上に優良であると誤認させるような表現は禁止されています。 これが課徴金制度の直接の対象となります。
  2. 医薬品的効能効果の標榜(ひょうぼう)禁止: 化粧品であるにもかかわらず、医薬品のような効果(例:「病気が治る」「シミが消える」)をうたうことはできません。
  3. 承認前の医薬品等の広告の禁止(薬機法第68条): 日本で承認されていない効能効果や成分について広告することはできません。

最重要ポイント「課徴金制度」とは?

2021年の薬機法改正で導入された課徴金制度は、違反広告に対する抑止力を高めることを目的としています。

課徴金制度導入の背景と目的

従来、薬機法違反の広告に対する措置は、行政指導や罰金が中心でしたが、違反によって得られる経済的利益が罰金を上回るケースがあり、十分な抑止力とは言えませんでした。そこで、違反によって得た経済的利益を徴収することで、不当な利益を得させないようにし、違反行為を抑止するために課徴金制度が導入されました。

課徴金の対象となる行為

課徴金の対象となるのは、薬機法第66条第1項に違反する「虚偽・誇大広告」です。 具体的には、化粧品の効能効果、性能、安全性などについて、事実と異なる、あるいは著しく誤認を招くような広告を行った場合が該当します。

課徴金額の算定方法

課徴金の額は、原則として以下の式で算出されます。

課徴金額 = 違反を行っていた期間中の対象商品の売上額 × 4.5%

例えば、ある商品を3,000円で販売し、違反広告を行っていた期間に1万個販売した場合、売上は3,000万円となり、その4.5%である135万円が課徴金額となります。

課徴金が減額されるケース

ただし、事業者が違反の事実を自主的に、かつ調査が入る前に厚生労働大臣に報告した場合、課徴金の額が50%減額される規定があります。違反に気づいた際は、迅速かつ誠実に対応することが金銭的リスクを低減する上で非常に重要です。

違反しないための事業者の対応策

課徴金などの厳しいペナルティを回避し、健全な事業を継続するためには、社内に適切な管理体制を構築することが不可欠です。

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化粧品広告における具体的なNG表現や、薬機法で認められた範囲での正しい言い換え方については、こちらの『化粧品広告NG表現集|薬機法と56の効能効果から学ぶ正しい言い換え方』で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

→広告表現の詳しい解説はこちら

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化粧品広告NG表現集|薬機法と56の効能効果から学ぶ正しい言い換え方

化粧品広告は「文字狩り」じゃない。消費者に誤認させないための本質とは?薬機法上のNG/OK事例に加え、広告全体で信頼を伝えるための考え方を解説。魅力と誠実さを両立させるヒント。

社内チェック体制の構築

マーケティング担当者任せにせず、法務部門や薬事担当部門など、広告を客観的に審査する部署を設けましょう。薬機法に関する広告表現のチェックリストを作成し、広告出稿前に必ず複数人で確認するフローを確立することが有効です。

専門家によるリーガルチェックの活用

自社内のチェック体制だけでは不安な場合や、判断に迷う表現がある場合は、薬機法に詳しい弁護士や行政書士といった外部の専門家に事前に相談し、リーガルチェック・助言を受けることを強くお勧めします。専門家の客観的な視点を取り入れることで、リスクを大幅に低減できます。

従業員への継続的な教育

薬機法のルールや社内ガイドラインは、広告に携わる全ての従業員(マーケティング、営業、商品開発など)が理解しておく必要があります。定期的な研修会などを実施し、常に最新の法規制や違反事例に関する知識をアップデートし続けることが重要です。

まとめ:信頼を築く広告で、ビジネスを成長させよう

薬機法の広告規制、特に課徴金制度は、一見するとビジネスの足かせのように感じられるかもしれません。しかし、その本質は「消費者を守り、公正な市場を維持する」ためのルールです。

不確かな情報で一時的に売上を伸ばすのではなく、製品の持つ本当の魅力を、法律の範囲内で誠実に伝え続けること。それこそが、消費者の信頼を勝ち取り、長期的なブランド価値を高め、結果としてビジネスを健全に成長させる唯一の道です。

広告は、お客様との最初のコミュニケーションです。正しい知識を身につけ、信頼を築く広告表現を心がけていきましょう。

参考

  • 厚生労働省 医薬・生活衛生局 監視指導・麻薬対策課「課徴金制度の導入について」
  • 医薬品等適正広告基準、解説及び留意事項
  • 日本化粧品工業会「化粧品等の適正広告ガイドライン」

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