輸入化粧品ビジネス成功の鍵:法規制から物流までの完全ガイド

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輸入化粧品ビジネス成功の鍵:法規制から物流までの完全ガイド

海外のユニークで魅力的な化粧品を、日本の消費者に届けたい――。そんな想いから、化粧品の輸入販売を検討する事業者様は少なくありません。しかし、海外から製品を仕入れてそのまま販売できるほど、プロセスは単純ではありません。日本の薬機法に基づく厳格な規制をクリアし、複雑な手続きを一つひとつ着実に実行することが、ビジネス成功の絶対条件です。

本記事では、化粧品の輸入販売事業を始めるために不可欠な「許可」の取得から、海外メーカーとの連携、成分や表示の確認、通関、そして物流体制の構築まで、その具体的なステップと注意点を網羅的に解説します。

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※注意:これは「個人輸入」とは全く異なります

本記事で解説するのは、事業として化粧品を輸入し、販売・譲渡するための「商流としての輸入」です。ご自身が個人的に使用するために海外の化粧品を購入する「個人輸入」とは、ルールが全く異なります。

個人輸入では、標準サイズで1品目24個以内であれば、税関の確認を受けることで輸入が認められています。しかし、これはあくまで輸入者本人が使用することが大前提であり、個人輸入した化粧品を他人に販売・譲渡することは、利益を得るか否かにかかわらず薬機法違反となります。フリマアプリなどでの転売も、友人にプレゼントするのももちろん認められていません。

Step 1: ビジネスの土台となる「許可」を取得する

化粧品を輸入販売するためには、まず日本の薬機法で定められた2種類の許可を取得する必要があります。

1. 化粧品製造販売業許可

輸入した化粧品の品質や安全性について、日本国内で最終的な責任を負う事業者(元売業者)に必要な許可です。製品に関する問い合わせへの対応や、万が一の際の回収指示など、市場に対する全ての責任を担うためのライセンスです。

2. 化粧品製造業許可(包装・表示・保管)

輸入した製品の検品や、日本語ラベルの貼り付け、箱の入れ替え、そして品質確認・出荷判定が終わるまでの保管を行う事業者に必要な許可です。たとえ自社で工場を持たなくても、これらの作業を行う場所(倉庫など)について許可を取得する必要があります。通関後の製品は、この許可を持つ製造業者にのみ納品が可能です。

Step 2: 海外メーカーとの連携と「届出」を行う

許可取得と並行して、海外の製造元との連携体制を整える必要があります。

外国製造業者届

海外メーカーは、日本の独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に対して「外国製造業者届」を届け出る必要があります。これは、海外の製造者が日本の規制当局に登録されるための手続きです。

GQP/GVPに基づく取り決め

日本の製造販売業者は、製品の品質を保証する「GQP」と、市販後の安全性を管理する「GVP」という基準を遵守する義務があります。このGQP/GVPを適切に運用するため、海外メーカーとの間で、品質や安全性に関する情報を迅速に共有するための体制や手順を、あらかじめ文書で取り決めておくことが極めて重要です。

Step 3: 日本のルールに適合させる(成分・届出・表示)

海外の製品をそのまま日本で販売することはできません。日本の規制に合わせて、製品そのものと表示を適合させる必要があります。

成分の確認

日本では、化粧品に配合できる成分、配合してはならない成分(ネガティブリスト)、配合量に上限がある成分(ポジティブリスト)が「化粧品基準」で定められています。海外メーカーから全成分の配合量が記載された成分表(INCI名やCAS番号が明記されたもの)を入手し、日本の規制に抵触しないかを事前に必ず確認する必要があります。

化粧品製造販売届の提出

次に、輸入販売する品目ごとに「化粧品製造販売届」を作成し、主たる事務所の所在地の都道府県知事(窓口は薬務主管課)に提出します。これは、どの事業者が、どの化粧品を、いつから市場に供給するのかを、行政が把握するために必要な手続きです。この届出を提出しなければ、製品を市場に出荷することはできません。

日本語ラベルの貼付

日本の消費者が製品を安全に使えるよう、薬機法で定められた事項を日本語で表示することが義務付けられています。この法定表示を記載したラベルを、容器や外箱など見やすい場所に貼り付けなければなりません。

【主な法定表示項目】

  • 製造販売業者の氏名または名称および住所
  • 製品の名称
  • 製造番号または製造記号(ロット番号)
  • 全成分の名称
  • 使用期限(指定成分を含有する場合など)
  • 使用上または保管上の注意
  • 原産国名

このラベル貼り付け作業は「製造」行為にあたるため、Step1で解説した「化粧品製造業許可」を持つ場所またはStep2で届出た「外国製造業者」で行う必要があります。

Step 4: 輸入プロセスを確立する(通関・物流)

いよいよ製品を日本に輸入する段階です。

輸入通関

海外メーカーから製品が出荷されたら、日本の税関で通関手続きを行います。一般的には、通関業者に代行を依頼します。税関では、インボイスやパッキングリストといった貿易書類に加え、薬機法に基づく輸入であることを証明するために、化粧品製造販売業許可証の写しなどの提示を求められます。

品質確認と出荷判定

税関を通過した製品は、許可を受けた「化粧品製造業許可(包装・表示・保管)」の事業所に納品されます。ここで検品やラベル貼りを行った後、品質に問題がないか最終確認が行われます。この段階の製品はまだ「半製品」という扱いです。 最終的に、「化粧品製造販売業者」が市場に出荷しても問題ないと判断する「出荷判定」を行って、初めて製品は国内で販売できる状態となります。

物流・サプライチェーンの構築

海外からの輸送、輸入通関、国内での保管、そして販売先への配送まで、一連の流れを担う信頼できる物流パートナーを見つけることも、ビジネスの安定運営には不可欠です。特に、温度管理が必要な製品など、化粧品の特性に合わせた取り扱いが可能な業者を選定することが重要です。

まとめ

輸入化粧品ビジネスは、単なる商取引ではなく、薬機法という法律に基づいた許可事業です。そのプロセスは複雑ですが、要点は以下の通りです。

  1. 国内での責任体制を確立する(2種類の許可取得)
  2. 海外メーカーと連携し、登録・届出を済ませる
  3. 日本のルールに合わせて製品仕様と表示を整える
  4. 適切な手順で輸入・品質確認を行う

これらのステップを一つひとつ着実にクリアすることが、法令を遵守し、消費者に安全な製品を届けるという事業者としての責任を果たすことに繋がります。そして、その誠実な姿勢こそが、お客様からの信頼を獲得し、ビジネスを成功へと導く最も重要な鍵となるのです。

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