医療資格者の業務範囲を整理してみる (2)薬剤師

本シリーズ、今回は薬剤師です。
他の職種ページへの移動は、本シリーズの「0(前提)」ページにリンクを置いてありますのでそちらから。

(2)薬剤師(調剤)

身分の根拠法

(薬剤師の任務)
第一条 薬剤師は、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによつて、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。

薬剤師法(昭和三十五年法律第百四十六号)施行日:令和四年八月二十日, https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=335AC0000000146

薬剤師は調剤、医薬品の供給と薬事衛生をつかさどる職種。
私の理解では法の立て付け上は「薬に関してだけは医師と比肩する存在」的なんですけど、実際の医療関連行為の中での業務にちょっと不明瞭な部分が多い印象の職種です。
その身分の根拠法は「薬剤師法」です。

業務

まずは図で大枠を見ましょう。

本シリーズの「0(前提)」で紹介した厚労省作成の図を簡略化し、いくつかの要素を追加した上で、薬剤師の業務範囲等を書き込んだ図を作成しました。

薬剤師の業務範囲の図
  • 薬剤師は①調剤を業務独占します。②が、一部の他職種が調剤行為をすることもできます。また、薬剤師は③その他業務も行うことができます。

①業務独占:調剤

第十九条 薬剤師でない者は、販売又は授与の目的で調剤してはならない。ただし、(略)

薬剤師法(昭和三十五年法律第百四十六号)施行日:令和四年八月二十日, https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=335AC0000000146

薬剤師は調剤を業務独占する職種です。根拠条文は薬剤師法第19条。
但し書き以降は次項で見ます。

②他職種による調剤

★医師・歯科医師による調剤

医師・歯科医師は特定の条件下であれば調剤をすることができます。
というわけで、さっき(略)としていた19条の但し書き以下を見てみましょう。

第十九条 薬剤師でない者は、販売又は授与の目的で調剤してはならない。ただし、医師若しくは歯科医師が次に掲げる場合において自己の処方せんにより自ら調剤するとき、又は獣医師が自己の処方せんにより自ら調剤するときは、この限りでない。
一 患者又は現にその看護に当たつている者が特にその医師又は歯科医師から薬剤の交付を受けることを希望する旨を申し出た場合
二 医師法(昭和二十三年法律第二百一号)第二十二条各号の場合又は歯科医師法(昭和二十三年法律第二百二号)第二十一条各号の場合

薬剤師法(昭和三十五年法律第百四十六号)施行日:令和四年八月二十日, https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=335AC0000000146

すなわち、条件を満たせば医師/歯科医師の自己調剤が可能ということです。薬局・薬剤師を通さず薬を渡せるわけですね。

  • 自己調剤の条件:患者の申し出=19条1項及び2項(2項については以下に書きます!)
  • 自己調剤の条件:医師の判断=19条2項

第19条の2で示されている各条項は下記です。
まず医師法。
医師は原則処方箋を出さなくてはならないが、例外もある(患者の申し出がある場合及び条件に該当すると医師が判断した場合)。

医師法第二十二条 医師は、患者に対し治療上薬剤を調剤して投与する必要があると認めた場合には、患者又は現にその看護に当つている者に対して処方せんを交付しなければならない。ただし、患者又は現にその看護に当つている者が処方せんの交付を必要としない旨を申し出た場合及び次の各号の一に該当する場合においては、この限りでない。
一 暗示的効果を期待する場合において、処方せんを交付することがその目的の達成を妨げるおそれがある場合
二 処方せんを交付することが診療又は疾病の予後について患者に不安を与え、その疾病の治療を困難にするおそれがある場合
三 病状の短時間ごとの変化に即応して薬剤を投与する場合
四 診断又は治療方法の決定していない場合
五 治療上必要な応急の措置として薬剤を投与する場合
六 安静を要する患者以外に薬剤の交付を受けることができる者がいない場合
七 覚せい剤を投与する場合
八 薬剤師が乗り組んでいない船舶内において薬剤を投与する場合

医師法(昭和二十三年法律第二百一号)施行日:令和四年八月二十日, https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000201

続いて歯科医師法。
基本的に医師法と同じですが、医師法であった覚醒剤投与(第7項)に関しては歯科医師法では除外されています。

歯科医師法第二十一条 歯科医師は、患者に対し治療上薬剤を調剤して投与する必要があると認めた場合には、患者又は現にその看護に当つている者に対して処方せんを交付しなければならない。ただし、患者又は現にその看護に当つている者が処方せんの交付を必要としない旨を申し出た場合及び次の各号の一に該当する場合においては、その限りでない。
一 暗示的効果を期待する場合において、処方せんを交付することがその目的の達成を妨げるおそれがある場合
二 処方せんを交付することが診療又は疾病の予後について患者に不安を与え、その疾病の治療を困難にするおそれがある場合
三 病状の短時間ごとの変化に即応して薬剤を投与する場合
四 診断又は治療方法の決定していない場合
五 治療上必要な応急の措置として薬剤を投与する場合
六 安静を要する患者以外に薬剤の交付を受けることができる者がいない場合
七 薬剤師が乗り組んでいない船舶内において、薬剤を投与する場合

歯科医師法(昭和二十三年法律第二百二号)施行日:令和四年八月二十日, https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000202
★看護師による調剤

2016年、日本医師会総合政策研究機構(日医総研)は、「診療補助行為に関する法的整理」と題したワーキングペーパーを公開し、そこで看護師も診療の補助として調剤ができると整理しています。日本薬剤師会は反発しています。

当該ワーキングペーパーでは、「調剤は医業に含まれる」という意見を通説として取り扱い、調剤は(薬剤師の業務独占で、医師・歯科医に限定解除されているのではなく)医師と薬剤師に認められているとし、よって医師の指示がある場合に広汎な診療補助行為が可能な看護師及び准看護師も診療の補助として調剤が可能であるという見解を示しています。(P33〜P37)

これに対し、日本薬剤師会は反発を示しています(平成28年3月4日付、日薬業発第 339号)。※平成27年度日本薬剤師会事業報告(P17〜P18参照)

「診療補助」がなんなのかとかそこらへんは、本シリーズの「(5)看護師、准看護師」ところで述べます。

③その他業務

その他薬剤師が可能な医療関連行為をひとつひとつ挙げていたらきりがありませんが、とりあえず業務独占と考えられがちな保健指導だけ。
その他、医療従事者間の具体的な業務分担については、厚労省の役割分担通知を本シリーズの「0(前提)」ページでかるーく紹介していますが、現在進行系でタスクシフト・タスクシェアが進んでますので最新の状況は都度要確認です。

★保健指導

保健指導は、保健師その他の独占業務ではないため、薬剤師が行うことができます。

もうちょっと詳しくは、当シリーズの「(3) 保健師」のところで説明します。

名称独占

薬剤師法20条に名称独占の定めがあります。

第二十条 薬剤師でなければ、薬剤師又はこれにまぎらわしい名称を用いてはならない。

薬剤師法(昭和三十五年法律第百四十六号)施行日:令和四年八月二十日, https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=335AC0000000146

今日はここまでとします。次は(3) 保健師に行きます。

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