【法人設立ポイント解説】設立計画から登記、事業開始までの完全ガイド #3一般社団法人編

【法人設立ポイント解説】設立計画から登記、事業開始までの完全ガイド #3一般社団法人編
はじめに:営利を目的としない活動の「器」
「利益を出すこと」だけが事業の目的ではありません。特定の分野の発展、共通の利益の追求、地域社会への貢献など、様々な目的を持った活動が存在します。そうした営利を目的としない共益的な活動を行うための法人格が「一般社団法人」です。
2008年の法改正により、事業目的に公益性がなくても、登記だけで設立できるようになったことで、同窓会、学会、業界団体、資格認定団体から、地域の町おこしグループまで、多種多様な団体に活用されています。
このコラムでは、一般社団法人の特徴と、その設立手続きの具体的な流れを解説します。
他の組織形態との違いは?
一般社団法人の立ち位置を理解するために、法人格を持たない「任意団体」や他の法人形態との違いを見てみましょう。
| 比較項目 | 任意団体 | 一般社団法人 | 株式会社 | NPO法人 | 
|---|---|---|---|---|
| 法人格 | なし | あり | あり | あり | 
| 目的 | 自由 | 営利を目的としない | 営利目的 | 公益目的(20分野) | 
| 設立手続き | 手続き不要 | 登記のみ | 登記 | 行政庁の認証 | 
| 設立要件 | 特になし | 社員2名以上 | 発起人1名以上 | 社員10名以上など | 
| 利益の分配 | 可能 | 不可 | 可能 | 不可 | 
| 税制 | 構成員に課税 | 条件を満たせば優遇 | 原則、全所得に課税 | 原則、優遇 | 
ポイントは、**「利益の分配はできないが、収益事業は行える」**点と、NPO法人のように行政の認証を待つ必要がなく、株式会社のようにスピーディーに設立できる点です。
一般社団法人設立の3大メリット
メリット1:簡単な設立と幅広い事業内容
資本金のような設立時の財産要件がなく、社員が2名以上いれば設立可能です(後述する非営利型法人となり、税制優遇を受けたい場合には理事3名以上が必要です)。また、事業内容にNPO法人のような公益性の制限がなく、法律や公序良俗に反しない限り、自由に事業を行うことができます。
メリット2:収益事業も可能
「非営利法人」というと誤解されがちですが、これは「利益を分配してはいけない」という意味であり、「利益を出してはいけない」わけではありません。セミナーの開催、資格講座の運営、物品の販売など、収益を目的とした事業を行い、その利益を法人の活動資金に充てることができます。もちろん、役員への報酬や従業員への給与を支払うことも可能です。
メリッ3:税制上の優遇措置
一般社団法人は、定款の内容や組織の構成など一定の要件を満たすことで、税法上の**「非営利型法人」**になることができます。この「非営利型法人」になると、法人税の課税対象が収益事業から生じた所得のみに限定され、会費や寄付金などには課税されないという大きなメリットがあります。
一般社団法人設立の具体的な4ステップ
STEP1:法人の基本事項を決める
まず、法人の骨格となる基本事項を決定します。
- 名称
 - 事業目的
 - 主たる事務所の所在地
 - 社員構成(2名以上)
 - 役員(理事など)
 - 事業年度
 
STEP2:定款を作成する
決まった基本事項をもとに、法人のルールブックである「定款」を作成します。特に一般社団法人では、社員の資格や入退会、運営のルールなどを細かく定めることが、後のトラブルを防ぐ上で非常に重要です。
STEP3:公証役場で定款認証を受ける
作成した定款は、株式会社と同様に、公証役場で公証人による「認証」を受ける必要があります。この認証によって定款が法的な効力を持ちます。 紙ではなく電子で定款を作成すると、4万円の収入印紙代が不要になります。ご自身で電子署名環境を整えることが難しい場合には、行政書士など一部の専門家が作成代行に対応しています。
STEP4:法務局へ登記申請をする
定款認証後、必要書類を揃えて法務局に「一般社団法人設立登記申請」を行います。申請が受理された日が「法人の設立日」となります。
一般社団法人設立のデメリットと注意点
注意点1:利益の分配はできない
メリットの裏返しでもありますが、法律上、社員に利益を分配(配当)することはできません。事業で得た利益は、あくまで法人の次の活動資金として活用する必要があります。
注意点2:創業支援系の助成金・補助金の対象外となるケース
一般社団法人は営利を目的としないため、経済産業省や自治体が提供する創業支援系の助成金や補助金の中には、株式会社や合同会社といった営利法人のみを対象としているものが多くあります。事業計画を立てる際には、活用したいと考えている支援制度の対象法人格を事前に確認しておくことが重要です。
注意点3:「非営利型法人」の要件維持
税制優遇を受けるための「非営利型法人」の要件は、設立時だけでなく、運営中も常に満たし続ける必要があります。例えば、理事の親族規定など、組織運営において一定の制約がかかる点も理解しておく必要があります。
まとめ:想いを形にするための最適な選択肢
一般社団法人は、営利を目的とせず、共通の目的のために人が集まる活動に最適な法人格です。設立のハードルが低く、運営の自由度も高い一方で、その定款設計には将来の活動を見据えた専門的な視点が不可欠です。
あなたの社会貢献や共益活動への想いを、信頼性の高い法的な「器」として形にするために、設立計画の段階からぜひ専門家にご相談ください。

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