医療資格者の業務範囲を整理してみる (5)看護師、准看護師

本シリーズの今回は、看護師・准看護師について。
他の職種ページへの移動は、本シリーズの「0(前提)」ページにリンクを置いてありますのでそちらから。

(5)看護師・准看護師(療養上の世話、診療の補助)

身分の根拠法

看護師と准看護師は一緒に述べようと思います。
それらの身分の根拠法は保健師助産師看護師法です。略称として保助看法がよく使われているようなので、本ページでもそれに倣います。

第五条 この法律において「看護師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。

第六条 この法律において「准看護師」とは、都道府県知事の免許を受けて、医師、歯科医師又は看護師の指示を受けて、前条に規定することを行うことを業とする者をいう。

保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)施行日: 平成三十一年四月一日, https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000203_20190401_430AC0000000066

この赤太字部(弊事務所追加)が、看護師、准看護師の資格職としての業です。

★じよく婦とは

本トピックス内「(3)助産師」の項を参照。

★療養上の世話とは

後で書きます。

★診療の補助とは

後で書きます。

★業務指示の必要性

上述の法5条、6条を読んで「あぁ、看護師は指示なしで動けるのね」と思いきや、法第37条がぬっと現れます。

第三十七条 保健師、助産師、看護師又は准看護師は、主治の医師又は歯科医師の指示があつた場合を除くほか、診療機械を使用し、医薬品を授与し、医薬品について指示をしその他医師又は歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為をしてはならない。ただし、臨時応急の手当をし、又は助産師がへその緒を切り、浣かん腸を施しその他助産師の業務に当然に付随する行為をする場合は、この限りでない。

保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)施行日: 平成三十一年四月一日, https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000203_20190401_430AC0000000066

この法37条は、看護師の「診療の補助」についても、「主治の医師又は歯科医師の指示があったとき以外はしてはならない」旨を規定します(応急処置は除く)。

つまり、看護師と准看護師の差はこんな感じになります。

看護師と准看護師の差

業務

まずは図で大枠を見ましょう。

本シリーズの「0(前提)」で紹介した厚労省作成の図を簡略化し、いくつかの要素を追加した上で、看護師・准看護師の業務範囲等を書き込んだ図を作成しました。

看護師、准看護師の業務範囲
  • 看護師、准看護師は①「保助看法第5条に規定する業」を業務独占します。②しかし、一部の他職種がそれら行為をすることもできます。また、看護師は③その他業務も行うことができます。
  • 看護師、准看護師の業務のうち「療養上の世話」は医行為に入るのかどうか判然としなかったので今のところ図に入れていません。

①業務独占:療養上の世話、診療の補助

業務独占の根拠条文は保助看法第31条、32条です。

第三十一条 看護師でない者は、第五条に規定する業をしてはならない。ただし、医師法又は歯科医師法(昭和二十三年法律第二百二号)の規定に基づいて行う場合は、この限りでない。
2 保健師及び助産師は、前項の規定にかかわらず、第五条に規定する業を行うことができる。

第三十二条 准看護師でない者は、第六条に規定する業をしてはならない。ただし、医師法又は歯科医師法の規定に基づいて行う場合は、この限りでない。

保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)施行日: 平成三十一年四月一日, https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000203_20190401_430AC0000000066

法31条により、看護師が、保助看法「第五条に規定する業」を業務独占する職種であることが定められています。
※この保助看法「第五条に規定する業」は、本ページの上の方で引用している中で赤太字にしてる部分です。長いので本シリーズでは「療養上の世話」と「診療の補助」と書かせていただくことが多いと思います。

これら看護師の独占業務は、保助看法第31条第2項にて保健師と助産師に、そして保助看法32条+保助看法第6条により准看護師に条件付きで、それぞれ限定解除されています。

★療養上の世話とは

法や厚生労働省通知等で明確な定義は見つけられませんでした。
ただ、「例えばこんなもの」については、平成28年4月28日答弁書で、当時の内閣総理大臣が下記のように示しています。

保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)第五条にいう「療養上の世話」とは、例えば、食事の介助、清拭等の傷病者又はじょく婦に対して療養上必要な世話を行うことであり、同条にいう「診療の補助」とは、例えば、医師又は歯科医師の指示の下で行う採血、静脈注射等の医師又は歯科医師の指示の下で医師又は歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある医行為を行うことである。

(中略)

ある行為が傷病者若しくはじょく婦に対する療養上の世話又は診療の補助に当たるか否かについては、当該行為の態様に応じ個別具体的に判断する必要があるため、お尋ねの「療養上の世話又は診療の補助」の範囲について一概にお答えすることは困難であるが、(略)

第190回国会(常会)答弁書第一〇三号 内閣参質一九〇第一〇三号 平成二十八年四月二十八日, "参議院議員薬師寺みちよ君提出看護師が行う業務の範囲に関する質問に対する答弁書" https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/190/touh/t190103.htm (2022−08−31)
★診療の補助とは(定義)

こちらも、法や厚生労働省通知等で明確な定義は見つけられませんでした。逐条解説とかにあるのかな…。

薬剤師の項でも出てきた日医総研の「診療補助行為に関する法的整理」と題したワーキングペーパーでは、診療の補助とは、保助看法第37条に挙げられている次の4行為を指すとしています(4ページ)

  • 1.診療機械を使用する
  • 2.医薬品を授与する
  • 3.医薬品について指示をする
  • 4.その他医師又は歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為をする
★診療の補助の範囲

どうやら診療の補助の範囲は、医行為と簡潔に分離できるものではないようです。

厚労省資料(下図)では、医行為のうち「絶対的医行為」以外は看護師により実施可能であるとされています。

"医行為の分類について(案)" https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002glgs-att/2r9852000002gllx.pdf

②他職種による看護師業務

★医師による診療の補助
  • 医行為の中の診療の補助、療養上の世話は、当然ながら医師もできます。
★保健師と助産師による療養上の世話及び診療の補助

上述している通り、保助看法第31条第2項の定めにより、これら業務独占は保健師と助産師に限定解除されています。

★他専門職による診療の補助

診療の補助のうち、各専門分野を各専門資格者が行うことができます。根拠法は各個別法です。

次の職種が該当します。
(6) 診療放射線技師, ア 理学療法士, イ 作業療法士, ウ 臨床検査技師, エ 視能訓練士, オ 臨床工学技士, カ 義肢装具士, キ 救急救命士

, ク 言語聴覚士, 歯科衛生士, 歯科技工士

③その他の業務

★看護師による調剤

日医総研の見解では、調剤も診療の補助の範囲内だとしています。そして日本薬剤師会は反発しています。
もうちょっと詳しくは、本シリーズの「(2)薬剤師」の項参照。

★看護師による保健指導

保健指導は業務独占ではないので、看護師、准看護師もできます。

★その他

その他実行可能な医療関連行為をひとつひとつ挙げていたらきりがないので割愛します。医療職って大変!

その他、医療従事者間の具体的な業務分担については、厚労省の役割分担通知を本シリーズの「0(前提)」ページでかるーく紹介していますが、現在進行系でタスクシフト・タスクシェアが進んでますので最新の状況は都度要確認です。

名称独占

保助看法42条の3に名称独占の定めがあります。

第四十二条の三 (略)
2 (略)
3 看護師でない者は、看護師又はこれに紛らわしい名称を使用してはならない。
4 准看護師でない者は、准看護師又はこれに紛らわしい名称を使用してはならない。

保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)施行日: 平成三十一年四月一日, https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000203_20190401_430AC0000000066

次は「(6)診療放射線技師」行きます!

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