新規・海外化粧品原料の必須手続き|INCI名・表示名称作成申請 完全ガイド

化粧品ポイント解説_新規・海外化粧品原料の必須手続き|INCI名・表示名称作成申請 完全ガイドのアイキャッチ画像。おおぐし行政書士事務所のアイキャッチ画像。おおぐし行政書士事務所

新規・海外化粧品原料の必須手続き|INCI名・表示名称作成申請 完全ガイド

ユニークで魅力的な海外の化粧品原料や、自社で開発した新規成分を使って、他社と差別化された製品を作りたい――。これは、多くの化粧品ブランドが持つ願いです。しかし、日本で前例のない原料を化粧品に配合し、販売するためには、その成分が「何であるか」を消費者に示すための名称作成手続きが不可欠です。

この手続きは、①国際的な名称である「INCI名」の作成申請と、②日本国内の「表示名称」の作成申込みという、大きく2つのステップに分かれています。

この記事では、この複雑なプロセスを「INCI名とは何か」という基本から、具体的な申請方法、期間、費用、注意点まで、体系的に分かりやすく解説します。

なぜ名称登録が必要?「INCI名」と「表示名称」

まず、2つの名称がそれぞれ何を意味し、なぜ必要なのかを理解しましょう。

「INCI名」とは? 国際的な”ものさし”

INCI(インキ)名とは、「International Nomenclature of Cosmetic Ingredients」の略で、「化粧品原料の国際命名法」に基づいてつけられた世界共通の成分名称です。アメリカの業界団体であるPCPC(米国パーソナルケア製品評議会)が作成・管理を行っており、INCI名は、化粧品の成分表示をグローバルに統一するためのアイデアから生まれました。

現在、汎用になっているような化粧品成分の多くは、既にINCI名が登録されています。世界中で製造・販売されている化粧品は、おおむねINCI名に則った配合成分の表示がなされている現状から、化粧品の成分を特定する際に国際的に通用する名称として使われています。

「表示名称」とは? 日本国内の”公式名称”

表示名称とは、2001年4月から日本で販売される化粧品の全成分表示が義務化されたことに伴い、配合成分に関する情報を消費者に正確に伝え、消費者が製品を選択しやすくするために導入された、日本語の標準的な成分名称です。

消費者がアレルギーなどを起こす可能性のある成分を避けられるよう情報提供するという目的から、日本化粧品工業会が業界の自主基準として「化粧品の成分表示名称リスト」を作成・管理しており、このリストに掲載された名称を用いて全成分を表示するのが基本です。

【重要な関係】 原則として、新規原料の「表示名称」の作成を申し込むためには、その前提として「INCI名」が登録されている必要があります。つまり、国際的な登録を済ませてから、国内の登録に進むのが基本ルートとなります。

Step 1:国際的な名称「INCI名」の作成申請プロセス

世界でまだ使われていない全く新しい原料を開発した場合、まずPCPCにINCI名の作成を申請します。事業者はINCI名を「保有」するのではなく、リストへの収載を「申請」する形です。

  • 申請先: 米国パーソナルケア製品評議会(PCPC)
  • 申請方法: PCPCのウェブサイトからオンラインで申請
  • 使用言語: すべて英語

INCI名作成申請の流れ

  1. オンライン申請フォームの入力: PCPCのウェブサイトでアカウントを作成し、申請フォームに必要情報を入力します。
  2. 必要資料の提出: 成分の化学組成、製造方法、品質、安全性に関する詳細な技術データなどを添付ファイルとして提出します。
  3. 申請料の支払い: クレジットカードで申請料(返金不可)を支払います。
  4. PCPCの委員会による審査: 提出された資料は、PCPCの国際命名法委員会(INC)によって審査されます。INCは年に5回程度(例:2月、4月、6月、9月、11月)開催され、申請は時系列で議題に上ります。
  5. INCI名の決定・リスト収載: 審査で承認されると、新しいINCI名が決定され、申請者に通知されるとともに公式リストに収載されます。

INCI名作成申請のポイント

  • 期間: 申請からINCI名が決定するまで、通常3ヶ月から6ヶ月程度かかります。審査の過程で追加資料を求められた場合などは、さらに期間が長引く可能性があります。稀に、申請のタイミングと委員会の開催時期が重なるなど、好条件が揃って1ヶ月程度で決定するケースもありますが、これは例外と考えるべきです。通常は数ヶ月を要するため、過度な期待をしていると待ち時間が長く感じられるかもしれません。時間に余裕を持った計画を立てることが重要です。
  • 専門知識: 申請には化学的な専門知識と英語力が必要となるため、多くの場合は原料メーカーが申請主体となります。自社で申請が難しい場合は、薬事業務を専門とする行政書士やコンサルタントに代行を依頼することも可能です。

Step 2:日本国内の「表示名称」の作成申込みプロセス

INCI名がリストに収載されたら、次はその成分を日本で使うための「表示名称」の作成を日本化粧品工業会に申し込みます。

  • 申込先: 日本化粧品工業会
  • 申込方法: 申込書を提出
  • 申込の前提: 対応するINCI名が存在していること(またはINCI名申請中であること)

表示名称作成申込の流れ

  1. 申込書の記入: 日本化粧品工業会のウェブサイトから申込書を入手し、必要事項を記入します。
  2. 必要資料の添付: INCI名が記載されたICID(化粧品原料国際事典)のコピーやwINCIのプリントアウト、INCI名の決定通知書などの、INCI名の存在を証明する資料を添付します。MonographIDが分かる場合にはそれも記入します。
  3. 手数料の支払い: 日本化粧品工業会の非会員企業の場合は、申込手数料(2023年10月から、1件につき44,00円(非会員)になりました)を指定口座に振り込みます。
  4. 日本化粧品工業会の部会による審議: 提出された書類は、日本化粧品工業会の命名部会で審議され、日本の命名ガイドラインに基づいて適切な表示名称が決定されます。
  5. 表示名称の決定・リスト収載: 審議が終了すると、決定した表示名称が申込者に通知され、公式リストに追加公表されます。

表示名称作成申込みのポイント

  • 期間: 申込から審議が終了し、名称が決定するまでの標準的な期間は約3ヶ月です。
  • INCI名申請との同時進行: INCI名の作成申請中に、表示名称の作成を申し込むことも可能です。ただし、最終的に決定したINCI名によっては、表示名称が変更になる可能性があるため注意が必要です。
  • 名称の決定権: 申請時に希望の表示名称を提案することはできますが、最終的には日本化粧品工業会のガイドラインに基づいて決定されるため、希望通りになるとは限りません。

まとめ:計画的な準備で、独自性のある製品開発を

新規・海外原料を使った化粧品開発は、ブランドに大きな競争力をもたらします。しかし、その実現には、ここで解説した国際・国内の2段階の名称作成という、専門的で時間のかかる手続きが不可欠です。

  • INCI名の作成申請: 3~6ヶ月以上
  • 表示名称の作成申込み: 約3ヶ月

合計で半年以上の期間を要することも珍しくありません。製品の発売スケジュールから逆算し、十分な余裕をもって計画的に準備を始めることが、ビジネスを成功に導くための鍵となります。自社での対応が難しいと感じた場合は、無理をせず、早い段階で薬事専門のコンサルタントや行政書士に相談することを検討しましょう

お気軽にご相談ください。

  • 初回相談は無料です。
  • 行政書士には秘密保持の義務が課せられております。
  • フォームに入力されたメールアドレス以外に、当事務所から連絡差し上げることはいたしません。