【法人設立ポイント解説】設立と同時に計画!許認可と助成金で失敗しないタイムライン

はじめに:「法人設立登記」の完了=「事業開始OK」ではありません!

念願の法人設立。登記が無事に完了し、「これで今日から事業が始められる!」と胸を躍らせている方も多いかもしれません。しかし、本当にそうでしょうか?実は、その考えには大きな落とし穴が潜んでいる可能性があります。

特に、行政の「許認可」が必要な事業や、「助成金・補助金」の活用を考えている場合、「法人設立」と「事業開始の準備」を別々に進めてしまうと、取り返しのつかない事態に陥ることがあります。

今回は、スムーズな事業スタートを切るために、なぜ設立前から「許認可」と「助成金」を同時に計画する必要があるのか、その理由と理想的なタイムラインを解説します。

ケーススタディ:「設立後に気づいた…」よくある4つの失敗例

まずは、設立手続きを急ぐあまり、事業の根幹に関わる準備を怠ってしまった方々の典型的な失敗例を見ていきましょう。

失敗例1:建設業A社のケース

「株式会社を設立し、いざ建設業許可を申請しようとしたら、資本金の額が許可要件の500万円に足りていなかった…。追加の増資手続きが必要になり、時間も費用も余計にかかってしまった。」

【原因】 建設業許可には、500万円以上の自己資本(株式会社の場合は資本金の額)など、財産的基礎が求められます。この要件を知らずに資本金額を決めてしまったことが原因です。

失敗例2:飲食店B社のケース

「カフェを開くため、内装がおしゃれな物件を契約し、法人設立も済ませた。しかし、保健所の営業許可を申請した際、厨房のシンクの数が足りないことが発覚。追加工事が必要になり、オープンが大幅に遅れてしまった。」

【原因】】 飲食店営業許可には、厨房の面積やシンクの数、手洗い場の設置など、施設に関する細かい基準があります。物件契約や内装工事の前に、この基準を確認していなかったことが原因です。

失敗例3:スタートアップC社のケース

「創業時に使える助成金があると聞き、法人設立後に申請しようとした。しかし、その助成金は『法人設立前』に事業計画の認定を受ける必要があったと知り、申請の機会を逃してしまった。」

【原因】 助成金や補助金の中には、法人設立前に申請手続きを開始したり、特定の要件を満たしたりする必要があるものが少なくありません。情報収集のタイミングが遅れたことが原因です。

失敗例4:化粧品メーカーD社のケース

「自社ブランドの化粧品を開発し、ECサイトで販売を開始しようとした。しかし、化粧品製造販売業の許可を都道府県に申請したところ、会社の登記簿謄本(履歴事項全部証明書)の『事業目的』にこの記載がないことを指摘され、申請が受理されなかった。事業目的を変更する登記からやり直すことになり、販売開始が大きく遅れた。」

【原因】 化粧品の製造販売(輸入を含む)を行うには、薬機法に基づく「化粧品製造販売業許可」が必要です。そして、この許可を申請する大前提として、定款の事業目的に「化粧品製造販売業」といった趣旨の文言が記載されている必要があります。事業計画と定款の内容が連携していなかったことが原因です。

理想的なタイムライン:設立・許認可・助成金を同時に進める4ステップ

このような失敗を避けるためには、法人設立を単独のイベントとして捉えるのではなく、事業開始までのプロセス全体の一部として計画することが不可欠です。

STEP1:事業計画フェーズ【設立6ヶ月〜3ヶ月前】

すべてはここから始まります。ビジネスモデルを固めると同時に、以下のリサーチを必ず行いましょう。

  • 許認可リサーチ: 自分の事業に許認可は必要か?必要な場合、その要件は何か?(人的要件、物的要件、財産的要件など)
  • 助成金リサーチ: 活用できそうな助成金・補助金はあるか?その申請スケジュールと要件は何か?
  • 法人形態の検討: まず、ご自身の事業目的(やりたいこと)と、各法人形態が持つ特性を照らし合わせます。その上で、NPO法人のように法人格自体に人的要件(社員10名以上など)がある場合や、許認可の取得、助成金の活用に必要な要件も踏まえ、株式会社、合同会社など、どの法人形態が最適かを総合的に検討します。

STEP2:定款作成フェーズ【設立3ヶ月〜1ヶ月前】

リサーチ結果を基に、法人の憲法である「定款」を作成します。

  • 事業目的の設計: 許認可が必要な場合、その要件を満たす事業目的を正確に記載します。
  • 資本金額の決定: 財産的要件(建設業の500万円など)を満たす資本金額を設定します。
  • 事務所の選定: 物的要件(飲食店の施設基準など)を満たす物件を選定し、契約を進めます。

STEP3:設立手続きフェーズ【設立1ヶ月前〜登記完了】

法務局への登記申請など、具体的な設立手続きを進めます。

  • 登記書類の準備・申請: 定款認証(必要な場合)や登記申請を行います。
  • 許認可・助成金の申請準備: 登記と並行して、許認可や助成金の申請書類の作成を進めておきます。事業計画書など、共通で使える書類も多くあります。

STEP4:設立後フェーズ【登記完了後〜】

法人設立が完了したら、速やかに各種申請手続きを行います。

  • 許認可の申請: 準備しておいた書類で、管轄の行政庁へ速やかに申請します。
  • 助成金の申請: 公募期間などに合わせて、申請手続きを進めます。
  • 各種届出: 税務署や都道府県税事務所、年金事務所などへの法人設立後の届出も忘れずに行いましょう。

まとめ:スムーズな事業開始は「設立前の統合的な計画」がすべて

見てきたように、法人設立、許認可、助成金はすべて密接に連携しています。これらをバラバラに進めてしまうと、時間、費用、そしてビジネスチャンスまで失いかねません。

私たち行政書士は、単に定款を作成するだけではありません。お客様の事業計画をヒアリングし、

  • 必要な許認可は何か?
  • そのために定款はどう設計すべきか?
  • 活用できる助成金はあるか?
  • 全体としてどのようなスケジュールで進めるべきか?

といった、事業のスタートアップ全体を見据えた統合的なコンサルティングを提供します。失敗しない事業計画と設立手続きをワンストップで進めたい方は、ぜひ計画段階から専門家にご相談ください。

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